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第44話 朝の光の中で

祭りの翌朝、市場は早くも活気に満ちていた。

昨夜の余韻を残しながらも、人々は日常の暮らしに戻っている。


露店の後片付けをする商人たち、新鮮な野菜を並べる八百屋、パンの香りを漂わせるベーカリー。


「おはよう!」


タケが元気な声で三人を出迎える。


「昨日は楽しめたか? アイリスちゃん」

「はい!」


アイリスが明るく答える。


「タケさんの『タケちゃん焼き』、忘れられない味でした」

「そりゃ、よかった!」


タケが大声で笑う。


「また来てな。今度は新作も用意しとくで!」

「タケさん、これ……」


リーシャが小さな包みを差し出す。


「お礼の差し入れです」

「おや?」


タケが包みを開くと、中から丁寧に包装された茶葉が現れた。


「これは、あの高級茶葉やないか!」

「はい。いつもお世話になってるお礼です」

「あんたらなぁ……」


タケは目を潤ませながら、茶葉を大切そうに抱える。


「こんな高いもん、要らへんのに」


市場を歩きながら、三人は昨夜の出来事を振り返っていた。

花火の光、踊りの輪、人々の笑顔。


そして、森から漏れ出た不気味な光。


「やっぱり、あの光が気になります」


リーシャが真剣な表情で言う。


「ええ」


アイリスも頷く。


「でも、昨日の経験が、きっと役に立つはず」


パン屋のマリーが、三人を見つけて手を振る。


「あら、みんな元気そうね!」

「マリーさん、昨日はありがとうございました」


アイリスがお辞儀をする。


「お菓子、とても美味しかったです」

「あらあら、喜んでもらえて良かったわ」


マリーが優しく微笑む。


「また来てね。次は特別なレシピで作ってあげるわ」


その時、市場の片隅で、見覚えのある少女が一人の老人と話をしているのが見えた。

青紫色の髪——メイによく似た少女だ。


「あれは!」


孝太が駆け寄ろうとした時、少女の姿は忽然と消えていた。


「錯覚……だったのかな」

「いいえ」


アイリスが静かに言う。


「きっと、メイからのメッセージよ。この世界には、まだ私たちの知らない可能性が眠っている」


老人は、まるで何事もなかったかのように歩き去っていく。

しかし、その手には小さな歯車のアクセサリーが握られていた。


「昨日、メイが教えてくれたことは、きっと正しかった」


孝太が言う。


「世界の真実は、こういう日常の中にある。だからこそ、守らなければならない」


朝日が市場を明るく照らしている。

露店の隙間から漏れる光が、まるで祭りの提灯のように輝いて見える。


「孝太さん、アイリス」


リーシャが二人を呼ぶ。


「準備はいい?」


三人は森へと続く道を見つめた。

そこには、昨夜見た不気味な光の痕跡が、かすかに残っている。


「ええ」


アイリスが頷く。


「昨夜の思い出を胸に、行きましょう」

「おーい!」


背後からタケの声が響く。


「帰ってきたら、また寄りや! 特別メニュー、作っといたるで!」

「はい!」


三人が口を揃えて答える。


新しい一日の始まりを告げるように、遠くで鐘の音が響く。

市場の喧騒、人々の温もり、そして昨夜の祭りの記憶。


それら全てを護るために、新たな冒険が始まろうとしていた。

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