第10話 コードマスターの試練
孝太の拳を受けたレクスは、ゆっくりと姿勢を正しながら孝太を見つめた。
「なるほどな……」
彼の口元には、わずかに笑みが浮かんでいる。
ギルドの冒険者たちは、驚きと興奮の入り混じった表情で孝太を見つめていた。
「すげえ……レクスに攻撃を当てたぞ……!」
「あの新人、いったい何者なんだ……?」
ザワザワとした声が広がる中、レクスは孝太に向かってゆっくりと歩み寄った。
「お前……何か特殊な能力を持っているな?」
孝太は一瞬、どう答えるべきか迷った。
(《デバッグモード》のことを正直に話すべきか……? いや、さすがに危険すぎる)
適当にはぐらかそうとしたそのとき——
[システムメッセージ]
《高ランク者による識別スキルが発動しています》
(なんだと……!?)
レクスの目が鋭く光る。
「やはり……“隠している” な?」
孝太は冷や汗をかいた。
(……このままじゃ、完全に疑われる)
すると、その場にいたギルドの受付嬢ラナが割って入った。
「お二人とも! ここは模擬戦の場ですよ!」
ラナは苦笑しながら、場を和ませるように言った。
「レクスさん、あまり新入りを怖がらせないでください」
レクスはしばらく孝太を見つめた後、フッと息をついた。
「……まあいい。お前が本当に”何者”なのかは、また今度じっくり聞かせてもらう」
そう言い残すと、彼は背を向け、ギルドの奥へと歩いていった。
孝太は肩の力を抜いて、ホッと息をついた。
(とりあえず、危機は乗り越えた……のか?)
だが、その安心も束の間だった。
ラナが申し訳なさそうな表情を浮かべながら言う。
「孝太さん、実は……ギルドマスターがあなたに会いたいそうです」
「ギルドマスター?」
孝太は驚いた。
(まさか、もう俺の力がバレてる……!?)
「詳しい話はわかりませんが、今すぐギルドの上階へ来てほしいとのことです」
ギルドのトップが、自分を呼び出す理由とは何なのか。
孝太は、自分が異世界に来てからの運命が大きく動き始めていることを、改めて感じていた。
——そして、ギルドマスターとの対面が、新たな試練の始まりとなるのだった。