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青星の水晶〈下〉  作者: 千雪はな
第6章 愛しい人をこの手に
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05 | 隠されたもの(後編)

魔法陣の無数の線の重なりを見つめ続けて目の奥が痛くなり、ぎゅっと目を瞑った。


魔法陣の柄は細かい上、それぞれが似通っている。わずかな違いでそれが発揮する力が変わってくるのだ。ここに描かれている二つ…もしかしたらそれ以上の魔法陣がまるで一つのように重なっているものの中から既知の魔法陣を見つけるのは、思った以上に難しかった。



目を開けて、手にしていた魔法陣の紙を机の上にパサッと放るように置いた。


「はぁ…、本当にこれに載ってる中にあるんだろうか……」


スコットの話を疑うわけではないが、複雑な柄のわずかな違いを見分けられる気がしなかった。


ふとギルバートが休めと言っていたことを思い出した。


「少し寝た方がいいのかもな…」


僕は腕を上げると、椅子の背もたれにぐっともたれかかって伸びをした。天井をぼんやり眺めていたら、そのまま寝てしまいそうだ。


―――寝台へ行かないと…


鉛のように重い体を起こして立ちあがろうとしたが、何か違和感のようなものを感じた。


「んっ…?」


もう一度椅子に座り直して、机の上の魔法陣を全体的に眺めてみた。


どの時点で感じた違和感なのかと姿勢を変えてみたり、目を細めてみたり……


「あっ!」


僕はさっきまで確認していた紙と、奥に並べていた山から一枚を手に取り見比べた。柄をなぞるように視線を動かして確認していく。


「同じ……か?」


机の上に二枚並べて置き、急いで左側の一番上の引き出しから赤色のラベルが貼られたインク瓶を取り出した。蓋を開ける手が震えていた。


「落ち着け…」


自分に小さく呟いた。手が震えては確かめられない。


ペン先にインクを付けると、僕はふぅっと息を吐いた。


左に置いた紙を見ながら、複数重ねて描いたと思われる魔法陣にペンを入れた。赤い線を慎重に伸ばす。


わかりやすい輪郭をなぞり、徐々に細かい柄を埋めていく。ペンを進めるほど、それは左手に置いた魔法陣と同じである可能性が高まり手が震えそうになった。


それは――《魂を抜き去る》魔法陣。


アリアの魂を旧首都まで連れ去って水晶玉に閉じ込めた魔法陣。それに重ねられた魔法陣が、アリアに魂を戻したのにも(かか)わらず、目を覚ますのを妨げているのかもしれない。


そのもう一つの魔法陣が何なのか、当然のことながら気になる。しかし、まずはなぞっているものが本当に《魂を抜き去る》魔法陣なのかを確かめる必要がある。小さな違いでまったく別の魔法陣ということもあり得る。もう一つの魔法陣も、一つ目の魔法陣の線を綺麗に除かなければ、正確に一致するものを見つけられないだろう。


(はや)る気持ちを抑えながら僕は慎重に赤い線を繋げていった。





「できた……」


僕はペンをペン立てに刺すと、はぁ…っと大きく息を吐いて椅子の背もたれにもたれた。


数週間から数ヶ月を掛けて作られる魔法陣を数時間でなぞったのだから、線の強弱は全然違い、多少ずれているところもある。だが、もう一つの魔法陣の線を潰すようなことはなかった。


二つの魔法陣を区別するには十分な出来のはずだ。


もう一つの魔法陣はなんなのか。


また文献をめくりながら一つずつ照らし合わさなければわからないと思いつつも、紙を手にした腕を伸ばして少し遠目から見てみた。


ガタンッ!


思わず立ち上がっていた。


そのまま大股で歩き、前室への扉にぶつかりそうな勢いでそれを開いた。


「ロバート!魔術調査室へ行く」


「はっ。殿下、お休みなられていたのでは⁈」


ロバートは困惑しつつ僕についてきた。僕が静かにしていたから寝ていると思って前室(ここ)で待機していたようだ。僕の急いだ様子を察して黙ってついてきた。


僕は廊下へ出ると、魔法陣を挟んだファイルを手に魔術調査室へと急いだ。


赤くなぞった魔法陣に隠されていた線――それは、デイル・バルトリーの紋章を描いていた。

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