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青星の水晶〈下〉  作者: 千雪はな
最終章 魔術が復活した世界で
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03 | 護衛の増員

「ライナス様、私も一緒にアイヴァン様とのお話の場に伺ってもよろしいでしょうか」


「えっ、アリアが?」


僕は口に運ぼうとしていたフォークをテーブルの上に戻して顔を上げた。アリアは、部屋で待っているものと思っていたから驚いた。国内ならまだしも、他国(ユトレフィス)の公子との話し合いの場に行きたいなど、何か理由があるのだろうか。


「だめ……でしょうか」


そう言うとアリアは視線を落として、食事の手を止めてしまった。


先程の僕の話から気掛かりなことがあるのかもしれない。チェスターが抜けた帰路の体制を心配しているのかもしれない。いずれにしても不安を感じているかもしれないアリアを部屋に待たせておくのは僕にはできそうになかった。


「アリア、一緒に行こうか。貴女も含めた帰路の話をするのだから、同席しても問題ないだろう」


「本当ですか?」


アリアはパッと顔を上げて微笑んだ。



 ◇ ・ ◇ ・ ◇



朝食後に迎えにきたアイヴァン公子の従者の後ろを歩きながら、わがままを言ったと気にしていそうなアリアの手をそっと包んだ。


見上げるアリアを安心させたいと僕は笑みを返したが、内心は憂鬱だった。


ここへ来た時と同様、影武者と立場を取り替えて行動しないといけない。チェスターが一緒に帰国できないから代わりの影武者をレトーリアから呼び寄せなければならない。チェスターの実力に見合うように、もう二人の兵も追加で入国できるようアイヴァン公子に許可を求めていた。


―――代わりの影武者か


チェスターは(王子)として完璧に振る舞えるのだが、他の者はそこまでではない。そのため、僕があまり近くにいると違和感を覚える者も出てくるようだ。だから帰路では、ここへ来る時のようにアリアの護衛として側に控えることはできないのだ。


身の安全のためとはいえ、アリアが影武者にあの笑顔を向けるのを手の届かない距離から見続けなければならないと思うと、今からかなり気分が落ち込んでいた。ただ、その気持ちは表には出しては行けないと、ぐっと背筋を伸ばした。




「こちらです」


従者に案内され、部屋に入った。


「朝早くから申し訳ない。アリア殿もいらしたのですね」


アイヴァン公子は、僕らにソファに座るよう促した。


「私も同席させていただいてよろしいでしょうか…」


急に訪れたことを申し訳なさそうにするアリアに、公子が優しく笑った。


「アリア殿の希望もお聞きしたいと思っていましたので、歓迎しますよ。貴女がたを不安なくレトーリア国境までお送りできるよう手配するのが私の役目ですから」


「ありがとうございます」


アリアもほっとしたように微笑んだ。



「さて、ライナス殿。護衛の補充だが、チェスター殿が抜けた分として三名と聞いているが、よかっただろうか」


「はい、その三名の入国と、私の側についている間の帯剣の許可をいただきたい」


「わかった。貴殿らの帰国の際の護衛については、大公(父上)からも私の裁量に任されている。希望があれば遠慮なく仰ってください」



―――希望、か


無くはないのだが……と僕が考えていると、


「あの…」


とアリアが遠慮がちに口を開いた。


「アリア殿、何かご希望でも?」


アリアはアイヴァン公子ではなく、僕の方を見た。


「まだライナス様に相談してないのですが…」


「構いませんよ。ここでライナス殿と相談してください。ライナス殿も同意されることで私達ができることなら、この場で決めることができますよ」


公子はアリアが話しやすいようにと柔らかな口調でそう言ったが、僕はどんな話なのかと少し身構えた。


―――アリアが非常識なことは言い出さないと思うが…


僕は話を促すように頷いた。アリアも小さく頷くと、僕と公子を順に見ながら希望を口にした。


「護衛をもっと増やしていただくことはできないでしょうか」


「それは…」


それは僕も希望する。護衛が増えれば、影武者を使わず僕は僕として帰国すればいい。アリアも僕が側にいることを望んでそう言ってくれているのだろう。


しかし…、護衛が増えたことに疑問を持つ者がいれば、往路で影武者を使っていたと勘付かれるかもしれない。影武者を使う場合は、特別な理由がない限り全行程通すのが基本だ。


もし何か理由を付けて護衛を増やすとしても、それなりの人数の兵をユトレフィス(この国)に呼ぶためには手続きに日数を要する。アリアが倒れたことで帰国を延ばしていたが、国から早期の帰国をと書簡が届いていた。これ以上帰国が遅れるなら、アリアのために兵を送るから僕だけ先に帰るよう言われるだろう。



―――もしかして、アリアは僕と別々の帰国でも護衛が多い方がいいのだろうか


この国に到着した時に、着替えるのも待ちきれずに僕のところに来てくれたから、帰国の時も僕に側にいてほしいのだろう思っていたが、もしかしたら僕の思い違いかもとの考えも出てきた。


―――それほど不安なら、護衛の兵を呼ぶ手配をしないと。でも、アリアをここに残して先に帰るのは…


僕は考えがまとまらなくなってきた。


青星の水晶をお読みいただきありがとうございます。年内の更新はこのお話までとさせていただきます。


アリアの側にいたい王子がなんだかウジウジしてますね…。年明け落ち着きましたら、アリアとライナスのその後のお話を更新したいと思います。またお読みいただけましたら嬉しいです。


皆様、よいお年をお迎えください。  千雪はな

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