第一部 夢の一歩 24話
イヴァンとの戦いを終え、アレルはロミルの前に立つ
「次はお前か、侍」
ロミルと対峙したアレルは
「お手合わせ願います」
ロミルは槍を手に取り構える
「刀を使うなら、使わせてもらうぞ」
アレルはロミルに
「全力の貴方でなければ面白くない、本気でお願いします」
ロミルは笑う
「ははは!面白がってる時間はないぞ!」
アレルは刀に手をかけ
「集中」
ロミルはアレルの周りに風が集まっているのを気にせず突っ込む
「居合抜刀・フウジン」
アレルは刀を抜き、振り抜く。
ロミルは槍を縦に構え、スキルを唱える
「その技は一度見た。ヒートタックル!」
ロミルは炎を纏い、突進する。
斬撃を簡単に弾き、アレルに迫る。
抜刀の流れで納刀したアレルの目の前にロミルが接近する
「なに!?」
驚くアレルをよそに、上段から槍を叩きつけるロミル。
アレルは驚きつつも、ギリギリのところで槍を躱し、刀に手をかける。
「避けたか!だが甘いな!」
アレルが刀を抜くよりも早く、ロミルはスキルを発動する。
「インパクトスチーム!」
地面に叩きつけられた槍から、高温の蒸気が勢いよく溢れ出る
「くっ!、煙断」
蒸気の熱さにやられながらも抜刀したアレルは、その蒸気を断ち切る。
ロミルはニヤリと笑い、アレルに槍を振る。
アレルもロミルの槍を刀で受け
「技が豊富だな、侍」
刀と槍が拮抗する中、ロミルはアレルに話す
「そのお言葉そのままお返しします」
ロミルはさらにアレルに近づき、耳打ちする。
アレルは表情一つ変えずにスキルを唱える、ロミルはアレルに合わせて同時にスキルを発動する
「立・巻」
「インパクトスチーム!」
アレルは鍔迫り状態だった槍を刀で回し、槍も刀も地面に突き刺す。
アレルの刀の周りから、竜巻が起こり、それに合わせて発動されたロミルの蒸気は一気に二人を煙の中へ包み込む。
会場はまた騒ぎ立てる。
「また何も見えなくなったぞ!どうにかしろ!」
「すげー!煙だ!」
「戦いはどうなってるんだ!?」
ベシャリは煙を見つめ、心の中で
「さぁ、侍の全力を引き出せ、ロミル!」
王はそんなベシャリを見ている。
煙に包まれた二人はお互い武器を引き抜き、話していた。
「温度も自在とは」
ロミルは鼻で笑い答える
「はっ、それぐらい出来て当然だとわかってんだろ!」
アレルは軽くお辞儀をして
「この戦いの裏とは?」
ロミルは答える
「話が早くて助かるよ、ベシャリがなんか企んでる」
アレルは疑問の表情で
「ベシャリ?」
ロミルは驚き
「王の側近だ、知らないのか?」
アレルは答える
「ああ、あのネズミの。しばらく森で暮らしてたので、国のことはあまり」
ロミルは笑う
「いいな!お前!アレルって言ったか、私に協力しろ!」
アレルは深々とお辞儀をして
「お断りします」
ロミルは即答で断られ、驚いた表情で
「なぜだ!」
アレルは答える
「魔物が苦手なんですよ、くしゃみが止まらない。貴方が近づくと鼻がむずむずする」
ロミルは気づく
「ニコのことか、さっきまで一緒にいたからな」
アレルは続ける
「結構しんどいんですよ、この体質。だから私は一人がいい」
ロミルはアレルに
「じゃあ何のために参加した?」
アレルは答える
「面白そうだったので、たとえ選ばれても騎士団に入るつもりはありません」
ロミルは考えながら
「そうか、ではこうしよう。お前は選ばん、その代わり一つ頼まれてくれるか?」
アレルは考え
「選ばれても断ればいいだけの話では?」
ロミルは笑い
「はっは!確かにな!私はこういうの得意じゃないんだ!一つ頼みたい、条件はそっちが決めてくれ」
アレルは答える
「では………」
煙が晴れ、両者向かい合っている…
ロミルはアレルに
「はははは!!!いいだろう、決まりだ!」
アレルはお辞儀をして、その流れで構える
「集中」
ロミルは先ほどと同じように突っ込む
「ヒートタックル!」
ロミルは槍を突き刺すように構え、突進するもアレルは一瞬にして視界から消える
「なっ!?」
ロミルの背後に現れたアレルは抜刀する
「居合抜刀・ライジン」
かろうじて槍をガードに持ってくるものの、アレルの攻撃はロミルにヒットする
「ぐっ!」
アレルは刀を納刀せず、ロミルに追撃する
「二乃太刀・バチ」
抜刀した刀を追うように、左手で持った鞘を逆手でロミルに打ちつける。
ロミルは思わず声を出す
「ぐっは…!」
アレルは鞘と刀を放り投げる。
ロミルはダメージを受け、怯みながらも目の前をよぎった鞘と刀に驚く。
「三・四乃太刀・フウウン・ライコ」
ロミルの背後に投げられた鞘から雲が現れ、ロミルを囲う。
雲の中をものすごい勢いで鞘と刀が流れていく。
突然囲われたロミルは状況を認識する間も無く、鞘と刀の攻撃を食らってしまう。
「ぐっ!はっ!…くそ!規則性がなく、鞘は打撃、刀は斬撃、まるで嵐の中にいるようだ…」
ロミルはダメージを受けながらも槍を構え
「フレイムランス!!」
雲を払うように強烈な一突きをする。
雲はその突きによって、一瞬にして消える。
瞬間。ロミルの腹に鞘が当てられ、流れるように刀を納めていくアレル
「納刀術・フウライボウ」
ロミルは驚く間も無く
「なっ」
カチャ。と鞘に刀が収まると同時に、ロミルは吹っ飛び、壁に激突する
「ぐはっ!!」
アレルは刀を帯に納め、再び構える
「これで決めます」
ロミルは地面に伏したまま心の中で考える
「何だ?身体の内側までダメージが…衝撃波?風か?」
アレルは腰を低くし
「集中」
ロミルは考える
「そもそもいつ刀と鞘を回収した?私の突きのタイミングを予測したのか?」
アレルは刀を握る
ロミルは叫びながら立ち上がる
「ははははははは!!!いいぞ!!考えるのはやめだ!全力で迎え撃つ!!」
アレルの口角が少し上がる
「面白い…」
ロミルは槍を構える
「パーガトリー」
ロミルの槍は煉獄を纏う
アレルは刀を引き抜き
「暴風刃」
ロミルも槍を突き出し
「フォラーレ」
アレルの凄まじい風の刃とロミルの煉獄の突きがぶつかり合う直前、二つの技の間に二匹のチュウチュウが割り込む。
強力な二つの技が消滅する…
ロミルとアレルは示し合わせたように、二匹のチュウチュウに素早く接近し、光り輝く石をそれぞれ一つずつ奪い取る。
ロミルは石を見つめ
「これが目的か?」
アレルはくしゃみをする
「ヘックション!だから魔物は…」
会場は騒ぎ出す
「何だ?」
「技が消えたのか?」
「相殺したんじゃないか?」
「だとしたらもっと衝撃波とか、爆発とかあるだろ?」
ベシャリは悔しそうにしている
「くそ!ロミルの奴め!!」
王はベシャリに近づき
「ベシャリ、何がどうなっているのだ?」
ベシャリは王に
「へ!陛下!何でしょう?もっと爆発するかと思ったんですがねぇ〜」
王はベシャリに
「違う。何を企んでるのだ?ベシャリ」
ベシャリは少し汗をかきながら
「企む?何のことでしょう?」
王はそんなベシャリに
「一度、大会を中断する!」
ベシャリは慌てて
「それはいけません!!観客たちが騒ぎ立てますよ!!」
王は観客の方を見る。すると
「おー!!すげー!!」
「速すぎて見えねぇ!!」
「スキル使わずにこれか!?」
王は会場を見る。
ロミルとアレルは目にも止まらぬ速さで戦っていた。
ベシャリはすかさず
「ここで止めたらあの女にも怒られますぞ!!」
王は玉座に戻り
「話は後でじっくり聞くからな」
ベシャリはお辞儀をする
「わかりました」
ロミルは戦いながら
「侍、名前は何だ?」
アレルも戦いながら答える
「アレル」
ロミルは笑い
「アレル、協力感謝する、約束は守る」
激しい攻防の末、ロミルがアレルを倒す
「お前も合格だ。中々良かったぞ」
観客は沸いている
ロミルは心の中で
「ベシャリ、お前が何をやりたいのかわからんが、少し付き合ってやる。思い通りにはさせない」




