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追放S級鍛冶師、孤児たちと最強ギルドを作る  作者: 東野あさひ


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第33話「閃光の刃、疾風の誓い」

第二試合の開始が告げられた。


テーマは――「走る刃」。


観客席がどよめいた。スピードと精密さ、機動性と破壊力、両立が難しいとされる分野だ。

その舞台に、フェンが静かに立った。


「大丈夫。師匠がついてる。俺、やれる」


自分に言い聞かせるように呟いて、火床へ向かう。

目の奥に、闘志が宿っていた。



対戦相手は、王都工房《白雷炉》に所属する若き天才鍛冶師――エルゴ・ノートン。

まだ十七歳ながら、王都内で“神速の刃”と称される実力者だ。


「まさか、田舎の工房から本気で来るとはね。楽しませてよ」


彼の嘲笑にも、フェンは黙って炉に火を入れるだけだった。


「火を、見る」


オリンから何度も言われた言葉が、脳裏に蘇る。


“火を見ろ。素材の声を聞け。刃に宿る意志を忘れるな”


フェンが選んだ素材は、魔力伝導性に優れた《蒼鋼アズルスチール》。


軽くてしなやかで、強靭。


だが――扱いが難しい。


「フェン……大丈夫かな」

ライラが不安そうに呟く。

だがオリンは静かにうなずいた。


「フェンは“見極めた”。火も、素材も、自分も」



試合開始の合図。


二人の鍛冶師が、それぞれの作業に入る。


フェンは素材を火にくべると、微細な温度変化を“偏温制御”で補正しながら加熱していく。


「蒼鋼の融点は高い。でも、火の機嫌を損ねなければ、必ず応えてくれる……!」


打撃、加熱、鍛造――。

小柄な身体で大槌を振るうその姿は、まるで舞うようだった。


オリンの“見極眼”が、弟子の成長を見つめる。


「――躍動しているな。あいつ、火と一緒に踊ってるみたいだ」


グリトが感嘆の声を漏らす。


フェンは、速度重視の片手剣を打っていた。


刃の曲線は疾走時の空気抵抗を減らし、柄は滑らず握れる工夫がされている。


仕上げに彼が刻印したのは、工房の刻印《ハルドの炎》と、自身のシンボル《風の羽根》。


「……これが、俺の答えだ!」


完成と同時に鐘が鳴り響いた。


審査員の前に提出された二本の剣。


どちらも美しい仕上がりだ。


だが――


「これは……」


審査員のひとりが、フェンの剣を手に取った瞬間、表情が変わった。


「軽い。そして、バランスが……素晴らしい。動くための刃だ。まさに“走る刃”」


観客投票では、王都側に票が多く入った。


だが、審査員の総合評価は――


「第二試合、《工房ハルド》勝利!」


またしても歓声が湧き上がる。


フェンは拳を握りしめてオリンの元へ戻った。


「師匠……俺、やったよ」


「――お前の火は、よく燃えていた。立派だったな」


オリンの掌が、フェンの肩を軽く叩いた。


それだけで、フェンの目に涙が浮かぶ。


「くっそ……こんなの、反則でしょ……」


ライラが後ろで目頭を押さえていた。



だが――次が本番だ。


三試合目。オリン本人の出番。


会場の空気が、一気に張り詰める。


対するは、ヴェルク・ロザン。王都連盟の筆頭であり、かつて灰狐商会の武器を“正規品”と認可した張本人。


火床に並び立つ二人。


審査員が、第三試合のテーマを高らかに宣言した。


「最終試合のテーマは――『真実の刃』!」


一瞬、空気が止まったように感じられた。


オリンの目が、すっと細まる。


ヴェルクが、にやりと笑う。


「お互い、過去を背負ってるってわけだ」


「そうだな。だからこそ、火は偽れない」


「お前の刃がどれほど通じるか……俺が試してやるよ」


審査員がうなずき、試合開始の鐘が鳴った。


オリンは、静かに火に向き合う。


そこには迷いも怒りもなく、ただ、信じてきた“火”との対話があった。


弟子たちは、祈るようにその姿を見守っていた。


――次回、決着のとき。

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