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追放S級鍛冶師、孤児たちと最強ギルドを作る  作者: 東野あさひ


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第54話「青玉の広場、火と灰の開幕」

王都の中心にある「青玉の広場」は、早朝から人々のざわめきで溢れかえっていた。

石畳には王紋が刻まれ、四方には貴族や商人たちの観覧席が組まれている。

その中心――特設鍛冶競技台では、まだ冷えた金床と炉が静かに出番を待っていた。


《火の牙ギルド》は予定時刻より早く現地入りしていた。

工房から持ち込んだ鍛冶道具一式を並べながら、弟子たちがそれぞれの役割を再確認する。


「フェン、刻印は風陣と破断の二重だ。グリト、補助刻印を一分前に点火。ズレたら即座に修正を」


「了解、サーシャ。ライラ、例の盾、今日が初お披露目だな」


「うん、絶対に外さない」


リィナは静かに炉の火を確認し、微調整していた。火の安定、熱量の波。すべては今日のために、昨日まで積み重ねてきた。


そして、その背後――


「ようこそ、牙ども。よくここまで這い上がってきたな」


灰色のマントを翻して現れたのは、《灰狐商会》の代表、グレン・マイスターだった。

その後ろには、漆黒の鍛冶服を身に纏った職人たちが並び、まるで軍のように整列している。


「公開勝負なんて、見せ物にするにはちょうどいい。ここで潰せば、お前らの“夢”も“評判”も地に堕ちる」


フェンが怒気を含んだ視線を向けようとした瞬間、オリンの重い声が響く。


「火を見ろ、フェン」


その一言で、フェンの肩が静かに降りた。


「……ああ。俺たちは、俺たちの火で証明するだけだ」


観客のどよめきの中、審査員席に立ったのは、老鍛冶師トロワ・ザンナ。

その顔は静かだが、その目はすでに各鍛冶師たちの所作を見逃していなかった。


「それでは――王都主催・鍛冶技術公開競技会、開始!」


号令とともに、青玉の広場に鐘の音が鳴り響いた。


すぐさま、両陣営が動き出す。

《火の牙》は工房の動線通りに配置し、炉の点火と金属素材の加熱を開始。

対する《灰狐商会》も、流れるような動きで各作業台を整え、見事な連携を見せていた。


「時間は三刻。製作するのは『王都騎士団正式装備用の武器と防具一式』。審査対象は、構造・実用性・芸術性の三点とする」


トロワの厳格な声が響く中、オリンは静かに手を動かしていた。


――火を絞れ。


集中力が一点に集まり、偏温制御の能力で炉の温度を調整。

素材の中心のみを高温で焼き、その外層を絶妙に抑える。

これにより、刀身の芯は粘り強く、外側は鋭利な切れ味を持つ――まさに“理想の鍛冶”だった。


「グリト、次!」


「刻印、転写開始!」


「フェン、打て!」


カンッ! カンッ! カァァァンッ!


金床に響く音は、まるで鼓動のようだった。


その頃、グレンたち《灰狐商会》は魔術鍛冶を多用した高精度な刃物と、意匠の凝った盾を次々と仕上げていく。


「くっ……確かに、あの連携は脅威だな……!」


ライラが小声で呟いたが、すぐに口元を引き締めた。


「でも、私たちには“魂がこもった装備”がある」


「それに……親方の火がある」


誰かが言ったその言葉に、全員がうなずいた。


そして、制限時間が残り一刻を切ったころ、ついに《火の牙》は完成品を提出台へと運ぶ。


刃渡り八十センチの風陣双剣――

円環構造を持つ魔導盾――

軽量化と強靭性を両立した騎士装甲――


全てが、炎と技術と絆の結晶だった。


「これが、俺たちの“答え”だ」


オリンが静かに言ったその言葉は、どこまでも真っ直ぐだった。


対する《灰狐商会》もまた、圧倒的な精度を誇る作品群を提出していた。

特に彼らの“重騎士型自動修復盾”は観衆を驚かせ、審査員たちを唸らせた。


「こっちの勝ちは確定だな」


グレンがニヤリと笑った、その瞬間。


「審査を開始する」


トロワが無言で《火の牙》の双剣を手に取り、一振りした。

風を裂くような音と共に、試し切り用の鉄杭が――一瞬で真っ二つになった。


「……美しい」


その言葉は、トロワの口から零れたものだった。


一方、灰狐の作品は実用性と精度こそ完璧だったが、どこか“整いすぎている”印象を与えた。


やがて、審査結果が読み上げられた。


「総合評価――《火の牙ギルド》、勝利」


会場が一瞬静まり返り、そして――


「おおおおおおおっ!!」


歓声が巻き起こった。


サーシャが、ライラが、フェンが、グリトが、リィナが。

全員が、思わず涙を浮かべながら拳を突き合わせた。


オリンはただ一言、つぶやいた。


「……火を見てくれたか」


その視線の先、トロワ・ザンナは静かに微笑んでいた。

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