表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
招かれざる獣たち~彼らとの出会いが少年の運命を変える。獣耳の少女と護り手たちの物語~  作者: 都鳥
第六章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/135

6-5 結界魔法の訓練

 戦うことのできない僕が、戦うジャウマさんたちの近くにいられるのは、結界魔法があるからだ。

 と言っても、そんなに大きい結界を張ることはできない。せいぜい僕とアリアちゃんを守れる程度だ。

 僕なりに、もっと大きい結界魔法を張る練習をやってみたけれど、結果は(ほとん)ど変わらなかった。代わりに以前よりも早く、結界を張ったり消したりができるようになった。


 これから僕がするのは、その結界魔法の扱いの訓練らしい。たしかにまだ若狼でさほど体が大きくないクーだったら、僕の結界魔法に入れることができる。


 牙猪(ファングボア)と戦うクーを、僕が結界魔法でサポートする。クーが前にでれば、猪の牙攻撃や体当たりに合わせて結界を張り、引けば自分と共に結界で守る。

 弱った敵をクーが組み伏せたのを見計らって、僕がショートソードで(とど)めを刺した。


「でもこれじゃあ、いつまでたっても僕自身は強くなれないですよね」

 思わず、小さなため息を()く。僕の言葉を聞いて、ヴィーさんとジャウマさんは、きょとんとしたような顔をした。


「俺らはお前に強くなってほしいなんて、言ったことはないぞ。まあ、確かにお前が強くなりたがっていることは知っているけどな」

「そうだ。俺たちがお前に願っているのは、アリアを守ることだ。これはお前でないとダメなんだ」


「な、なんで……ですか? ジャウマさんや、ヴィーさんの方が、僕なんかよりずっとずっと強いじゃないですか…… それが、なんで僕なんですか?」

「アリアがそう望んでいるからだ」

 ジャウマさんは僕をじっと見ながら、そう言った。


 アリアちゃんが…… 僕を……?


「クゥ!」

 クーに呼ばれて前を見ると、次の牙猪(ファングボア)が僕らを(にら)みつけている。考えを一度振り払って、クーの傍らに立つ。いつでも結界が張れるよう、構えなおした。



 * * *


 さすが『冒険者の町』だ。夕食の為に冒険者たちが集まる店を選んで入ると、その広さと(にぎ)やかさに圧倒された。いままで立ち寄ったどの店よりも賑やかかもしれない。


 店内は吹き抜けの二階建てになっていて、物珍しさに上ばかり見上げていた僕の為に、ジャウマさんが二階席を選んでくれた。


 吹き抜けに面した席からは、階下の様子がよく見える。

「広い店ですねえ」

 子供っぽいかとも思うけれど、ついつい一階席を見回してしまう。

 どの席の冒険者たちも、互いの働きを称えあい自身の功を誇りながら、和気あいあいと盛り上がっている。


 あの席の冒険者たちは、大盛りになった串焼き肉の皿を囲んでいる。別のテーブルでは、皆で大きな骨付き肉を手にしてかぶり付いている。

 その向こうのテーブルの上の、丸のままの鳥が載った大きな皿に目が留まった。

 ヤマキジの丸焼きなら何度か見たことがあるけど、あれはもっと大きい。何の鳥だろうか? ヤマキジよりふた回りも大きいだけじゃない。腹には何かの草が詰め込まれているみたいだ。丸焼きの詰め物に野菜が入っているならわかる。でも取り分けている様子を見ると、あの草は食べるものではないようだ。香り付け……にしては、量が多い。


「あれ…… なんの鳥だろう?」

「ハハッ。気になるなら頼んでみりゃいいだろう?」

 つい声に出してしまった僕に、ヴィーさんは笑って言うと、給仕を呼んだ。


 いつものように、ヴィーさんとジャウマさんが適当に色々と頼んでくれる。僕の分の飲み物には酒精(アルコール)のないものを、ちゃんと選んでくれた。


「おつかれさーーん!」

 ヴィーさんが音頭をとる声に合わせて、ジョッキを掲げる。

 僕らがまず一口飲むのを待っていたかのように、二人がかりで運ばれた大きな皿がテーブルに載せられた。

 そこには羽を(むし)られきつね色に焼かれた大きな鳥がどっしりと置かれている。

 それだけじゃない。皿の横にはちょこんと添えられた2つの首が。

「え、ええ? この首……鳥と、ヘビ??」

「いや、違うぞラウル。こっちのヘビみたいのは尻尾だ」

 僕を揶揄(からか)うわけでもなく、真面目な顔でジャウマさんが言う。

 蛇の尾をもつ鳥の魔獣、図鑑で見たことがある。これは……


「コ、コカトリスですか?!」

「ああ、それの幼鳥だな」

 ジャウマさんが丸焼きの腹を開いて見せる。さっき階下に見たのと同じように、そこには大量の草が詰め込まれていた。


「これ、毒消し草だ」

「ああ、コカトリスでも幼鳥のうちは毒が弱い。喉の下にある毒腺は破かないように取り除いてあるが、念のためこうして毒消し草を詰めて焼くんだ」

「確かに、こいつは他の町じゃなかなか食えねぇよな」

 ヴィーさんは嬉しそうに言って手を伸ばすと、もも肉を掴んで胴体から引き剥がした。


 ヴィーさんによると、ダンジョンの浅いエリアに、コカトリスの幼鳥が生息しているのと、さらに別のダンジョンで毒消し草の群生エリアがあるのだそうだ。

「こ、これ。けっこう贅沢(ぜいたく)なんじゃないですか?」


 アリアちゃんの為にガッツリ稼ぐ、なんて話していたくせに、今日は僕の特訓に殆どの時間を費やしてしまったので、低ランクの魔獣を数頭狩ることができた程度だった。

 だから贅沢はできないかと思っていたのに、二人は宿代を抜いた今日の稼ぎの残りを全部この夕飯につぎ込むつもりらしい。


「まあ、明日の分はまた明日稼げばいいさ」

「だよな!」

 二人はそんなことを言い合って笑う。

 まあ、確かにすでに頼んでしまった物を返すことはできない。それなら二人のいう通り、明日はもっと稼げるように頑張らないと。

お読みくださりありがとうございます~(*´▽`)


昨日は七夕だったので、突発で七夕閑話を公開しております。

もしもな話ですが、お楽しみいただけていたら嬉しいです♪


次回更新は7月10日(月)昼前予定です。

まだ書けていませんが頑張ります(笑)


どうぞよろしくお願いいたします~~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ