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お父さんはホットケーキを食べたい

掲載日:2025/12/18

 私はホットケーキが大好きだった。

 ほんのりきつね色に焼けた生地、その上でゆっくり溶けるバター、たっぷりとかかったシロップ。想像するだけで口の中によだれが広がる。


 子供の頃は母の作るホットケーキが大好きで、おやつにホットケーキが出た日には飛び跳ねて喜んだものだ。

 学生になりアルバイトを始めるようになると、自分で稼いだ金で色んな店のホットケーキを食べ歩いた。

 就職し、サラリーマンになってからも、たまのホットケーキはやめられなかった。


 こんな私も結婚し、娘ができた。

 父親になったからには、私はますます強くならねばならない。

 強く、逞しく、家族思いな、一家の大黒柱。

 そんな父親になるためには、ホットケーキは甘すぎる。

 私は決心する。一種の願掛けのつもりで、これを機にホットケーキはやめよう、強い父親になろう、と。


 娘がおやつのホットケーキを食べていても、興味がない風にやり過ごす。

 これが大人のおやつだとばかりに煎餅を食べる。

 ああ、だけど本当は……ホットケーキを食べたい。食べたい。食べたい。

 甘い誘惑を耐え抜き、私はどうにかホットケーキ断ちを続けてきた。


 ある日、私はふと今日は自分の誕生日だと思い出す。

 この年になると、もはや誕生日も嬉しくなく、自分が一歳年を取るだけの日に過ぎない。

 しかし、家に帰ると――


「お帰りなさい!」


 娘が出迎えてくれた。


「今日はパパの誕生日でしょ? だからプレゼント用意したの!」


 おお、なんて気がきく娘だ。私はそのまま居間に向かう。

 すると――


「……え!?」


 そこには皿に載ったホットケーキがあった。

 きつね色に焼けた生地、バターが溶け、シロップがかけられている。


「これは……!?」


 驚いている私に妻が言う。


「この子がね、パパに作ってあげたいって言ったのよ。だから作らせてあげたの。私も手伝ってね」


 なんと娘が言い出したことだった。


「なんでパパがホットケーキが好きだって分かったんだ?」


 娘はけらけらと笑う。


「だってパパ、あたしがホットケーキ食べてると、羨ましそうに見るじゃない。バレバレだよ!」


 娘には隠していたつもりだったが、お見通しだった。


「パパ、いつもお仕事お疲れ様。だから今日はたっぷりホットケーキを食べて!」


「ああ、いただくよ」


 久しぶりに食べたホットケーキは、とても甘くて美味しかった。

 私は強い父親になるためにホットケーキをやめたが、それはもうやめだ。

 だってホットケーキはこんなに元気をくれるんだから。






お読み下さいましてありがとうございました。

ラジオ大賞参加作品となります。

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― 新着の感想 ―
とても心に響き、温まるお話ですね(^^) 家族愛に溢れていて、読んでいるとほっこりした気持ちになりました(^^) 素敵な作品を読ませて頂き、ありがとうございますm(_ _)m
良い奥さんに娘さん。 まさに幸せの味だぁ〜。
一緒にホットケーキを食べたこと、 ホットケーキを食べる姿を見守ってくれたこと、 自分の焼いたホットケーキで喜んでくれたこと。 娘さんにとってはその全てが大切な宝物になります。 本当に強い父親とは、そ…
感想一覧
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