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第4話 街への道
孝太は門兵の男とともに歩き始めた。
見渡す限りの草原。空には二つの太陽が浮かび、異世界の景色を強く実感させた。
「お前、名前は?」
門兵の男が尋ねてくる。
「孝太……です」
「コウタか。変わった名前だな。まあいい。俺はガルフ。この近くの街の門兵をしている」
孝太は心の中でメモを取るように名前を繰り返した。
「さっきは驚いたぞ。お前、魔術師なのか?」
「え?」
「“敵意はありません” なんて、まるで《言霊の魔術》みたいだった」
どうやら、この世界には言葉に力を宿す魔法があるらしい。
孝太のスキル《プログラム言語の加護》も、それに近いものなのかもしれない。
「いや、俺は……ただの旅人です」
「ふむ……まあ、街に着けば冒険者ギルドで身元を確認される。余計なことは聞かんでおこう」
孝太はほっとした。
しばらく歩くと、遠くに城壁に囲まれた街が見えてきた。
「着いたぞ。あれがバルドールだ」
バルドール
異世界での最初の街——
孝太の新たな人生が、本格的に動き出す場所だった。