表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
招かれざる獣たち~彼らとの出会いが少年の運命を変える。獣耳の少女と護り手たちの物語~  作者: 都鳥
第六章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/135

6-9 新しいダンジョンに入る

 新しいダンジョンでは、なかなか奥の階層にまで進めずにいるのだそうだ。


 上位の冒険者が奥に進んでしまうと、手前の守りが薄くなる。全体的な守りの厚さを保とうとすれば、当然人数が必要になってくる。だから無理に最前線まで行かなくても、充分に調査の助けになるのだと言われた。


 多分ジャウマさんとヴィーさん二人だけなら、最前線でも足りるどころか余るほどに活躍できるだろう。

「まあ、ラウルもいるからな。無理なく様子をみて進もう」

 ジャウマさんは、僕の顔を見ながらそう言った。


 それなのに今、僕らは最初に思っていたよりも下の階層に来ている。ここまでの階層の魔獣が想定よりも少なかったからだ。


「なかなかに優秀なんじゃねえか?」

 ヴィーさんが偉そうに言うのは、このダンジョンに調査に入っている冒険者たちのことだ。

 この階層でも(ほとん)ど魔獣に出会うこともなく、僕らはさらに下の階層に降りた。


 * * *


 ふと、二人の雰囲気が変わっていることに気が付いた。ジャウマさんはともかく、ヴィーさんまでもが真剣な表情になっている。

「あ、あの…… どうかしたんですか?」


「あ、いや。音が聞こえてな」

「音……? ですか?」

「ああ、この先で誰かが戦っているようだ。しかも――」


 ジャウマさんはそこで言葉を止めた。多分、あまり良くない雰囲気なのだろう。


「助けにい……」

 咄嗟(とっさ)に口から出かかった言葉を飲み込んだ。僕らに他の冒険者を救う義務はない。先日言われたばかりだ。


 口籠(くちごも)った僕の顔を見て、ジャウマさんはフッと鼻で笑った。

「そんな顔をするな。とりあえず様子を見にいこう」

「まあ、ラウルだけを行かせるわけにはいかねえしなあ」

 ヴィーさんが、ニヤニヤ笑いをしながら言った。



 今までよりも早足で、でも周りを警戒しながら進む。

「誰かこっちにやってくる」

 先頭を進むヴィーさんが、小声で僕らに告げた。


 冒険者らしき一行が、バタバタと何かから逃げるように走ってくる。先頭を走ってくる人に見覚えがあった。この町についた日にギルドで会ったブラドさんだ。

 一行は僕らの前で足を止めた。ブラドさんの他に、やっぱりあの日に見かけた彼らの仲間らしい冒険者が二人。もう一人は初めて見る顔だ。装備からすると、彼らより低ランクの冒険者だろう。真っ青な顔をして震えていた。


「どうした? 何があった?」

 ジャウマさんが声をかけると、ブラドさんはその両腕に(すが)りつくようにして言った。

「ジャウマ! 頼む、カルロを助けてくれ!」

「カルロを? あいつを置いてきたのか?」

「いいや、違う。見た事のないでかい魔獣が現れて、あいつが俺たちを先に逃がしてくれた。あいつはまだ戦っている!」


「行こう」

 それだけ言って、ジャウマさんは僕らを置いて、走り出した。


「へえへえ。リーダーの決定なら仕方ないよな。なあ、ラウル」

 ヴィーさんは僕にむけて、ちょっと可笑(おか)しそうに言う。でも嫌そうではない。むしろちょっとほっとしているようにも見えた。



 ダンジョンの奥へ向かって、先を走るジャウマさんの後を追いかける。

「なんだか変な臭いが……」

 変な臭い、といったけれど、僕はこの臭いの正体を知っている。これは、血の臭いだ。

 僕の声を聞いて、ジャウマさんの足がさらに早まる。

「お前のポーションが頼みだぞ」

 ヴィーさんがポンと僕の肩を叩いた。


 薬草を採集するだけでなく、自分で調合をするようになって、僕のマジックバッグには常に多数のポーションが入っている。

 でも人間ではない彼らは、傷付いても軽い傷であれば自然に塞がって直ってしまう。それより深い傷は、アリアちゃんやセリオンさんの回復魔法で治していた。

 でも今はその二人が居ないから、このパーティーに回復魔法はない。僕のポーションで治せる程度の怪我ならいいんだけど……

 不安と緊張で、バッグの持ち手をぎゅっと握りしめた。


 * * *


 さほど広くなかった道は、進む毎に広さを増し、天井も高くなっていく。道の先に続いた広い部屋のような空間に足を踏み入れると、その中央には大きな岩があった。


 その岩が、赤い目でギロリとこちらを(にら)みつける。

 いや、これは岩じゃない。魔獣だ。


「ロックドラゴン……?」

 魔物図鑑で見たことがある。一見すると、岩と見紛(みまご)うような鱗を持つ竜種の魔獣だ。見た目の通り体が岩のように固く、生半可な武器ではダメージを与えることもできない。

 でも図鑑で見たやつはこんなに大きかっただろうか?


「ああ、こいつはロックドラゴンの上位種で、ギガントロックドラゴンだ。ダンジョンの奥にしかいねえからな。図鑑には載っていない」


 そのギガントロックドラゴンをよく見ると、前足に何かが握られている。

「カルロ!」

 ジャウマさんが名を呼ぶと、握られたままでこちらを向く。まだ生きている!


 ドラゴンは僕らに向けて、事も有ろうにカルロさんを投げつけてきた。

「あっ!」

 僕が声を上げる前に、もうジャウマさんが飛び出している。カルロさんの体が地面に叩きつけられる寸前に、体ごとがっしりと受け止めた。


「ありゃあ、ジャウマでなきゃ受け止められねえよなぁ」

 ヴィーさんが揶揄(からか)うような口ぶりで言った。


「カルロ、大丈夫か?」

「あ、兄貴…… すまない」

 すぐさまヴィーさんが二人の前に出て、クロスボウでドラゴンの顔面を目掛けて矢を放っている。ヴィーさんがドラゴンの注意を引き付けている間に、ジャウマさんがカルロさんに肩を貸して僕のもとに連れてきた。


「ラウル、こいつを頼めるか?」

「はい、もちろんです!」

 僕の返事を聞くと、ジャウマさんは大剣を手にしてドラゴンに向かっていった。

お読みくださりありがとうございます~(*´▽`)


実は今回一番悩んだのが敵の魔獣でした(笑)

ミラージュドラゴンとか、色々考えてたんですけど、ジャウマのスタイルが生かせる敵がいいなと思いまして(笑)


次回は苦手な戦闘シーンかなあ? がんばりますーー


次回更新は7月26日(水)昼前予定です。

どうぞよろしくお願いいたします♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ