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青星の水晶〈下〉  作者: 千雪はな
第6章 愛しい人をこの手に
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02 | 魔法陣に祈りを(前編)

朝食を済ませ、廊下へ出たところをギルバートが待っていた。彼は、旧首都で療養をしているチェスターの代わりに僕の護衛兼側近の役割を務めていてくれていた。


「殿下、魔術調査室長殿より、魔法陣が出来上がったのでアリア様の解呪の準備されたいとのことです」


「わかった。始めてもらってくれ」


「かしこまりました」


ギルバートは一礼すると、魔術調査室の方へと廊下を歩いていった。


 ◇ ・ ◇ ・ ◇


コン、コン、コン___


ノックする音にビクッと肩に力が入るのを感じた。どうやら緊張しているようだ。平静を装いながら手元の書類から顔を上げると、向かいのソファの後の壁際に立っていたギルバートと目があった。


「魔術調査室からだろうか」


「ああ、アリアの準備ができたのだろう。見てくるよ」


そう言ってギルバートは前室へと歩いていった。すぐに廊下への扉が開く音がして、訪ねてきた者と静かに言葉を交わしているのが聞こえてきた。何を話しているかまではわからないが、落ち着いて話す様子から予定通り準備ができたということだろう。


僕はもう一度、手にしていた解呪の手順をざっと読み返した。この数日、何度も確認して覚えているが、失敗は許されないと思う不安を埋めるように更に目を通さずにはいられなかった。


「殿下、アリア様の準備が整ったそうです」


つい先程までの砕けた口調ではなく、側近然としているのは、すぐ近くの声の届く所に魔術調査班の者などユトレフィスの人間が待っているということだ。


「ああ、わかった」


僕はソファを立ち、ロバートが手渡してきた上着を羽織った。




「お伝えしております通り、医務室の近くで解呪の用意をさせていただきました」


廊下を出てアリアの部屋の前を通り過ぎながら、僕らを迎えにきた案内の者が少し振り返ってそう話した。


「ああ、聞いている。ありがとう」


そのあと会話は続かず、静かな廊下に僕らの硬い足音だけが響いていた。


 ◇ ・ ◇ ・ ◇


「こちらです」


そう言って通されたのは、前室を抜けた先の大きな窓から光が差し、白と淡い黄色でまとめられた明るい部屋だった。大きな寝台とソファなどは僕らが滞在している部屋と同様だが、装飾品が無いためか少し殺風景に感じられた。


寝台の横には、魔術調査室長のスコットをはじめ調査員数名と、そしてアイヴァン公子も立っていた。


公子はこちらに気づいて歩いてきた。


「アイヴァン殿、解呪の準備に尽力いただき感謝いたします」


「いや、エレーナを救ってくれた貴方がたのためなら当然のこと。私も立ち会わせていただくが、構わないだろうか」


「はい、もちろん」


魔術調査の最高責任者として公子も解呪の場に立ち会うことは事前に聞いていた。



「では、ライナス様はこちらに」


スコットに促されて、僕はアリアが眠る寝台の脇に立った。


「………」


僕はじっとアリアを見つめた。


胸元に揃えて置かれた手は、静かに繰り返される呼吸に合わせて小さく上下していた。ずっと閉じたままの唇や滑らかな頬が薄らと色づいているのは、彼女が生きていること感じられた。


頬に影を落とす長いまつ毛は、この後、動いてくれるだろうか。またあの綺麗な瞳で僕を見つめてくれるだろうか……


「___、ライナス様…?」


ハッと顔を上げた。何度か呼ばれていたようだ。


「ああ、すまない」


僕の隣に立つスコットが手にしているトレーをそっとこちらに差し出した。そこには、魔法陣が描かれた紙が乗っていた。

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