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デズモンドの最期

 凍えるほど冷たい夜空の中、キティを追うと、黒い森の中の黒い塔の上に舞い降りた。塔の上は牢獄になっている。真っ暗な吹きさらしの部屋には鉄格子がついていた。


 キティが音も立たずにペガサスから降りると、鉄格子の方へ駆けてゆく。鉄格子をガタガタ言わせたが、当然開かなかった。


 キティがゆっくりと後退りする。私とエドワードはキティの隣に立った。キティは呆然と牢屋の中を見ている。恐怖と驚愕で目が見開かれていた。


 牢屋の奥に、少年が膝を抱えて座っていた。薄汚れた金髪で、何かをうわ言を唱えている。目はめしいのように虚ろで、光がない。


「どうしてここにいるのかわからないわ。ベッドに入ったはずなのよ!それなのに、こんな高い塔の上に来てるなんて!それにこの男の子は誰なの?恐ろしいわ!監禁されていたの?」

 キティが真っ青になって言った。


「あなた、夢遊病なのよ。ペガサスに乗ってここまで来たの。でも、あれこれ説明する前にあの男の子を助けてあげないと」


 エドワードが力まかせに鉄格子の鎖を剣で叩きつけた。びくともしない。


「ペガサスに引かせるわ」

 キティはそう言うとペガサスの背に乗り、鉄の鎖をくわえさせた。


 天馬と少女が塔の上から空に駆け出す。やがて騒々しい音を立てて鉄格子がはずれた。


「マーク!」

 エドワードが寒い牢屋の中でおびえる弟を抱きしめる。


 マークは地べたで震えていた。たった今、自由になったこともわからないみたい。ぶるっと身を震わせ、兄の後ろを指さしたのだ。


 男が立っていた。剣をぬき、今にもエドワードに襲いかかろうとしている。


 みなが静止した。男はあとちよっと動くだけでエドワードを殺すことができる。


「王太子殿」

 デズモンドがせせら笑った。


「デズモンド、お前だったんだな」

 エドワードが憎しみのこもった目でデスモンドを見上げる。


「悪く思うな。マークはもう取り返せまいよ」


 デズモンドが剣を振り上げる。死を覚悟した……


 目を開けると、ペガサスがデズモンドを塔の端へと追いやっていた。彼は今にも奈落の底へと落下しそうである。


「クソッ!いまいましい雑種が!」

 デズモンドがののしった。


 それが彼の最後の言葉だった。あわれペガサスに蹴落とされたのだ。



「予言がキティのことだったなんて、考えもしなかった!」

 エドワードが夜明けのひんやりした空の中、私の耳元でさけんだ。


 ペガサスは私たちを乗せて、大空をとんでいる。私たちは自由だった。幸福だった。宮廷では、帰ってきた王子を祝って宴が開かれるだろう。

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