第一部 夢の一歩 4話
リセマラしていざ始めてみたら、あんまりハマらなかった時の虚しさ…
「良い朝だ〜!!」
ベランダで伸びながら気持ち良さそうに太陽を浴びる猿楽
「朝からうるさいなぁ、身体は大丈夫なのかよ?」
腕をブンブン振り回してからポーズを決める猿楽
「治った!」
苦笑いしながら答えるエンマ
「はは、なら良いけど」
ベランダからシルフが見える
「おーい、シルフー!おはようー!!」
シルフは何か咥えている
「おはようございます。マスター」
猿楽はシルフに大声で問いかける
「それなんだー?シルフ」
エンマはベランダからシルフの所へ飛び降りていく
「ピッグルーです。朝食にどうかと」
エンマはピッグルーを見て猿楽に話す
「猿楽!これ豚だ!まんま豚!」
猿楽は笑顔になり答える
「シルフ!居場所教えてくれ!飼う!!」
シルフはびっくりして答える
「飼う!?ピッグルーは知能も低いですし、言うことを聞くかどうか分かりませんよ?」
「ミニブタちゃんは飼いたいランキング高かったからなぁ!嬉しい」
シルフの言葉は届かず、1人の世界に入ってしまう猿楽
「ああなったらしばらくは気持ち悪い状態だぞ、シルフ」
エンマはやれやれとした顔でシルフに話す
「覚えておきます。エンマさん」
「エンマでいいよ、それとマスターじゃなくて猿楽って呼んだら泣いて喜ぶぞ、あいつ」
シルフは微笑みながら答える
「本当に泣きそうですね、いつか呼んでみます」
「猿楽が正気になるまでに飯作っちゃおうぜ、シルフ」
「料理も出来るのですか?エ、エンマ」
ニヤニヤしながらエンマは答える
「おいらに任せな!」
猿楽がリビングに降りてくるとエンマが料理をしている
「お〜、なんかいい匂い」
エンマは鍋をかき混ぜながら猿楽に話す
「猿楽、しばらくはなんとかなるけど食料どうにかしないとだぜ」
猿楽は匂いに誘われてキッチンに来る
「そうだな、畑を作れれば野菜はなんとかなるかな?」
シルフが質問する
「畑とはなんですか?」
猿楽は水を飲みながら答える
「畑っていうのは、野菜を作る場所だ」
シルフはポカーンとしている
「雑な説明だな!」
おたまで猿楽の頭を叩き、ツッコミを入れるエンマ
「いてっ、んー……」
猿楽は叩かれた頭を擦りながら説明する
「作物には種があって、それを土に埋めて、水をあげたりして、自分たちで食べられるところまで育てるんだ」
「なるほど、それならばわざわざ作物を探さずともこの場で採ることが出来るということですね」
「そういうこと!シルフは頭いいなあ!」
シルフは照れくさそうに答える
「そんな事ありませんよ、畑を考えたマスターの方が凄いです」
「まぁ、俺が考えたわけじゃないんだけど」
エンマが味見をして話す
「よし、できた!猿楽、盛り付けて!」
「オッケー」
猿楽はお皿を用意して盛っていく、その様子を見てシルフは不思議そうに質問する
「言葉が通じない時もこの様に二人で生活していたのですか?」
猿楽が答える
「そうだなぁ、最初の頃は俺が作ってたけど、見様見真似で手伝ってくれる様になって」
エンマが続ける
「一人で出来そうだなって思って、猿楽が寝ている間に朝ごはん作ってからはおいらが作る感じになってたな」
猿楽が笑いながら
「しかも俺より美味しいし、言葉がわからなくてもなんとなくやってほしい事わかるから」
エンマが苦笑いしながら続ける
「伝わらない時もあったけどな!」
猿楽は悲しい顔で
「えー、そうだったのかよ〜」
みんなで笑い合う
「さあ、食べよう!」
猿楽は席について
「今日はどんなご飯かな?」
エンマは答える
「やっとちゃんとおいらの料理を説明できるぜ」
猿楽は嬉しそうに
「確かに!お願いします!」
シルフも微笑みながら
「私の獲ってきたピッグルーがどんな料理になったのか気になります」
エンマはいつの間にかコック帽をしていて、話し始める
「えー、ゴホン…豚肉料理といえばおいらの中ではやっぱり生姜焼き」
猿楽は盛りつけの時にわかってはいたが嬉しそうに
「生姜焼き!」
シルフは全く分からず続きの説明を求める
「生姜焼き?」
エンマはまぁ待て、と言わんばかりに手を前に出し
「生姜とは多年生植物、その根茎は香辛料として食材に、生薬としても利用されている」
シルフは真剣に聞いているが、猿楽は早く食べたそう
「その生姜と、醤油を合わせることでさっぱりと、しかしガツンとくる、ご飯に最高に合う味になるのだ!」
シルフは期待に胸を膨らませ、猿楽はテーブルに顎をつきよだれを垂れ流しにしている
「合間に千切りキャベツを食べることで、口の中をリフレッシュし、いくらでも食べられる一品」
シルフは感動を、猿楽は遂に食べられるかと箸を持って準備する
「それが…生姜焼き!生姜は熱帯アジアが原産という説が最も有力だが、野生の生姜が発見されたことは無いという、不思議な植物であり……」
シルフはまだ続くのかと思いながらも真剣に聞いていたが、猿楽が我慢出来ずエンマの話に割り込む
「長ーい!!、はい、いただきます」
そう言いながら生姜焼きに齧り付く猿楽
「いただきます」
それを見て我慢出来なくなったシルフも生姜焼きに齧り付く
「おい!お前らまだ話は終わってないぞ!」
怒るエンマだが、美味しそうに食べる二人を見て、嬉しそうに微笑むエンマ
「うめぇ!」「美味しいです」
〜場所は変わり王宮〜
「勝手なことをして申し訳ありません…しかし強い人材を集めるには良い機会かと」
ベシャリは膝をつき謝罪している
「まぁ、これもいい機会かもしれんが、強者が集まるかどうか」
王は心配そうに言う
「こちらから声をかけた者たちもいます、それと一つお願いが…」
疑問の表情をしながら王は聞く
「何をして欲しいんだ?」
ベシャリは不敵な笑みを浮かべる
〜戻って猿楽達〜
満足そうにしている三人
「ふー、美味かった!」
猿楽は今後の計画を話し始める
「シルフは弟達の居場所に心当たりはある?」
シルフは不安な顔をして
「分かりません、弟達と別れた崖の場所もなんとなくしか…」
エンマは悲しい顔で
「そうか…」
猿楽は笑顔で言う
「じゃあとりあえずはそこに行ってみよう!全く手掛かりがないわけじゃなくてよかった!」
シルフは猿楽の明るさに引っ張られて少し微笑みながら
「そうですね、行ってみましょう」
エンマは猿楽の口を押さえて
「よし、今から行こう!って言おうとしただろ?」
猿楽は何でわかるんだとびっくりした顔で頷く
「どのくらいかかるかも分からないんだ、ちゃんと準備して行こう」
エンマの言葉にシルフも同意する
「別れてからしばらくは一人で森を歩き回ってました、何の準備もせず行くのは危険かと」
猿楽も真剣に
「わかった!じゃあ今日ちゃんと準備して、明日の朝出発しよう!」
シルフは答える
「そうしましょう」
エンマは何が必要か考えながら
「猿楽、リュックとか用意して、食料はおいらが」
猿楽は楽しそうに
「オッケー!」
「私も何か手伝います」
「シルフはおいらを手伝ってくれ」
三人は協力して準備を始める、そして一夜明けて…
「よし、いざ家族探しに出発!」
「ありがとうございます、マスター」
猿楽の肩に乗ってるエンマが言う
「きっと猿楽はついでにいろんな魔物を飼おうとしてるぞ」
「あ、バレた?」
シルフは笑いながら
「マスターにお任せします。賑やかになりそうですね」
三人は森の中へ歩き始める
「いざー!」