第25話 深層のコード
意識が戻った時、孝太は見慣れない空間にいた。
無限に広がる白い世界。そこには無数のコードが流れている。
「ここは……」
「デバッグ空間……いわば、この世界の深層よ」
アイリスの声が、いつもより鮮明に聞こえる。
振り返ると、そこにはいつもと異なるアイリスの姿があった。
「アイリス!?」
青白い髪をなびかせ、透き通るような肌を持つ少女。
それが、アイリスの本当の姿だった。
「ここなら、私もこの形で存在できるわ」
「でも、なぜ僕はここに?」
アイリスは結晶の方を見つめた。
「あの結晶が、あなたを"認証"したのよ」
その時、空間に文字が浮かび上がる。
[ORIGINAL CODE DETECTED]
[ACCESS GRANTED]
[INITIATING DEEP SCAN]
「っ!」
孝太の体が光に包まれる。
「落ち着いて」
アイリスが孝太の肩に手を置く。
「これは、あなたの"本質"を読み取っているの」
[SCAN COMPLETE]
[SUBJECT: KOTA]
[STATUS: EXTERNAL ENTITY]
[PERMISSION: ADMINISTRATOR]
「管理者権限……!?」
アイリスが静かに説明を始める。
「そう。あなたは特別な存在。この世界の"外"から来た、純粋なコードを持つ存在」
空間に新たな映像が広がる。
それは、この世界の歴史そのものだった。
「見て」
アイリスが指差す先に、世界の分岐点が映し出される。
「この世界は何度も書き換えられ、分岐を重ねてきた。でも、その度に"矛盾"が生まれ、歪みとなって蓄積されていった」
「じゃあ、ゼインの言っていた《プログラマー》って」
「ええ。この世界に干渉し続けている存在たち。でも、彼らには完全な書き換えはできない」
アイリスは孝太をまっすぐに見つめた。
「だからこそ、あなたが必要なの。"外"からの純粋なコードを持つあなたなら、この世界を正しく"修復"できる」
その瞬間、警告が鳴り響いた。
[WARNING]
[SYSTEM CORRUPTION SPREADING]
[IMMEDIATE ACTION REQUIRED]
「まずい……!」
アイリスの表情が曇る。
「世界の歪みが、限界に達しようとしている」
孝太は拳を握りしめた。
「どうすれば……」
「二つの選択肢があるわ」
アイリスが告げる。
「世界を完全にリセットするか、それとも……現状を維持したまま、歪みを修復するか」
選択の時が迫っていた。




