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招かれざる獣たち~彼らとの出会いが少年の運命を変える。獣耳の少女と護り手たちの物語~  作者: 都鳥
第五章

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5-5 王都に入る

 徒歩での移動と野宿を繰り返し、何日もかけて、ようやく王都の門に辿り着いた。

「なんだかラウルと会った頃の旅に戻ったみたいだなぁ」

 愉快そうに笑いながらヴィーさんが言った。確かに、最近はあの頃と違って馬車も獣の足も使っているから、徒歩の旅はちょっと懐かしい気がした。


 流石は王都だ。今までの町に比べて、門も見たことのないくらいに大きい。当然、人の出入りも多いようで、門番が何人も居て、並行して手続きをしている。そのお陰で列に並ぶ旅人の人数のわりに、流れが早い。


 僕らの順番になり、ジャウマさん、ヴィーさん、僕のギルドカードを、通行許可証と一緒に門番に渡す。余計な追及を避ける為に、セリオンさんのギルドカードはこの国では()えて出していない。


 そのセリオンさんの方を見て、門番が訊いた。

「その奴隷は獣人か? ずいぶんと美形だな。もしかして、()()()売り物か?」

 ギルドカードを出さなかったことで、奴隷と思われるのはいつものことだ。でも売り物と言われたからか、ジャウマさんの目つきが少し厳しくなった。


「ああ、いや。違うのなら、すまない。アイツらと関係ないのなら、東地区には近寄らない方がいい」

「お、なんだ? 教えろよ。東地区になんか面白いものでもあるのか?」

 ヴィーさんのちょっとふざけた友好的な話し方で、一度強張った門番の表情が緩んだ。


「あそこには、眉目(みめ)のいい獣人なら高値で買ってくれる貴族様がいらっしゃるからな。お前たちの奴隷も顔を隠しているようだから、そこに連れていくのかと思ったんだ」


「いや、こいつは売り物じゃない。俺のだ」

 ジャウマさんがそう言うと、その門番は一瞬きょとんとしたような顔をしてから、ニヤリと意地が悪そうな笑いを見せた。

「ああ、そういうことか。そりゃあ、すまなかったな」

 すまなかったと口では言いながら、謝っている風ではない。


「それより、この宛先にある貴族を訪ねたいのだが、わかるか?」

 門番の様子を気にもせず、ジャウマさんは(ふところ)から招待状をだして門番に見せる。そこに書かれた名前を見ると、門番のニヤニヤ顔が途端に引き締まった。


「こ、これは失礼いたしました」

 急に態度を変えた門番に、ヴィーさんが首を傾げる。

「有名な家なのか?」

「あ、ああ…… 王都で一二を争う名家だ。中央区の一番大きな屋敷だから、すぐわかるだろう」

 門番はそう言って、門から真っすぐに王城に向かう道の先の方を指差した。



 門番たちから離れ、声も聞こえなくなった頃、

「……ジャウ、もう少し言い方を考えてくれ」

 セリオンさんが苛立(いらだ)ったような声で言い、それに続いてヴィーさんが吹き出して笑った。


「どうかしたか?」

「門番に妙な誤解をさせただろう?」

「誤解?」

 意味がわからないかのように、ジャウマさんは首を傾げる。その隣でヴィーさんがくっくっくっと(こら)えずに笑っている。


「どうかしたんですか?」

 僕が尋ねると、ヴィーさんは笑いながら僕に答えた。

「くくっ。だってさ、ジャウが『俺の』って言うもんだからさ。ぷぷぷっ」


 それって、さっきセリオンさんを売り物じゃないって言った時のことだよな。

「セリオンは美形だからなぁ。何がなくても、そういう誤解はされやすよな」

 ヴィーさんは相変わらず笑うばかりで、肝心の説明をしてくれない。


「誤解……?」

「私が、ジャウマの愛人だと思われたんだ」

「へっ!?」

 愛人って!? だって男同士なのに?

 驚いてジャウマさんとセリオンさんの顔を交互に見る。


「まあ、もうアイツらに会うこともねえし、勘違いさせときゃいいじゃねえか。忘れろよ」

 セリオンさんの背中をポンポンと軽く(はた)きながら、ヴィーさんが言った。


「そういえば、アリア。ここでは何かを感じるか?」

 まだニヤニヤとしているヴィーさんと、不機嫌に黙り込んでいるセリオンさんを余所(よそ)にして、ジャウマさんがアリアちゃんに尋ねる。

「うん、『黒い魔獣』はここにいるよ」

 アリアちゃんが答えた。



「ひとまず先に、この貴族に話を聞いてこよう」

 そう言って、ジャウマさんが例の招待状を掲げて僕らに見せる。

「探し物って、なんだろうな? てか、なんで冒険者に頼むんだ?」

「町中で探すような物じゃないということだろう」

 ヴィーさんの疑問に、ローブを深くかぶったままのセリオンさんが答えた。


 僕ら一行……というか、ジャウマさんたちに指名があったということは、当然彼らの上級冒険者としての腕前を見込んでのことだろう。探す先にその腕前が必要になるような危険があるということだ。


「まあ、いつだかの月牙狼(ルナファング)の時みたいに、町中で戦うようなことになるんでなきゃあ、すぐに終わるとは思うがな」

「クゥ?」

 月牙狼(ルナファング)の名を出されたのがわかったのか、クーがヴィーさんの言葉に応えるように鼻で鳴いた。

お読みくださりありがとうございますm(_ _)m


次回更新は6月7日(水)昼前予定です。


現在、この章の後半を書いているのですが、思ったよりも膨らんでいまして11話構成になりそうです。


頑張って書いておりますので、どうぞよろしくお願いいたします~(*´▽`)

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