表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青星の水晶〈下〉  作者: 千雪はな
第6章 愛しい人をこの手に
72/86

11 | 愛しい人の腕の中(後編)

『愛しい人の腕の中』はアリア視点のお話です。

私を抱きしめたライナス様は大きく息を吐き、私の頭に頬を寄せた。安堵したようにも感じるが、その腕は小刻みに震えていた。


「もう目覚めないかと…」


頭の上から、本当に小さな声で漏れ出た言葉が耳をかすめた。


それほどまでに心配を掛けてしまったのかと、心が痛くなった。私は、ライナス様の腕の中で顔を上げた。


薄暗くてよく見えないけれど、その瞳は潤んでいるようにも見えた。


「ライナス様…」


まだ少し掠れてはいるが、声が出たことに私はほっとした。ライナス様の瞳は、見つめるうちに益々潤んできた。


「すまない…」


ライナス様は涙を見せまいと、ふいっと顔を逸らした。


私は彼に手を伸ばした。


少しひんやりする頬に手のひらを添えた。心配を掛けたことを謝ろうと思ったが、それより先に、ライナス様が驚いた様子で私に顔を近づけてきた。


口付けをされるのかと胸がドキンと鳴って目を瞑ったが、コツンと額同士が触れ合った。


「アリア、熱があるじゃないか」


そう言うと、ライナス様はさっと私を抱き上げて寝台へと寝かせてくれた。上掛けを首元までしっかりと掛けてくださり、ご自分のマントまで外して私に掛けてくれた。



広い寝台の端の方に寝かされたせいで、ライナス様の顔がとても近く感じた。


「寒くないか?」


「はい」


ライナス様は寝台の傍に置いてあった丸椅子に腰掛けて、私の右手を握りながら、もう一方の手を私の頬に添えた。


「よかった…」


安堵のため息と共にそう呟きながら、ライナス様は何度も私の頬を、そして髪を撫でた。前髪を横へと流した指が優しく滑るように髪先までくると、その手にした髪を持ち上げて口付けた。


私に向けられる眼差しはとても優しく、胸が温かくなる一方で、ライナス様がそんな表情をされる理由が気になった。


「ああ、本当によかった…」


その声は震えないように気を張っているようにも聞こえた。


「ライナス様…?」


私が呼び掛けると、ライナス様は座ったまま頭を寝台の上に乗せた。寝台の端の方で横になっている私の視界は、ライナス様の微笑む顔でいっぱいになった。


「アリア、詳しいことはこの熱が下がったら話してあげるよ。だから今はおやすみ」


そう言ってライナス様は私の額に優しく口付けた。


目を開けると、ライナス様が私を見つめながら微笑んでいた。髪を撫でていた手は、肩を(さす)り、背中を優しく叩いた。トン、トン、トンと叩く一定のリズムはとても心地よい。でも、鼻と鼻が触れそうな距離にドキドキして、すぐには眠れそうになかった。


「アリア……、よかっ…た…」


そう呟くライナス様の瞼がゆっくりと閉じていく。やがて背中を叩いていた手も止まった。


おそらく、私が倒れてからずっと心配してくださっていたのでしょう。


―――私はつい数刻前に倒れたように思っているど、本当は何日も経っているのかしら…


もしそうなら、ライナス様は今日までどれだけ心配してくださったことか。相当に疲れていらっしゃるはず。椅子に座ったまま頭を寝台に乗せたとても窮屈そうな姿勢なのに、あっという間に眠りに落ちてしまうのだから。


私は繋いでいる手をそっと自分の方へ引き寄せた。眠って力の抜けたライナス様の手のひらに頬を乗せると、ひんやりとした大きな手が、私の不安を熱と共に取り去ってくださるようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ