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青星の水晶〈下〉  作者: 千雪はな
第2章 ユトレフィス公国と呪い
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08 | 慣れない休日の過ごし方

朝食を終え、次は何をしようかと話しながらとりあえず私室へと向かっていた。今日は食事の予定だけ決めて、あとは一日スケジュールを立てずに過ごすことにしているのだ。


―――最初の朝食の予定から遅れたな…


「アリア、朝食に遅れて本当にすまなかった」


話が途切れたタイミングで改めて謝ると、アリアはパッと僕を見上げた。


「ふふふ、休日ですもの。ライナス様がゆっくり休まれたのでしたらそれが一番です。だから謝らないでください」


「しかし…、せっかくいつもと違う朝食を準備してくれたのに」


他は何も決めていないが、食事だけはアリアが前もってシェフらと相談して用意してくれていたのだ。


「あら、それなら予定通りですよ。殿下が起きたらリラの間に朝食を用意してください、ってお願いしましたから」


「………?」


「ふふっ、ライナス様が遅れたと思われている時間は、いつもの朝食の時間ではないですか?今日は時間は決めていませんよ」


僕の腕にそっと手を添えて、にこっと笑った。


「そうか…、食事まで時間が決まっていないって不思議な感じだな」


「いつも分刻みで予定が入っていますもの。今日はのんびりしましょう」


思えばここ半年程、まともに休みを取っていなかった。公務の他に、時間があれば黒魔術結社の調査をしていた。アカデミーや王城に収蔵されている資料を調べたり、潜窟(せんくつ)と思われる遺構が見つかった聞いて発掘に立ち会うこともあった。


休みの日も、書類を確認しながら過ごしていた。


「今日は書類を手にすることも禁止です」


アリアのわざとらしいしかめっ面に、僕は笑ってしまった。


「ははは、わかった。それで、今日は何をしようか」


「ライナス様は、何かなさりたいことはないのですか?」


「そうだな………う〜ん…」


隣を歩くアリアは僕の答えは何かと期待した眼差しをこちらに向けていた。


せっかくの時間だ。何か気の利いた過ごし方を思いつきたかったが、これまで決められた予定をこなすことしかしてこなかった僕には難しかった。


予定がない時は、本を読むか、魔道具を一人ひっそり眺めるか……


―――はぁ、そんなことにアリアを誘っても楽しくないだろう…


「……ええっと……、思い浮かばないな。すまない。アリアと過ごせたら何でもいいんだが」


「それでは、私のお願いを聞いていただけますか?」


「ああ、もちろん。何がしたい?」


「ライナス様の魔道具を見せていただけないでしょうか」


「え⁈僕の?そんなことでいいのか?」


「ええ、昔、いつか魔道具を見せてくださるって仰っていたので」


「昔って、あの爆発より…っ」


僕は言いかけてハッと口元を押さえて、顔をアリアから背けた。黒魔術に関して心配が募る今、魔法(ぎょく)の爆発のことを思い出させてアリアが不安にならないかと頭によぎった。


少しの間をおいて恐る恐るアリアへと視線を戻すと、僕の心配をよそに、アリアは微笑んで僕の言葉を補った。


「そうです。あの爆発よりも前に約束してくださいましたよね」


「あ、ああ…」


「またあんな爆発を起きるかもと思うと、自分から魔道具について話題にするのが怖かったんです…」


「それはそうだろう。僕だって不安に思うことがある」


「では、もう魔道具の収集はされていないのですか?」


アリアは少し不安げな顔を見せた。なぜそんな表情を見せるのか、僕は彼女の気持ちを量りかねた。


「いや、最近は忙しくて新しく増やしてはいないが、一人で気分転換をしたい時には気に入った物を眺めることもある……な」


僕が魔道具をいまだに手元に置いていることは、隠しているわけではないが、わざわざ話すこともなかった。アリアがどう思うのか、その反応が怖くもあった。


「ライナス様が心配してくださっているように、私も魔道具に触れてまた爆発でも起きたらと思うと怖かったんです。でも、ライナス様が楽しそうに魔道具のことを話されていることをふと思い出して……。私、ライナス様から魔道具のお話を聞くのが好きだったので…」


「そう…なのか?」


「ええ。それで、お話だけではなくて、見せていただけたらと思ったんです」


「………」


「だめ、ですか?」


いつのまにか視線を落としていた僕の顔を覗き込むように体を少し屈めて歩くアリアが可愛らしく見えた。僕は自分の頬が緩むのを感じた。


「いや、僕の好きな物をアリアも見たいといってくれるのなら嬉しいよ。それなら、今から行こうか」


「ええ、是非」


「書庫の奥にしまっているんだ」


腕に添えられたアリアの手を僕の左手で包むと、彼女は僕を見上げて微笑んだ。

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