第45話 再びの森へ
森へ続く道は、昨日までとは違う空気に包まれていた。
朝霧が立ち込め、木々の間から漏れる光が不自然に揺らめいている。
「この感じ……」
リーシャが剣を構える。
「まるで、森全体が別の空間になってるみたい」
「ええ」
アイリスが周囲を観察する。
「でも、昨日とは少し違うわ。この歪みには、意図的な"構造"がある」
孝太はデバッグモードを展開した。
execute("analyze", "area", "range=max")
[解析結果]
[空間異常:検出]
[構造:規則的なパターンを確認]
[特徴:プログラムによる意図的な改変]
「まるで、誰かが迷路を作ったみたい」
アイリスが呟く。
その時、森の奥から風が吹いてきた。
しかし、それは自然の風ではない。
データの断片が、光の粒子となって舞い散っている。
「これは……!」
孝太が手に取ろうとした光の粒子を、アイリスが制止する。
「触らないで。これは"記憶の欠片"。誰かの思い出が、データとして具現化したもの」
風に乗って、かすかな声が聞こえてくる。
子供たちの笑い声、祭りの音楽、市場の喧騒。
そして——メイの声。
『世界の真実は、人々の笑顔の中にある』
「メイの記憶?」
リーシャが訝しげな表情を浮かべる。
「いいえ」
アイリスが首を振る。
「これは、この世界そのものの記憶。誰かが、意図的に呼び覚ましたのよ」
森の奥から、さらに強い光が漏れ出す。
まるで、三人を招くかのように。
「罠かもしれない」
リーシャが警戒する。
「それは承知の上」
孝太が一歩前に出る。
「でも、行かなければならない」
昨日の祭りで感じた温かさ。
人々の笑顔、日常の輝き。
それらを守るためには、この森に潜む謎を解き明かさなければならない。
アイリスが孝太の肩に手を置く。
「私たちには、昨日という特別な記憶がある」
その声には、強い確信が込められていた。
「行きましょう」
リーシャも剣を構え直す。
「メイが教えてくれた真実を、この目で確かめに」
三人は深い森の中へと歩を進めた。
光の粒子が、まるで道標のように彼らの前を漂っていく。
そして、その先には——新たな"真実"が待ち受けているのかもしれない。




