第一部 夢の一歩 19話
気づいたら5月。早いよ、時の流れ。
倒れたヴォルフガングから邪気のようなものが消えていく
それとともにヴォルフガングは小さくなり、大きなシルバーウルフになる。
父の姿に戻ったヴォルフガングを見てJr.は喜ぶ
「お父さんに戻った!!」
猿楽はシルフを支えながら、倒れているシルフの父親の方に向かう
「父さん…」
シルフは猿楽から離れてふらふらになりながらも自分の脚で父親に近づく
猿楽も近づき
「死んでないよな…?」
他のみんなも近づいてきて
星助がシルフの父親を見て話し出す
「魔力を感じるから、生きてると思う」
猿楽はそれを聞いて、嬉しそうに
「よかった!!よかったな!シルフ!」
シルフはみんなの方を向き
「皆さんのおかげです、本当にありがとうございます」
シャークがシルフに
「俺たちはサポートしただけだ」
フックが続いて
「あなたの技がなければそもそも不可能でした」
エンマも
「シルフ!凄かったぜ!」
猿楽はみんなに
「家族みんなの力だ!」
シャークは猿楽に
「だから俺たちは家族になった覚えはねぇって!」
フックはシャークに
「くどいですよ、もう諦めましょう、シャーク」
コウモリがやってきて
「素晴らしい連携でした。いい雰囲気のところ申し訳ないんですが、早くここからでないと…」
コウモリが話してる途中から天井が崩れたりしていく
エンマがみんなに
「急いでここを出ないとやばいぞ!」
シャークがしんどそうに
「わりぃ、もう動けそうにねぇ、みんなそうだろ?」
フックが
「そうですね、それにシルフのお父さんもこの状態です」
猿楽が悩むみんなを見て
「俺がみんなをおんぶする!!」
シルフが猿楽に
「マスターも怪我をしています…無理です」
シャークがコウモリに
「ヴァンピ、どうにかできねぇのか?」
コウモリに向かって話すヴァンピを見て猿楽が
「ヴァンピ?」
シャークが答える
「こいつの本体の名前だ」
猿楽はコウモリに
「ヴァンピって言うのか!改めてよろしく!」
フックが話し出す
「自己紹介してる暇はありませんよ、ヴァンピ、どうにかできますか?」
ヴァンピは答える
「もっと私の分体を連れてきていれば運ぶことができたのですが…」
フックは悩みながら
「今から向かっても間に合わない…」
みんなが諦めかけている時、崩れるダンジョンから逃げるモーグルの群れが通る。
エンマがそれを見て
「あれは…」
シャークも見ていて
「あいつらも焦ってんな」
猿楽も見ていて
「あのみんなに運んでもらおう!!」
猿楽は走り出しモーグルの群れに話しかける
「なぁ!!俺たちのことを運んでくれないか!!頼む!!」
モーグル達に猿楽の声は届かない、大きく天井が崩れる
エンマは焦る
「おいおい、もうやばいぞ!!」
シャークは諦めている
「諦めろ、俺たちはここまでだ」
その時ヴァンピがモーグル達の方へ飛ぶ
「諦めるのは早いですよ、少し手荒ですが、超音波」
ヴァンピは超音波を出すスキルを使う。
超音波によってモーグル達は気絶する
「今のうちにこのモーグル達の上に乗りましょう」
シルフは父親を心配して
「父を皆さんで持ち上げられますか?」
ヴァンピは答える
「持ち上げずとも、モーグル達の軌道上に運べれば自然と運んでいただけるでしょう」
エンマがヴァンピに
「モーグル達が避けちまったらどうするんだよ?」
ヴァンピは答える
「問題ありません、私に任せてください。さあ、急いで」
猿楽達は急いでシルフの父親を動かす。
動かし終えたところで、モーグル達が意識を取り戻す。
ヴァンピはみんなに向かって
「皆さん、モーグルは私がコントロールします。飛び乗ってください」
ヴァンピは意識を取り戻したモーグルの方を向く。
コウモリの目が赤く光る。
ヴァンピは心の中で
「王の威光」
モーグル達の目はコウモリと同じように赤くなる。
ヴァンピはモーグル達に命じる
「我々を外まで運びなさい」
モーグル達は動き出す。
イルカが海を跳ねながら泳ぐように、モーグル達は地面を跳ねるように潜っては出てを繰り返しながら進む。
猿楽達は進んでくるモーグルに飛び乗る。
「うわー!!すげぇ!!!」
猿楽は楽しそうにしている。
シルフの父親も、潜ったモーグル達が地中から持ち上げ運んでいく。
崩れていくダンジョンをモーグル達に乗りながら突き進んでいく。
ヴァンピは猫と話す。
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「珍しいにゃ、ヴァンピがその力を使うにゃんて」
ヴァンピは答える
「使わなければ、助けることができませんでした」
猫は笑いながら
「あの力は使いたくなかったんじゃなかったのかにゃ?我の為か?」
ヴァンピは答える
「陛下の為ではありますが、猿楽のこの先を、見てみたいのです」
猫は笑う
「にゃっはっはっは!ヴァンピが嫌う力を使わせる人間、猿楽。我も直接見に行こうかにゃ?」
ヴァンピは答える
「陛下の赴くままに」
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猿楽達の正面に外の明かりが見えた
「みんな!外だぞ!!」
エンマは喜ぶ
「やっと外に出れる〜」
シルフはそんなエンマに
「なんだか久しぶりですね」
モーグルの群れは勢いよく外に飛び出す。
外に出ると、モーグル達の目は戻り、猿楽達を置いてどこかへ行ってしまう。
その場に倒れ込むシャークとフック。
エンマと星助も座り込む。
シルフとJr.は父親に寄りかかるように座り込む。
猿楽はどこかへ行ってしまうモーグルの群れを見送っている。
コウモリは猿楽を見て
「おや…?」
猿楽のそばにモーグルが一匹いる。
「ありがとうなー!!」
モーグルの群れに感謝の言葉を叫ぶ猿楽に、残っていたモーグルが
「モグッ!!」
猿楽は気づいて
「お、お前!一緒に行かなくていいのか!?」
モーグルは猿楽の足に擦り寄りながら
「モグ〜」
コウモリが猿楽に
「そのモーグルはあなたの事が気に入ったみたいですね」
猿楽はモーグルを撫でながら答える
「こいつ俺をここまで乗せてくれた奴なんだ!楽しくっていっぱい話しかけちゃって」
モーグルも猿楽を乗せていた時のことを思い出してるかの様に楽しそうに
「モグッ、モグモグ!」
猿楽はモーグルに共感するように
「な!楽しかったな!!」
コウモリは猿楽に
「移動中も彼と会話を?」
猿楽は笑顔で答える
「うん!なんか最初は反応無かったんだけど、いっぱい話しかけてたら、こいつもわかってくれたみたいで!」
コウモリは驚きつつも冷静に答える
「そうですか、これからは彼も一緒に?」
猿楽は笑顔でモーグルに
「俺たちと一緒に来るか?」
モーグルは元気に答える
「モグーッ!!」
猿楽は嬉しそうに
「よーし!!じゃあ早速みんなに紹介しに行こう!!」
猿楽はモーグルを抱っこしてみんなのところに向かう。
コウモリは心の中で
「王の威光は効いていたはず…それを会話で解いたというのか?猿楽…あなたは一体何者なんです?」
猿楽はみんなのところに行き、モーグルを掲げて
「みんな!!新しい家族のモグモグです!!」
エンマはびっくりして
「はぁ!?」
シャークもツッコむ
「いつの間に仲良くなったんだよ!!」
フックは冷静に
「ここまでの道中、楽しそうにお喋りしてましたよ」
シルフは少し笑いながら
「さすがマスター、仲良くなるのが早いですね」
Jr.と星助は嬉しそうに
「新しい兄弟だ!わーい!!」
「ボクよりお兄ちゃんかな、それとも弟かな?」
モーグルはみんなに挨拶する様に
「モグモーグ!!」
エンマは猿楽に
「家族も増えたんだ、テント張って休もうぜ」
猿楽は笑顔で
「うん!そうしよう!!みんなは休んでて!!」
シャークはそんな猿楽の様子を見て
「なんで猿楽はあんなに元気なんだ?」
フックは答える
「よく見てください、無理してますよ」
シルフも
「私を庇って受けた傷も残ってます」
エンマはみんなに
「自分のできる事に全力なんだよ、戦いには参加できないからな…今が頑張る時だって思ってるんだよ」
シャークは起き上がり
「なんだよ、じゃあ寝てられねーな」
フックも立ち上がり
「負けてられませんね」
シルフとエンマも立ち上がり
「マスター!お手伝いします!」
「焚き火とかはおいらがやるから、猿楽は手出すなよ!」
猿楽はみんなを心配して
「いいのに!休んでて!」
シャークが猿楽に
「これはどうしたらいいんだ?」
フックが猿楽の肩にとまり
「家族は力を合わせるものだと聞きましたよ」
猿楽は笑顔になり
「あー!シャーク!そうじゃない!」
シャークの方に走る猿楽を飛んで見送ったフックはコウモリのところに行き
「ヴァンピ、話があります」
コウモリは答える
「ええ、陛下にもちゃんと聞こえてますよ」
みんなボロボロではあるが、楽しそうにテントの準備をしている。
少し離れたところでフックはヴァンピと猫に話を始める。