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招かれざる獣たち~彼らとの出会いが少年の運命を変える。獣耳の少女と護り手たちの物語~  作者: 都鳥
第五章

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5-12 城へ

「この依頼をどうするか、セリオンが決めるといい」

 今まで黙って聞いていたジャウマさんが、ようやく口を開く。それを聞いたセリオンさんは、しばらくじっと考え込むようにしてから、顔を上げた。


「どんな経緯があったとしても、私が彼女の前から姿を消したのは事実だ。その所為(せい)で彼女が自責の念に駆られているのなら、それは私の責任でもある。それなら、彼女を解放してやりたい」

「わかった」


 セリオンさんの返事に(うなず)くと、ジャウマさんは自分のマジックバッグから地図を取り出して僕らの前に広げた。

 その地図の(かたわ)らに置かれた、夫人の持つ魔導具の絵を書いた紙が目に入る。何かを、思い出したような気がした。


「あ、あれ……」

「どうした? ラウル?」

「僕、なんだかこの魔導具に見覚えがある……気がするんです」

 その紙を手に取って、もう一度良く見てみる。


 口に出してみたけれど、自信はあまりない。

 生まれてから今までの僕の思い出のどこを探しても、あんな魔導具を見た記憶はない。でもその筈なのに、何故か僕はどこかであれを見たことがあるように感じている。

 あの夫人の前で実際の魔導具を見た時には、全くそんなことを思わなかったのに…… なんで今になってこんなことを思うんだろう?


「もしかしたら…… あの魔導具で死者の声を聞くことができるって言ってましたけど…… 違うんじゃないでしょうか」

「その通りだ。少なくともそんな魔導具は存在しない」

 僕の言葉に答えたのはジャウマさんだった。


「……ジャウマさんは、知っていたんですか?」

「ああ、以前そんな魔導具を探してたヤツから、話を聞いたことがあるからな」


 そうか……だから、あの時、ジャウマさんは夫人に『本当の目的』を尋ねたのか。


「おそらく、だが」

 ジャウマさんの話が続く。

「あの魔導具を持っていた聖職者というのは、死霊魔術師(ネクロマンサー)の力を持っていた神魔族(しんまぞく)で、あの魔導具はそいつが呼び出した死者の魂の声を聞かせる為の道具だろう。だからあの魔導具だけでは、死者の声を聞くことはできない」


「あーー、あいつか…… 確かにそんな話を聞いた気がするな」

 ジャウマさんの話を聞いて、ヴィーさんが何かを思い出したように(つぶや)いた。


「でも人間たちはそうとは思わず、あの魔導具を奪い取り、神魔族を王都から追い出したんだろう。そして王都から遠く離れた町に流れ着いた神魔族は、何らかの理由でそこで命を落とす。そして『聖職者の墓』が作られた」


「あ…… あのワームの……??」

「だろうな」

 そこまで語られて、ようやく僕にもわかった。


「まあ、それで当たりだろうなぁ。あのワームが死体を操る力を持っていたのは、死霊魔術師(ネクロマンサー)を食ったからだろう。だとすりゃあ、あの魔導具を動かせるようにするってのは、完全に無しだな。どっちにしろセリオンは生きているんだから、その選択肢はなかったわけだが」

 面倒くさそうに頭を()きながら、ヴィーさんが言った。



「なあ、ヴィジェス。この国の地図を出してくれないか?」

 広げられた地図をじっと見ていたセリオンさんに求められ、ヴィーさんが自分のマジックバッグに手を入れた。

 すぐには手を出さずに、うーんとか、えーととか、独りで言いながらしばらく手を突っ込んでごそごそと探っている。って、あの中にどれだけの物を詰め込んでいるんだろう?

 ヴィーさんがようやくバッグから出した手には、丸めた地図らしき紙が握られていた。


「この地図に描かれている遺跡の場所が、どうにも気になるんだ」

 広げられた地図の隣に、セリオンさんが夫人から貰った地図を並べる。それを皆に(なら)って(のぞ)き込んだ。

 ヴィーさんの持っていた地図には、神経質そうな綺麗な字で色々と書き込みがしてある。たまに汚い字が混ざっているのは、ヴィーさんの字だ。


「ジャウマが持ってきた地図によると、遺跡があるのはこの森のようなのだが……」

 セリオンさんが指を差す辺りに、森の記載がある。が、それだけだ。

「おそらく、この森の奥、だろうと思うが……」

「おかしいな。この森には遺跡なんかないぞ」

 セリオンさんの指先を見ながら、ヴィーさんも首を傾げる。


 セリオンさんは少しの間、二つの地図を見比べていた。手にしていたペンで、地図に丸を書きこんだ。

「彼女から貰った地図には距離のことが書いていない。おそらくだが、遺跡と言われたのは、ここのことだろう」

 セリオンさんが丸を付けたのは、先ほどの森からさらに遠方。森を抜け、国境を越えたところにある城の絵のところだ。ジャウマさんとヴィーさんは、それを黙って見ている。


「……なるほど、夫人は遺跡のことを詳しくは知らねえって言ってたもんな」

 先に口を開いたのはヴィーさんだった。

「どうしたんですか?」

「ありゃあ、同じ城の話だ」

「え? 同じ城、ですか?」

「ああ、夫人が話していた魔導具があるという遺跡も、セリオンが行方不明になった廃城も、同じ城のことだ」


「つまり、ジャウマさんたちと会った場所ってことですよね?」

「ああ。ここにあるのは、アリアの城だ」

 ジャウマさんが地図に書かれた丸を指差して言った。


「一度城へ帰ろう」

お読みくださりありがとうございます~(o´▽`o)


この話でこの章は終わりです。

次回は、閑話を入れるか他の何かを挟むか、それともこのまま次章に行くか。ちょっと悩み中です(;´Д`)


いずれにしても、次回更新は6月24日(土)昼前予定になります。

どうぞよろしくお願いいたします!!

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― 新着の感想 ―
[一言] アリアの城って、アリア、何者なんでしょう…なんかまた特別な種族のようですが…楽しみです。
2023/10/20 00:04 退会済み
管理
[良い点] セリオンさんの過去が明らかに… 悲恋というか、寿命が違うもの同士だから どのみち添い遂げられなかっただろうけども みんな何歳なの… 次の目的地でさらに謎が明かされそう (*⁰▿⁰*)ど…
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