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守護騎士の失態

 ◇◆◇


 失敗した。しくじった。

 公女様を無防備な状態で置き去りにしてしまうなんて。守護騎士失格だ。

 曲者をすぐに捕らえるはずだったのに。

 相手にいいようにあしらわれて、気付けば四半時も街中を引きずり回されていた。

 公女様と行商人を探しに行った馬車溜まりの広場で、偶然昨日の襲撃者らしき人影を見つけて思わず追跡したのだが。

 悔しいが、相手のほうが一枚上手だったらしい。こちらを振り返ることなく、常に一定の距離でちらりちらりと背中を見せては見失うということを続けさせられるうちに、すいぶんと長い時間を公女様から引き離されてしまった。


 替え玉作戦は領主殿の提案によるものだった。

 守護騎士としては替え玉とはいえ主を囮に使うような作戦は気乗りがしなかったが、公女様が積極的に賛成されたこともあって実行することになった。

 替え玉で襲撃者をおびき出すという作戦の開始前に容疑者を発見したことで事件の解決を急いでしまった。私の判断ミスだ。

 最初に広場で姿を見せたのも仕組まれたものだったのだろうか?

 だとすると実はあの行商人もグルだったということか?

 繁盛して品切れになったのならともかく、たった一日で店を閉めるなんて普通では考えられない。行商人の行動であの時間あの場所に誘導されたとも考えられる。

 それに昨日、彼の店の前だけがぽっかりと人気がなかったのも、離れた位置から襲撃するための罠だったと考えると辻褄が合う。

「ならば、公女様を荷馬車に隠したのはキツネの巣穴にひな鳥を置いたも同然ということか!」

 その考えに至った瞬間、行き交う群衆を跳ね飛ばす勢いで広場に走った。

「どうか無事でいてください、姫様!」

 だが、その願いも空しく、広場から荷馬車の姿は消えていた。


 万に一つの希望にすがって館に急いだが、やはり公女様は戻っていない。

 ことここに至り、公女誘拐・失踪の警報をあげることを決意する。

 領主様は外聞をはばかって公女様への襲撃未遂を大事にはしたくないとおっしゃっていたが構うものか。

 失態への叱責も懲罰もいくらでも受けよう。すべての責任は守護騎士の役目を損なった私にある。とにかく今は公女様を無事に保護することが最優先だ。

「公女殿下がさらわれました。巡察隊は城壁内を捜索、衛兵は城門に検問を設置してください。とくに荷馬車の荷台はくまなくあらためていただきたい」

「公女殿下が?守護騎士殿はご一緒ではなかったのですか?」

 アードルナーン子爵の右腕であり、郡の政務官を務めるヤフヤール卿が顔色を変える。

「すまない。私の落ち度です。非難は甘んじてお受けいたします。ですが今は公女様の捜索を最優先にしてください」

 郡都の城壁内にいるなら巡察隊が見つけだしてくれよう。すでに城外に連れ去られている可能性を考えて、すぐにでも追跡に出られるよう装備と馬の準備を整える。

 城内の捜索隊からは否定的な報告が次々とあがってくる。もともと身代わり作戦のために巡察隊を展開していたからそうそう監視の目をすり抜けられるとも思えない。そうなると城外に連れ去られた可能性が高いが……

「怪しい荷馬車の報告はあがっていないか?」

「それが、大市の期間で通常より荷馬車の出入りが激しくて情報の絞り込みに難航しております。検問設置前に郡都を出た荷馬車だけでも十台は越えるそうで……」

「その中に灰色の騙馬の一頭立て馬車はあるか?」

「ラクダではなく馬ですか。おまちください……ふむ、馬が引いた馬車は二台ありますね」

「どちらに向かったかわかるか?」

「一台は東、もう一台は西に街道を進んだようです」

「……二手に分かれて追いかけるか。護衛隊長!」

「はい」

 替え玉作戦中に私に代わって公女様をお守りすることになっていた護衛チームの隊長に指示を出す。

「私は東のほうをあたる。貴殿の隊は西の方角を捜索してくれ」

「わかりました」

 待っていてください、姫様。必ずやお助けいたします!


 ◆◇◆

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