第32話 静寂の前
バルドールの街に、夕暮れが訪れていた。
冒険者ギルド《銀狼の爪》の一室で、孝太はデバッグモードのログを確認している。
execute("review", "battle_log")
[記録再生]
[対象:《エラーハンター》]
[特徴:高度な制御プログラム]
[目的:オリジナルコードの探索]
「やはり気になるわね」
アイリスがつぶやく。
「あの機械生命体は、明らかに誰かに作られたもの」
「ええ」
孝太は画面から目を離さない。
「しかも、ゼインのコードの特徴を持っていた」
扉がノックされ、リーシャが入ってきた。
「報告が終わったわ。ギルドマスターも事の重大さを理解してくれたみたい」
「そう」
孝太は立ち上がり、窓の外を見る。
夕陽に染まる街並み。人々は普段通りの生活を送っている。
その日常の裏で、世界の歪みとの戦いは続いていた。
「この世界を監視する存在……《プログラマー》」
リーシャが腕を組む。
「私たちは何と戦っているのかしら」
その時、アイリスが叫んだ。
「孝太、新たな異常を検出!」
[緊急警告]
[場所:東の森]
[状態:大規模な空間歪曲]
[特徴:未知のパターン]
「また始まるわね」
リーシャが剣に手を掛ける。
孝太は静かに頷いた。
「行きましょう」
二人が部屋を出ようとした時、孝太は立ち止まる。
「リーシャさん」
「なに?」
「ありがとう。あなたが協力してくれなかったら、ここまで来られなかった」
リーシャは少し驚いた表情を見せた後、微笑む。
「当然でしょう。この世界を守るのは、私の使命だもの」
夕陽が沈みゆく空の下、新たな冒険へと向かう三人は次なる戦いの始まりを予感していた。
世界の真実、そして《プログラマー》の正体。
全ての謎を解き明かすため、孝太の旅は続く。




