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追放S級鍛冶師、孤児たちと最強ギルドを作る  作者: 東野あさひ


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第25話「王都開幕、火は再び試される」

王都に着いたその日、オリンは深く息を吐いた。鉄と煙の匂いに満ちたこの街は、かつて夢見た場所だった。だが今、その空気はどこか乾いて感じられた。


「すっげぇ……これが、王都……!」


フェンが目を輝かせて通りを見渡す。舗装された白石の道、尖塔が連なる空、そして鍛冶屋がひしめく工房街。ライラは早速、防具を並べた露店に目を光らせ、グリトは通りすがりの機械仕掛けに夢中でスケッチを始めていた。


「防具専門の店、多すぎ。全部見て回りたい……」


「見たことない機構だらけ……ヤバい……」


サーシャはそんな弟子たちを後ろから見守りながら微笑んでいた。


「浮かれすぎないで。ここからが本番よ」


オリンは頷いた。


「火の前で、嘘をつくな。大会でも、俺たちが鍛えてきたものを見せるだけだ」


彼らは王都鍛冶大会のためにやってきた。王都を代表する数十の工房が腕を競うこの大会は、名声と信頼、そして新たな依頼を勝ち取る場でもある。オリンたちの辺境工房にとっては、正真正銘の登竜門だった。


王宮前の広場に集められた参加者たちは、王都有数の名工や貴族の御用鍛冶、豪商が支援するチームなど、いずれも実力者揃いだった。


「……ずいぶん場違いな顔ぶれが混じってるな」


誰かがそう呟いた。辺境工房の名札を見た参加者の視線が刺さる。だがフェンは口元を上げて言った。


「よく見とけよ。俺たちの刃がどれだけ通るか、な」


ライラも盾を抱き直し、グリトは無言でメモ帳を握りしめた。


「これより、王都鍛冶大会・一次競技を開始する!」


司会官の声が広場に響いた。


「一次競技の課題は、『無骨な刃に美を宿せ』。実用に足る戦斧を一時間で鍛造し、さらに“美”を加えること。開始!」


「……美、だと?」


オリンは眉をひそめた。ただ強ければいいわけではない。今回の競技は、力と芸術性の両立が問われている。


「フェン、素材の選定。ライラ、斧身のデザイン。グリト、装飾の補助器を即興で。サーシャ、研磨は任せる」


「了解!」


フェンは即座に斧に適した鋼材を選び、ライラは設計図を描き始めた。


「斧のバランスを崩さずに曲線を出す……ここに湾曲を――」


「ここ、蒸気管で模様を描いて発光させよう」


「了解。刻印線をここに回せば……よし、通電する」


設計と素材の選定が終わると、鍛造が始まった。赤熱した金属が打たれる音が広場に響き渡る。


「サーシャ、少しだけ角度をつけろ。光の反射が美しくなる」


「分かってる。斧は曲線で魅せるの」


磨き上げられた戦斧は、まるで翼のように美しい刃を広げていた。


「提出だ」


審査員たちが斧を手に取る。


「重さ、良し。刃の通りも文句ない……おお、これは――」


「バランスも装飾も見事だ。辺境とは思えん」


一部の審査員が唸り、一部は渋い顔をした。大会には政治も絡む。だが技術は、何よりも正直だ。


鐘が鳴る。


「一次競技、第三位――オリン・ハルド工房!」


「やったな!」


フェンが拳を握り、ライラとグリトが目を見交わす。サーシャは静かに頷き、オリンはただ目を閉じて火を想った。


夜。工房宿舎に戻ると、扉の隙間に一通の紙が差し込まれていた。


『次の競技では“王都のやり方”に従え。さもなくば、弟子の手足が無事で済むとは限らぬ』


灰狐商会の印が、赤く滲んでいた。


オリンは紙を燃やした。火は小さく、だが確かに燃え尽きた。


「……嘘をつくな、火の前では」


囁く影が揺らぐ。だがオリンの中の火は、なお強く燃え続けていた。

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