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エピローグ 悲しみの帰還

エピローグ


小さな子の叫び声が聞こえた。

間違いない。のぞみ君だ。

三郎さんの呼びかけに反応があった。


「のぞみだ! 俺に助けを求めている。何かあったんだ! 」

最悪の展開。

彼は逃亡犯に出会ってしまった。

急がなくては。奴がのぞみ君に手をかける前に。

あれ……

どうしたのだろう? 足が重い。

「緑子さん。こっちです。急いで! 」

前を行く三郎さんが振り返り大声で喚く。

分かっている。急がなければいけないことぐらい。私だって捜査官だ。

だが足が思うように動かない。

このまま三郎さんを行かせてはダメだ。

捜査官としてのプライドもある。


「先に行きますよ! 」

「待って! 」

体が思うように動かない。こんなことは初めてだ。

やはりそうか……

私は無意識に奴に近づくことを避けている。

夜祭の後に襲われてから奴を見ることを拒絶している。

おかしな話だ。追いかけている奴から逃げようとするなんて。

これでは一生捕まえられるはずがない。

何をやっているの緑子?

恐れてはダメ!

捜査官としてのプライドを持ちなさい!

気合いを入れ直す。

あああ!

大声で走り出す。


「緑子さんこっちです。静かに! 」

三郎さんに言われてしまった。恥ずかしい……

角を曲がる。

うわっ……

目の前に信じられないような光景が見えた。

「三郎さん待って! 」

「だって…… これは…… 」

絶句する。


奥まった道から大量の血だまりが見え隠れする。

明らかな地獄絵図。

これをぶちまけたであろう人物。

要するに被害者。その影が浮かび上がってきた。

ここからでは分かりづらいが体格や見た目から少年だと推定できる。

「のぞみ…… のぞみ! のぞみ! 」

「待って! 近づかないで! もう…… 手遅れ…… 」

「何を馬鹿な!  」

「今応援を呼ぶ。待つのよ三郎さん! 」


連絡を入れる。

「応援お願いします。ただいま旅館付近。人が倒れています。

すぐに現場に急行してください。

被害者はまだ十代の少年と思われます。

血が! 血が! 早く来て! うわあああ! 」


「どうした? 何があった? おーい! 」

「いえ、すみません。とにかく早く! ああ待って! 近づかないで! 三郎さーん! 」

そこで連絡は途絶えた。


「のぞみ! のぞみ! 目を開けるんだ! 俺だ! 俺! サブニーだ! 」

しかしいくら呼びかけても返ってくることは無かった。

うおおお!

血まみれの被害者を抱き締め絶叫する。


こうして事件は最悪の形で最期を迎えた。


三日後。

ようやく解放された三郎は一人寂しく悲しみの途に就く。

三郎の心の内は幾ばくであっただろうか?

夜遅く故郷の村に無事到着。

隠れるように家に戻る。

今回の事件は相当な衝撃があったため村長の判断で村人には口外せず封印することとなった。


ようやく芽生え始めた町への関心。

また閉鎖された村に逆戻りなのか?

村の存続、繁栄には若者たちの力が不可欠だ。

確かに今回の事件は衝撃的だった。

だが臆することは無い。

村のために村人のためにも新たな世界を切り拓く勇気が必要だ。


そう、希望を失ってはいけない。

まだこの村には希望がある。

いや希望がいると言った方がいいか。

この村から希望は失われていない。


そうだよね。サブニー?


『世界は100人でできている』 

                

                <完>



この物語はフィクションです。



後記


最期はちょっとわかりづらかったかなと思い補足。

この物語はもともと逃亡犯の苦悩を描くつもりだったんだけどなかなかうまく進まなくて仕方なくのぞみたちを登場させ長編に。

当初の設定を大幅に修正。

のぞみもサブニーも緑子さえも後から考えたわけで。

夜祭も村も当初は存在していなかった。

急にストーリーを変えたのでラストもまったく違ったものに。

結果分かりづらくなってしまったのかな。

変更後のラストはのぞみがそのままお亡くなりになる予定だったんだけど……

第一にどうもしっくりこない。

第二にいくらR-15でもちょっと後味が悪くないかなあと。まあ残酷ってことだけど。

第三に逃亡犯が少年をやることによって何か変な達成感。誤解を与えかねないから。

これらを考慮し結末を分かりづらくしたわけだけど伝わったかな?

まあミステリーでもないし意外な犯人を用意する必要もないだろう。


というわけで分からなかった人へ。

お兄ちゃん探偵のアイリス・マッキンに相談するか

文豪にでも聞けば分かるんじゃないかな。


と言うのは冗談で……

なろう特別


夜。

ふう……

大変なことになったな。

ああ帰りたくないな。

緑子さんにも振られるし。


事件から三日後ようやく自由の身となった。

まったく……

後悔してもしきれない。

俺がバカだった。


村に着いたのは夕暮れ。

帰って来たぞ!

出迎えを受ける。

村長の姿が見えた。

ああ最悪だ。

何て言い訳すればいいか。


「おい! 三郎! 」

「爺ちゃん…… 」

「まったく馬鹿者が! 」

何も返す言葉が無い。

「良いか! このことは村の者に口外するでない。いいな? 」

「ええっ? 」

「返事は? 」

「はい! 」

「よろしい。早く帰って寝ろ! 」

許された。

しかし……

このまま戻れるわけがない。


あーあ。

もう歩く力も残っていない。

本当に疲れた。

サブニー!

声が聞こえる。

サブニー!

元気な男の子の声。


「サブニーお帰り! 」

のぞみが抱き着いてきた。

「お前もう大丈夫なのか? 」

「うん。寝たら元気になった」

「そうか…… 」

「どうしたのサブニー? 」

「いやお前には謝らなくちゃな。

済まん。俺が待ち合わせに遅れたせいでこんなことに…… 」

「サブニー! 」 

「いいんだ俺なんか…… 」

「元気出してよサブニー! 」

まさかのぞみに励まされるなんて。普通逆だろ?

「そうだ。お姉さんが用があるってさ」

お姉さん? まさか!


「三郎さん。遅いじゃない。また心配かけて! 」

緑子が笑っている。

「お帰りなさい三郎さん」

「ただいま」

「サブニー行こう! 」

のぞみが強く引っ張る。

「ちょっと今いいところなんだから! 」

「ああ! サブニーが怒った! 」


こうして事件を引きずることなく再び山奥の村での退屈な毎日が続く。

村の今後は誰にも分からない。

しかし村には希望がある。

村は希望で満たされている。


そうだよねサブニー?

ああ…… 


なろう特別 <完>


これで完結。


予告

次回はファンタジーの予定

十一月の下旬。

お楽しみに!

『帰り道フレンズ』も興味があったらどうぞ。


最後に一言。

のぞみは十二歳としては幼過ぎたかな。


それではまた。

11/1 現在



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