第20話 歪みの波紋
閃光が収まると、執務室は見る影もなかった。
天井には大きな穴が開き、書類は空中を舞い、家具は無残に破壊されていた。
「くっ……」
孝太は倒れた机の陰から身を起こす。
「皆さん、無事ですか!?」
「ああ……何とかな」
ギルドマスターは壁際で体を丸めていた。
リーシャは既に立ち上がり、周囲を警戒している。
「これが噂の"歪み"……私の剣じゃ、太刀打ちできそうにないわね」
孝太は急いでデバッグモードを展開した。
execute("scan", "damage_area")
[スキャン結果]
[空間歪曲:残存]
[影響範囲:拡大中]
[警告:二次崩壊の可能性あり]
「まずい、まだ終わってない!」
アイリスの声が響く。
「孝太、このままじゃギルド全体が崩壊する可能性があるわ!」
「わかってる……!」
孝太は急いでコードを組み立てる。
execute("repair", "space_structure", "local_area")
[実行不可]
[エラー:構造が不安定]
「チッ……! なら、これだ!」
execute("stabilize", "current_location", "force=true")
青白い光が空間を包み込む。歪んでいた空気が徐々に安定していく。
「見事な対応ね」
リーシャが感心したように呟いた。
「でも、なぜここでこんな異変が?」
その時、孝太の目に異常なデータが映った。
「これは……」
画面には見慣れない文字列が浮かんでいる。
ERROR: SYSTEM_CORRUPTION_DETECTED
SOURCE: UNKNOWN
TARGET: WORLD_STRUCTURE
STATUS: SPREADING
「アイリス、これって……」
「ええ、孝太。これは単なる歪みじゃない。誰かが意図的に仕掛けた"破壊プログラム"よ」
リーシャが眉をひそめる。
「破壊プログラム? まさか、ゼインの仕業?」
孝太は首を振った。
「いや、これは違う。ゼインのコードとは明らかに特徴が異なる」
「となると……」
ギルドマスターが立ち上がりながら言う。
「新たな敵の存在、というわけか」
孝太は歯を食いしばった。
世界の再構築を阻止したことで安心していた。
しかし、それは新たな戦いの始まりに過ぎなかったのかもしれない。
「リーシャさん」
「なに?」
「鉱山の調査、今すぐ出発しましょう。この歪みの正体を、できるだけ早く突き止める必要があります」
リーシャは無言で頷いた。
そして、二人は崩れた執務室を後にする。
孝太の頭の中では、新たな疑問が渦巻いていた。
——誰が、どんな目的で、この世界を破壊しようとしているのか。
そして、その答えは北方の鉱山に眠っているのかもしれない。




