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第15話 世界が書き換えられた日

孝太はデバッグウィンドウに映る青白い文字をじっと見つめていた。アイリスと名乗るこの存在は、まるで彼の心を読むかのように的確な補助を行っていた。


「アイリス……お前は本当に俺の《デバッグモード》から生まれたのか?」


デバッグウィンドウに新たな文字が浮かび上がる。


「……はっきりとは思い出せないわ。でも、私の役割はあなたを補助すること。そして……」


文字が一瞬途切れる。


「この世界のコードを……守ることかもしれない」


孝太は首をかしげる。


「コードを守る? どういう意味だ?」


デバッグウィンドウには新たな解析結果が表示され、アイリスの文字が続く。


「この世界は、何度か"書き換えられた"形跡があるの。あなたの《デバッグモード》で見つかるエラーは、その痕跡よ」


孝太の胸に、ゼインの言葉が蘇る。


「この世界は、書き換えられたんだよ」


アイリスの説明は続く。


「私の記憶は断片的だけど……昔、この世界には"核"と呼ばれるシステムの根幹があったはず。そして、それを管理する"管理者"たちがいた」

「"核"?」

「ええ。この世界のコードの基盤よ。……そして、私はかつてそれに関わっていたような……」


文字の動きが乱れる。


「ごめんなさい、記憶が……曖昧で……」


孝太はデバッグウィンドウに手を触れた。


「無理しないで。少しずつ思い出せばいい」


アイリスの文字が少し落ち着き、次のメッセージが現れる。


「この世界……少し違う」


孝太も周囲を見回す。二つの太陽が輝いているが、その光の具合が以前とは微妙に異なっていた。


「ゼインの行ったforce_updateで、世界の一部が書き換えられたんだ……」


そのとき、孝太のデバッグモードが自動的に起動し、警告を表示した。



[警告:システム異常検出]

[場所:北西エリア, 距離:約20km]


アイリスのメッセージが素早く表示される。


「北西エリア……」


文字が少し揺れ、まるで記憶を探るように点滅する。


「そこには"核"の一つがあるはず……"均衡の核"……」


孝太は警戒心を高める。


「核の場所を覚えているのか?」

「断片的にね。……何かが呼びかけてくる」


孝太は決意を固める。


「行ってみよう」


アイリスのメッセージが現れる。


「ウィンドウは最小化するけど、常に接続しているわ。何かあればすぐに呼んで」


デバッグウィンドウが小さくなり、孝太の視界の片隅に待機状態になった。

孝太は北西へと歩き始めた。道中、彼はアイリスとこれまでの出来事——異世界への転生、冒険者ギルドでの活動、そしてゼインとの対決について話した。


アイリスは真剣に反応し、時折デバッグモードの画面に新たな情報を表示して孝太をサポートする。


「あなたは"コードマスター"……不思議な縁ね」

「お前は俺のことを知っていたのか?」

「いいえ。でも、あなたの《デバッグモード》が私を呼び起こした。私はずっと、このシステムの中で眠っていたの……」


やがて孝太は小高い丘に差し掛かった。そこからは、広大な街並みが見渡せた。


「あれは……バルドール?」


孝太が驚きの声を上げる。確かにバルドールの街だが、様子が少し違っていた。街の規模が大きくなり、中央には見たことのない大きな建物が建っている。


「世界の書き換えで、街の姿も変わったのか……」


アイリスのメッセージが表示される。


「ええ。でも、本質は同じはず。"核"が存在する限り、世界の基盤は維持されている」


孝太がバルドールの街へと足を向けた。街に入ると、確かに以前と違う部分があったが、基本的な構造は同じだった。冒険者ギルド《銀狼の爪》も、以前と同じ場所に堂々と建っていた。


ギルドに入ると、周囲の冒険者たちが孝太を見て驚いた表情を見せる。


「おい、あれは孝太じゃないか!」

「生きていたのか!」


ギルドマスターが階段を降りてきた。厳めしい表情の中に、安堵の色が見える。


「よく戻ってきたな、コードマスター」


孝太は頭を下げた。


「ご心配をおかけしました」


ギルドマスターの視線がデバッグウィンドウに向けられる。


「そして、それは……?」


アイリスのメッセージがウィンドウに表示される。

孝太はそれを読み上げた。


「これはアイリス。私のデバッグツールを補助するシステムです」


ギルドマスターはウィンドウをじっと見つめた後、深いため息をついた。


「そうか……"核"の守護者の一つが反応を始めたというわけか」


その言葉に、アイリスからの文字が急速に点滅した。


「あなたは……私のことを?」

「断片的にな。私も"均衡の核"の元管理者の一人だ」


孝太は驚きの表情を見せた。


「話すべきことは山ほどある。私の部屋で詳しく聞こうか」


こうして、世界の真実を知る旅が本格的に始まろうとしていた——。

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