表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/45

力の魔石

 水しぶきを跳ね上げ、大剣の身幅に隠れるようにして突き進む。

「せいっ、やっ、くっ」

 しなる鞭のような触手攻撃は一撃一撃が重く、無数のそれを剣でさばききるルーナもすごいがさすがに限界が近い。本体に近づくほど攻撃が密集してくるのだ。

 ルーナが一歩遅れる。俺とルーナの間隔が開くことで、ローパーの攻撃が二手にに分かれた。

 サイドから水面を這うウミヘビのように素早く触手が襲いかかる。

 バシッ、シュゥゥゥ

「しまったッ」

 左サイドの死角からの攻撃が足に絡みつく。

 触手に生えている小さな刺状の突起から毒液が染み出す。

 脚絆が悪臭を伴う煙を上げて焼けこげる。

 触手は毒を存分に振りまくように脈動しながらギリギリと俺の足首を締め上げる。

「こなくそ」

 触手を切ろうと大剣の切っ先を何度も振り下ろすが、見事にすべて避けられてしまう。

「セオ殿!」

 ルーナが加勢に近づこうとするが、密度の高い触手の群れに阻まれて進めない。

「うわっ」バシャ。

 俺の足首に絡みついた触手が山なりに上下に振られ水面に引き倒される。

 ズザザザァァッ

 水面を引きずられてルーナと分断される。

 くそっ、なんとか触手こいつを引きはがさないと。

 しかし右手は大剣でふさがっており、残る左手一本では巻き付いた触手はびくともしない。このまま締め付けが強くなれば足首を圧し折られそうだ。

「くっ」

 ローパーは俺を締め上げようと別の触手を伸ばしてくる。

 そこへ油じみた汚れの塊が体当たりを食らわせてきた。

 リーフウルフの小隊が俺を引きずって行こうとする触手に襲い掛かる。

 三頭掛かりでようやく触手を一本食いちぎる。

「助かったぜ」

 俺は素早く立ち上がり、ローパーの足下でもがく白い巨大なオオカミに向かって走る。

 ガァッ

 ギャン

 グゥッ

 俺を援護するように周囲を並走していたリーフウルフが一頭、また一頭とローパーの触手に弾き飛ばされていく。

 だがもう少しだ。リーの仲間たち、恩に着るぜ。

 俺はあえてリーフウルフたちをかえりみず真っすぐに走る。

 そしてシルヴァルフのもとにたどり着いた。

「ここまで近づけばこっちのもんだ、喰らいやがれっ!」

 大きく振りかぶってシルヴァルフに狙いを定める。

「セオ殿、何を?シルヴァルフを助けるのでは?」

「俺のスキルを信じろ!攻撃が当たらないってのは、こういうことなのさ。そいやっ」

 ブン、ブンブン

 シルヴァルフに向けて魔剣を滅多やたらに振り回す。突然襲いかかってきた俺の攻撃をシルヴァルフが身をよじって避ける。俺の剣はシルヴァルフの毛皮をかすめ、頸を撫でるようによぎり、眼前を扇のようにあおいだ。

 つまり、一切当たらなかった。シルヴァルフには。

 だがその巨体を縛り付けていたすべての触手が断ち切られ、バラバラになって落ちる。

「すごい……」

 ルーナの口からつぶやきが漏れる。だが、なんとも微妙な表情だ。

 ウォォォォン!

 自由を得たシルヴァルフは瞬時に跳びのいてローパーから距離を取った。

 黄金の瞳が復讐に燃えるようにギラリと光る。

 ローパーの触手が一斉にシルヴァルフに襲い掛かる。だが半数以上の触手を失ったローパーの攻撃は密度が足りない。再生能力はあるはずだが、すぐには追いつかないようだ。

 シルヴァルフは触手を難なく脚で叩き落とし、牙で嚙み千切り、爪で切り裂いていく。

 迎撃は背後の連中に任せて俺は今度こそローパーに狙いをつける。

 巨木の幹のような胴体は近づけば不気味に脈動していた。だが、その場から逃げる手段はないらしい。動かない敵なら得意分野だ。

「こちとら冒険者は卒業した身でね。卑怯とは言わせねぇぜ」

 伸び上がるほどに大上段に構えて一気に切り下す。

 びゅるるあああぁ

 ローパーが断末魔の悲鳴のように無茶苦茶に触手を振り回す。

「とどめっ!」

 剣を引いて横車に回す。水平に振り抜かれた大剣がローパーの巨体に一閃を刻む。

 どどぉん

 水しぶきを上げて真っ二つに割れた巨体が左右に倒れた。

(あれだ)

 地面に食い込んでいる切り株のような胴体がまだビクンビクンと痙攣している。

 その切り株の中心に青い結晶が刺さっていた。

 大剣の切っ先を結晶に突き刺す。

 パキッ、シュウゥゥ

 結晶が砕け、黒い靄となって立ち上がる。黒い霧はそのまま魔剣に吸い込まれて消えた。

 同時にローパーの体が、触手が、見る間に黒いヘドロ状に溶けてぶくぶくと泡立つ液体となり、水に流れていった。

(ふむ。たいした量ではないな。もともと期待はしていなかったが)

「ふぅ、何とかなったか」

 剣を鞘に戻して振り返ると、ルーナが複雑そうな顔をこちらに向けていた。

「セオ殿、今のはいったい……」

「う、うーん。まあ、何というか……」

「教えてください、セオ殿。巨岩をやすやすと両断し、見たこともない巨大な魔物を児戯のようにあしらい、怪しげな結晶を砕いて吸収するそれは一体何なのですか?私はニア様を守る守護騎士として知っておかねばなりません。その魔剣がニア様にとって危険な物なのかどうか、あなたが我々に危害を及ぼす存在なのかどうか……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ