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追放S級鍛冶師、孤児たちと最強ギルドを作る  作者: 東野あさひ


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第28話「灰焔工房、黒き鉄床の誓い」

王都の最深部、貴族街の奥――。

灰狐商会が総力を挙げて育成・支配する精鋭工房《灰焔》は、まさに黒き鉄床かなとこの名にふさわしく、威圧的な外観でオリンたちを迎えた。


黒鉄で縁取られた巨大な門、炉口のような意匠の建物、門番すらも鍛冶槌を腰に下げている。


「これが……灰焔工房……」


ライラがゴクリと唾を飲んだ。


「圧がすごいな……建物からして、火に支配されてるって感じだ」


フェンが口を尖らせると、隣でサーシャが頷いた。


「ええ。ここは“技術力”ではなく“武力と実績”で認められてきた。だからこそ、灰狐商会にとっては象徴的存在なのよ」


「つまり、最後の舞台としては申し分ないってことか」


グリトが静かに言った。左腕にはまだ包帯が残っているが、眼差しは凛としている。


オリンは門の前で立ち止まり、静かに言った。


「ここが、最後の火床になるかもしれん」


そして一歩、足を踏み入れた。



競技の説明は、かつてないほど簡潔だった。


「技術と芸術性、そして“買いたいと思わせるか”」


それが最終競技の審査基準だった。


「つまり、見栄えと話題性、ってことかよ」


フェンが眉をひそめる。


「いかにも灰狐商会らしい。商売として“売れる武具”を競わせるつもりだ」


サーシャが肩をすくめた。


「それって……私たち、今まで“良いモノを作る”ことだけ考えてたのに……」


ライラが拳を握る。


「でも、私たちが作ってきた武具って、売れるかどうかより“持つ人が戦えるか”を大事にしてたよね?」


「それでいい。俺たちはそれで勝つ」


オリンの声は揺るがなかった。


「他所の価値基準で揺れても、刃は曇る。火を見ろ。お前たちの信じる刃を打て」


全員が、力強く頷いた。



三日後、審査会場には――観客がいた。


各国の商会代表、武器商人、王国軍関係者まで。

これは“実質的な展示会”だった。


灰焔工房の展示台では、巨大な両手剣に炎が刻まれていた。


「《爆裂鋼刃・バル=クレスト》。揺れるたびに爆撃する刻印付き。対魔獣戦闘用の高威力武装です」


審査官たちが頷き、観客からどよめきが上がる。


その横、オリンたちの作品は――控えめな外観の、一対の双短剣と盾。


だが、その隣には、分解された構造パネルと素材表が細かく展示されていた。


サーシャが解説に立つ。


「こちらは、操者の癖を自動的に調整する“適応型双短剣《双燈そうとう》”。そしてこちらが、受け流しと弾性反射を両立する楕円型盾《輪環りんかん》です」


フェンとグリトが実演を始めると、観客の視線が集まり始める。


「装備者の握り癖を検知して……あ、あっちで見てください、柄の部分が変わった!」


「盾が……え、斜めに受けたのに衝撃が流れた!?」


審査官の一人が目を細めた。


「だが、爆発する剣のような派手さはないな」


「派手さは売れ筋かもしれないが、実戦で使えるのは後者だろう」


評価が割れている――だが、オリンは焦らなかった。


彼らは、火に嘘をつかず、ただ正直に“戦える武具”を作っただけだった。



その日の夜、結果発表。


審査官が最後に読み上げたのは――


「……“総合評価部門”優勝は、鍛冶工房ハルド


一瞬の静寂。そして――


「やったあああああああああああ!!」


フェンが叫び、ライラとグリトが跳ねるように喜び、サーシャが涙ぐみながら拳を握る。


オリンは黙って、空を見上げた。


夜空の向こう、火のように輝く星のひとつに、かつての“工房の仲間たち”を想った。


ヴォルグの姿は、観客の中にはなかったが――その背中は、どこかで見てくれていた気がした。


「……火は、まだ燃えている」


小さく呟くオリンに、サーシャがそっと囁いた。


「これからですよ、先生。まだ、伝えるべき火は、たくさんある」


オリンは、ほんのわずかに――笑った。

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