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青星の水晶〈下〉  作者: 千雪はな
第4章 因縁と対峙
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08 | とある風景の素描

黒魔術によって昏睡が続くアリアを救うため、アイヴァン公子の助けを借りることにした。彼に見せてもよい資料を選別しようと黒魔術の資料を挟んでいたファイルを確認すると、数枚の素描(スケッチ)が入っていることに気づいた。



石畳の道の両側に煉瓦造りの建物が並ぶその風景には見覚えがあった。以前、黒魔術の水晶玉を通して見た昔の黒魔術結社の拠点と思われる建物までの景色を、その日のうちに絵師に伝えて描かせたのだった。


石畳の街の風景のほかに、石畳に立つ足元や、黒魔術結社の黒い鳥の紋がついた門扉の建物の絵もあった。


木炭で書かれた素描に、所々着色もされている。この景色が水晶玉の中で繰り返し映し出されるのを、アリアと一緒に見た時のことを鮮明に思い出した。


「ライナス殿、それは?」


アイヴァン公子が、僕がまじまじと見つめるものが何かと尋ねてきた。


―――我が国の景色だが、過去のものだから見せても差し障りないだろう


「これは黒魔術の水晶玉を通して見た過去の風景です。門扉の紋から、黒魔術結社の拠点のようです」


僕はテーブルに絵を並べて置いた。公子はそれを見ると、「ああ…」と軽く数回頷いて顔を上げた。その表情には驚きはなく、既に知っていることが伝わってきた。


「闇夜の雫の集い――黒魔術結社の本部ですね」


「えっ⁈本部って……、これはレトーリア(我が国)の景色かと…」


本部はユトレフィス公国にあるはずだ。


「間違いありません。グレン=アーバーという旧首都の風景です。私自身、この建物に訪れたこともあります」


「………」


公子がそう言い切るなら間違いないだろう。言葉が出てこない僕に、公子が続けて問いかけた。


「ですが、どうしてこれが過去だと思われたのですか?」


「それは、我が国の風景だとしたら、煉瓦造りの街にはもうこのような砕いたままの石を敷いた街はないので…」


「そうなのですね。この国では今でもこのような石畳です」


―――今でも…?それなら、あれは過去の景色ではないかもしれないのか?


「アイヴァン殿、ここへはすぐ行けますか?」


「いや、すぐには……どんなに急いでも五、六日は掛かります。この首都の北側に見える山脈を越えたさらに向こうの山の中腹にある街ですので」


「五、六日……」


その場所に何かアリアを救う手掛かりがあると思ったのだが、そんなに日数が掛かるとは。


「伝令の早馬でその日数です。普通なら、馬車で十日程度掛けて行く距離です」


―――伝令と同じように馬を乗り継げるように手配してもらうか……それで空振りだったら?また五日以上掛けて戻らないといけないのか。どうする…


水晶玉に映っていたのが黒魔術結社結社の本部なら、そこにアリアを助ける手掛かりがある可能性は十分に考えられる。しかし、それはただの僕の憶測だ。


―――もっと確実な情報を得てからか…


ふぅっと少し長めに息を吐き、心を落ち着かせた。


逸る気持ちからすぐに行動に移したくなるが、冷静になるよう自分に言い聞かせた。


「アイヴァン殿、この黒魔術結社の本部に何か手掛かりがないか探りたいんだが、手立てはあるだろうか」


「そうですね…」


公子は腕を組んで考え込んだ。早馬で五日以上掛かるのだから、現地の様子を知るのはすぐには難しい。


「すぐにでも現地に向かってみたいが、見当違いだった時を考えると…」


「ええ、ある程度情報を集めてから動いた方がいいでしょう。魔術調査班がありますので、まずはそちらに確認をしてみたいと思いますが……こちらの絵をお借りしてもよろしいですか」


「はい、是非お願いします」


僕はテーブルに広げた絵を揃えて公子に手渡した。

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