第36話 暴走するシステム
孝太の体から放たれた光が空間を切り裂く。
巨大装置との共鳴によって、デバッグモードの表示が急速にスクロールしていく。
execute("override", "system", "force=true")
[警告:システム過負荷]
[制御系統:不安定]
[エラー:制御不能]
「このままじゃ……!」
孝太が歯を食いしばる。
「私が補助する!」
メイが《デコーダー》を孝太に向ける。
虹色の光が、彼の周りを包み込んだ。
「これで干渉を抑制できるはず」
メイの声が響く。
リーシャは最後の機械生命体を斬り伏せながら叫ぶ。
「急いで! 装置が限界よ!」
孝太は新たなコードを紡ぎ出す。
execute("stabilize", "core_system")
execute("suppress", "energy_output")
[実行中]
[コアシステム:安定化開始]
[出力:抑制中]
「これで……!」
光の渦が、巨大装置を飲み込んでいく。
しかし——その瞬間、予想外の事態が起きた。
装置の中心から、黒い靄が噴出する。
それは、《エラーハンター》にも似た不定形の存在だった。
「あれは!」
アイリスの声が震える。
「プログラムの"残留思念"……!」
「やっぱりね」
メイが呟く。
「これが、私が探していたもの」
その言葉に、リーシャが剣を構え直す。
「メイ、あなたの目的は何?」
商人の少女は、悲しげな表情を浮かべた。
「私はね、"消された世界"を探してるの」
「消された……世界?」
「ええ。この装置は、世界を分岐させるんじゃない。消された可能性を——消された世界を再現する装置なの」
黒い靄が、更に大きく膨れ上がる。
その中から、人の形が浮かび上がってきた。
「まさか……」
メイの声が震える。
「お兄ちゃん……?」
靄の中の人影は、確かにメイと似た特徴を持っていた。
しかし、その姿は既にデータの集合体と化していた。
「何が起きてるんだ?」
孝太が問いかける。
メイは涙を浮かべながら答えた。
「この世界には、"消された歴史"がある。そして——その歴史の中で消された人たちが」
黒い靄が、彼女の言葉を遮るように襲いかかってきた。




