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〜きなこ〜  作者: きなこのママ


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2/15

たばこ

なるたけ安いプランにしなければ。

「あとは任せた」と言い残し、さっそく部長から連絡が途絶えた。

仕方なく私は大学から電車で一時間圏内を地図で捜索する。


キャンプ場が併設されている山を見つけるのはそれほど難しいことではない。

ただし幾つか懸念はある。


「どうした、木嶋。しかめっ面なんかして」


同じ学科の三木隼人(はやと)がチーズバーガーにかぶりつく。空いた手でカップを掴んで勢いよくコーラを喉へ流し込む。


「また探検部の企画か?」


隼人は探検部の歓迎会にだけ参加して、そこから何度か部室に顔をのぞかせたものの、一度も行事に参加したことがなかった。


その割には私やキナコと授業で顔を合わせる度に部長の面白エピソードや企画倒れの廃墟ツアーなどの話を聞かされて、新入生の寺門さんなんかよりも余程内情に詳しい。


「山に出かけよう、ってことにはなってる。電車で行けるところも多い。でもさ、やっぱり車のほうが楽だよな」


「駅からキャンプ場や宿泊施設まで遠かったらレンタカー借りるしかないんじゃない?クーラーボックス担いで歩くのは炎天下では自殺行為だぜ」


唇についたケチャップを舐め取ると隼人は大きく伸びをする。

二人でシェアしているフライドポテトはおおかた隼人が平らげたようで、袋が軽くなっている。


「でもレンタカーって結構するよな」


「寺門は免許ないし、部長とペーパードライバーの木嶋が運転手確定だとすると保険もフルカバーだろ?高くつくぜ」


部費に頼れないなかで遠方へ旅をするのは厳しいという予想はついていたが、やはり現実的に考えるとショックが勝る。


「どうしたもんかな。お手上げだ」


マクドナルドの店内には観光客の外国人が詰めかけ、近くのレジでクルーが流暢な英語で対応をしている。


冷めたバーガーを口にするとピクルスの酸味よりも苦味が舌にこびりつく。


「んー、あとは車を持ってるやつに借りるしかないんじゃない?」


「それも一度は考えてみたよ。でもさ、ただでさえ学生は帰省で減ってるからそう簡単に見つかるかな…」


私の心配を余所に隼人はニヤニヤしてストローを咥えている。


「兄貴が今オーストラリア行ってんの」


「ん、留学ってこと?」


「いいや。ただの遊び。向こうは冬だから、国内の避暑地より快適に過ごせるんだってさ」


「そうか、それでレンタカーと何の関係が?」


大量の袋を抱えた外国人観光客が会計を終えて私と隼人が座る席から遠ざかっていく。


束の間静けさの戻ったタイミングで隼人が口を開く。


「兄貴を説得してみるよ」


ーーーーー


「よし、それでは出発だ。ところで」


目深に帽子を被った部長が眉をひそめる。


「どうして三木くんもいるんだね」


「ハハ、お世話になります!」


ハイエースで現れた隼人を見るなり部長はため息をついた。


「歓迎会だけ来て幽霊部員となったキミがまた姿を現すとはね」


「まあまあ、無用の用ってやつですよ」


「すみません部長。私がお願いしたんです」


「む、木嶋くんの頼みなら仕方あるまいな。ではみんな準備はいいかな?」


「寺門さんが帰りました!」


キナコが声を張り上げる。

ハイエースにザックや道具を積んでいた私たちは一斉にキナコの方へ目を向ける。


「帰ったあ?」


部長が顔をゆがめ、私は耳を疑う。


「急用ができたとかで、バタバタ荷物抱えて行っちゃいました〜」


「部長であるボクに報告する間もないほどの出来事だったのか?それはそれでとても心配だな」


「フフ。単に面倒くさかっただけじゃないですか?」


ニヒルに笑う隼人を部長がじーっと睨めつける。


「あ、でも寺門さんからの伝言預かってて、楽しんできてください!だって」


二人をなだめながらキナコが私にウインクする。


「寺門さんには気が引けるけど、ここで解散ってわけにもいかないから、取り敢えず出発しましょうか」


私が部長の肩を叩くと、唇を尖らせつつも後部座席に乗り込んだ。


「それではレッツゴー!」


「キナコくん、それ古くない?」


「え、そうですか?」


助手席は後部座席よりも一段高い。

私がシートベルトを装着したのを確認した隼人がアクセルを踏む。


「隼人のお陰で助かったよ」


「それは旅が終わってから言えよ。まだ始まったばかりだぜ」


隼人がお気に入りのジャズミュージックをかけるとキナコがノリノリで踊りだす。


夜更かししていたのか部長はすでに寝息をたてている。


「キナコ、寺門さんの緊急案件何だか分かった?」


「それがね…」


その瞬間グループラインに写真が送られてきた。

送り主は寺門さんで、画面には茶色いカメが表示された。


「まさかペットのカメの餌やりに家に戻ったんじゃない?」


冗談めかして隼人が微笑む。


「ハハハ。まさか、ね」


キナコは苦笑いしながら部長を見る。

部長はいびきをかきながらお腹も掻いている。





(続)

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