表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/29

第一部 夢の一歩 2話

:個体名エンマを登録しますか?


人ではない、機械的な声だけが聞こえる。


「登録?」


目の前に″はい”と″いいえ”の文字が浮かんでいる。

生きてるのか死んでるのか、不思議な感覚を覚えながらも、とりあえず″はい”を選択する猿楽


:エンマを登録しました。

:スキルポイントを獲得しました。スキルを取得しますか?


「スキル?なんだこれ?」


目の前にたくさんの文字が見える。


「この光ってるのが取得できるって事か?」


猿楽は目の前で起きてる事に疑問を抱かず、ただ対応していく。


「この”翻訳”ってやつはエンマの言葉がわかるって事か?これにしよう!」


:”翻訳”を獲得しました。

:登録された個体との会話が可能になります。


「猿楽!猿楽!起きて!」


聞き覚えのない声がする、だが猿楽は直感的にそれが一緒にいたエンマのものである事を理解した。


「はは、すげーや、遂にエンマと話せるようになった」


「猿楽!起きた!」


猿楽が目を開くと目の前にはエンマの顔があった。


「うぉぉ!夢じゃねぇ!エンマが喋ってるー!」


猿楽は驚き飛び起きる。


「おいらの言葉がわかるのか?猿楽?」


「わかるわかる!一人称おいらかよ!最高だぁ!」


テンション上がりまくりの猿楽に若干引きつつエンマが答える。


「落ち着けよ猿楽!身体は大丈夫なのか?」


「え?あー」


我に帰った猿楽は噛まれた痛みを思い出す。


「痛ぇーー!!でも大丈夫だ!生きてる!」


「クゥン」


横で申し訳無さそうにしているシルバーウルフがいる。


「あはは、大丈夫だよ。友達になろう!」


シルバーウルフは猿楽の傷口を舐め始める。


「ありがとな、これですぐ治るな!」


「そんなわけないだろ、ちゃんと治療して休もうよ」


エンマは心配そうに猿楽に話す。


「エンマはなんか思ったより大人だな!家の中に救急箱があるはずだから、一旦戻るか」


「うん!」


シルバーウルフは門の前で立ち止まる


「あ、そうか!なんか入れないんだよな、どうしたらいいんだ?」


するとまた文字が浮かぶ


:個体名を登録してください。


「こいつに名前を付けたらいいのか、うーん」


シルバーウルフを見つめながら考える猿楽。

すると何か閃いたように笑顔になる。


「よし!決めた!お前の名前はシルフ!」


「シルバーウルフを短くしただけだな」


エンマはすかさずツッコむ


「嫌か?」


「ウォフ!!」


「そうか!嬉しいか!」


なんて答えたかはわからないが、シルバーウルフは名前を貰ったことが嬉しいようだ


:個体名シルフで登録します。よろしいですか?


「登録っと!」


:シルフを登録しました。

:スキルポイントを獲得しました。


「よし!これでみんな家の中に入れるな」


「マスター、ありがとうございます」


「ん?シルフ?」


丁寧な言葉遣いで話すシルフ


「どうやら登録すると会話が出来るようになるようです」


「スキルってやつか、シルフもなんか大人だなぁ」


「猿楽が子供すぎるんだよ」


「エンマ達が大人すぎるんだよ〜」


「マスター、早く治療をしましょう」


大人びた二匹に連れられ家の中に入っていく猿楽


「シルフは家族はいないのか?」


器用に包帯を巻くエンマをよそに猿楽が話す


「家族はもういません、空腹で食糧を探していた所、マスター達に出会ったのです」


「そうなのか、じゃあこれからは俺達が家族だな」


一瞬の間、シルフが答える


「はい、ありがとうございます」


「大変だぞ、猿楽の世話をするのは。ほれ、終わり!」


エンマが包帯を巻き終えながら話す


「あれ、俺って世話されてる側だったのか?」


ぽかんとした顔の猿楽とやれやれといった顔のエンマを見てシルフが話し出す


「お二人の関係性、とても良いですね。信頼し合ってるのが見てわかります」


「そうか!えへへ」


嬉しそうにする猿楽と


「その顔でこっち見んな」


少し照れくさそうに猿楽に背を向けるエンマ


「なんだよ〜、エンマ〜」


「ふふ、なんだか弟達を思い出します」


2人を見て微笑みながらシルフが話し始める


「我々シルバーウルフは家族で行動します。生涯を家族と共に過ごすのですが、私はあの時逃げ出しました。家族を置いて…」


〜回想〜


「大丈夫か!!」


身体中ボロボロで今にも倒れそうなシルバーウルフ


「お兄ちゃん、、、逃げて」


一点を見つめて威嚇するシルバーウルフ


「おうおう、まだいるぞ、これは良い金になりそうだ」


そこには人間の姿


「てめぇら、出来る限り生け捕りにしろ!抵抗するようなら殺せ」


多くの人間達がスキルを唱えたり、剣を持って向かってくる。


「あなたは弟達を連れて逃げなさい!」


一際大きいシルバーウルフが2頭、人間達に向かい合うように立つ


「母さん、俺も闘う!」


「お前は弟達を守れ!足手まといだ!」


「父さん…」


目の前で苦しそうにしていたり、怯えて動けなくなっている弟達が口々に言う


「お兄ちゃん…」


「父さん、母さん、絶対生きて帰ってきて!」


「ああ、我々シルバーウルフは家族で生涯を共にするんだ。」


弟達を連れてとにかく遠くへ逃げていく


「頑張れ!きっと助かる!」


目の前に崖が広がる


「弟達を連れてここを飛び越えられるか?」


立ち尽くすシルバーウルフ


「へっへっへ、逃がすかよ」


後ろを振り返ると人間達が追いついてきている


「どうしたら…」


すると弟達が目の前に立ち並ぶ


「お兄ちゃんは逃げて、僕達じゃあこの崖は越えられないから」


「何を言ってる!俺はお前達を生きて逃がす!」


「家族は守り合うんだよ、お母さんが言ってた」


「お父さんがね、お前達は皆強いって言ってくれたんだ」


「お兄ちゃんは助けを呼んできてよ、それまで僕達、闘うから」


「子供達なら楽勝で生け捕りだな、いくぞオラァ!」


突っ込んでくる人間達


「お前達を置いて行けるわけないだろ!ガァァ!」


人間達に斬りつけられながらも噛み付き、蹴り飛ばしていくシルバーウルフ


「くそ、あの一匹だけ元気だな、まずはあいつからだ行くぞ!」


「おう!」


人間達は一匹のシルバーウルフに集中攻撃する


「お兄ちゃん!!」


弟達が盾になり弟達に突進され崖の下へ飛ばされるシルバーウルフ


「お前達!!」


弟達がやられていく音を聞きながらどうにも出来ず落ちていくシルバーウルフ


「ワォーーーン!」


心の叫びを吠えながら崖の下の闇の中へ消えていく


〜現在〜


「俺以外の家族はきっともう…」


シルフの話を黙って聞いていた猿楽が口を開く


「きっとまだ生きてる家族もいる、それに今シルフは1人じゃない、俺達家族がいる!」


目に涙を浮かべ答えるシルフ


「ありがとうございます。マスター」


猿楽は立ち上がり、宣言する。


「よし!今から行くぞ!シルフの、いや俺達の家族を探しに!」


「今から!?」


エンマは驚きつつも笑う


「マスター、まずは傷を治しましょう」


シルフは猿楽の傷を心配する


「俺の傷なんてかすり傷みたいなもんだ!早く助けに行くぞ!」


「シルフ!匂いで場所わかるか?」


涙を浮かべつつも笑いながらシルフは答える


「マスター達のせいで今は鼻が効きませんよ…」


猿楽とエンマはシルフに抱きつき3人で泣きながら笑い、今夜は休む事になった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ