表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青星の水晶〈下〉  作者: 千雪はな
第5章 闇世の雫
55/86

03 | 祭壇

古く黒ずんだ重厚な木の扉を押すと、ゆっくりと煉瓦造りの建物の内側へと開いた。


黒魔術結社は、表向きは誰でも参加できる宗教的な集まりだ。本部にも祭壇を備えた礼拝堂があり、昼夜を問わず祈りを捧げることができると聞いていたとおり鍵はかかっておらず、すんなりと入ることができた。


扉の先の廊下の隅に受付のような机があり、焦茶のローブを纏った男が座っていた。


扉が開くのに合わせてゆっくりと顔を上げたが、僕を見ると、ガタッと音を立てて立ち上がった。


「えっ、このような時間に何用でしょうか。本日は巡回の予定もないはずです」


予定が書き込まれた台帳を慌てて確認してから僕の前に立ちはだかった。


「巡回ではない。アイヴァン公子殿下の書状もある。そこを退いてもらおう」


僕は封蝋を切って文書を広げると、闇夜の雫の集い――黒魔術結社の施設への立ち入りを許可する旨が書かれた箇所を指差して男に見せた。


「し、しかし……、少しお待ちください。司祭様に確認を…」


「その必要はない」


オロオロと僕を止めようとするその男の横を通り、廊下の奥へと進んだ。


「お待ちください!」


今は礼拝堂に入れないだの、準備をしなければいけないだのと僕を止めようとする声が後ろから追いかけてくるが、それを全て無視して僕は廊下を足早に歩いた。


廊下の突き当たりは、礼拝堂の前室と思われる場所だった。正面の両開きの背の高い扉を開け放つと、長椅子が両側に並んだ通路の先に黒いローブを纏った者達が数名立っていて、一斉に僕の方を見た。


「誰だっ!」


祭壇の前に立っていた背の高い男が振り返った。艶のない黒い長髪を後ろに束ね、長い前髪で顔が半分隠れたその男は神経質そうな印象だった。


男がこちらへ一歩進み出た。すると、その陰に隠れていた祭壇の上に置かれた水晶玉が見えた。


燭台の蝋燭の灯りしかない薄暗い礼拝堂の中で、水晶玉が淡い青色に光っていた。


―――アリアだ


根拠はないが、そう直感した。


「その水晶玉を渡してもらおう」


僕は低い声でそう言うと、腰に下げた剣に柄頭に右手を添えながら長椅子の間を祭壇へと大股で歩いた。


「勝手に入ってもらっては困る!」


黒髪の男はそう声を荒げたが、僕は立ち止まるつもりは一切なかった。右手は柄頭からグリップへと滑らせ、いつでも剣が抜けるように構えた。しかし、できれば剣を交えずに済ませたい。


「その水晶玉を渡してもらえば、すぐに立ち去ろう」


「今は神聖な儀式の最中だ。それ以上、近寄るな!」


―――なにが神聖な儀式だ。アリアの魔力を使って、人を呪うような魔法陣を作り出しているだけだろう!


アリアが悪夢にうなされたり、急に何かに怯えていたのも、ここで何かの魔法陣で術を発動させていたのだろう。


僕は怒りを感じて、奥歯を噛み締めた。


「止まれっ!衛兵、衛兵っ!!」


騒ぎ立てる男の声に、礼拝堂の向こうから複数の者達が向かってくる足音が聞こえてきた。


僕は剣を抜いた。


「お前っ、それを持って奥へ!」


祭壇の隣で怯えて立っていた小柄な女は、急に自分に向けられた命令にビクッと身構えた。


「何をしている!早くっ!」


その怒鳴り声に慌てて祭壇の上の水晶玉を台座のクッションごと抱えると、女は祭壇の奥に開いていた扉へと小走りに向かい出した。


―――逃がすものかっ!


僕は腕をその扉の方へと向けると、風を巻き起こした。


バタンッ


大きな音を立てて扉が閉まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ