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出会いエンド(前編)

最終章


辺りは真っ暗でここがどこかも分からない。

僕はどうしたらいい?

痛めた足を庇ってゆっくり歩く。

うん足音? 足音がする。

どんどん大きくなっていく。

間違いない。サブニーだ。

サブニー! 迎えに来てくれたんだ!

こっちに向かってくる影を捉えた。

サブニー! 僕だよ! のぞみだよ!

今までどこにいたの? 寂しかったよ。

我慢の限界。涙が溢れ出る。


はあはあ

はあはあ

凄い勢いで走ってくる。

まだ僕の存在に気づいていない?

あれ……

この人誰…… ?

似ているけどサブニーじゃない。

誰なんだろう?

サブニーとよく似ている。でも何となく違う。

サブニー?

呼びかけてみるがまったく反応しない。

聞こえないのかなあ?

ついには横を通り過ぎ行ってしまった。


サブニー!

急いでるのか振り返りもしない。

左に曲がりどんどん離れていく。

見えなくなる前に行動しなくちゃ。

サブニーでないとしても旅館の人かもしれない。

僕を探しに来てくれたに違いない。

今追い駆けなければこれからずっと一人ぼっちだ。

それは嫌だ。

一人でこの真っ暗闇を過ごすなんてできる訳がない。

急がなくちゃ!

でも…… もし違ったら?

怒られる。

どうしよう?

まあいいか。最後の一人だもんね。

目標の百人まであと一人。

その百番目の者を見逃す訳にはいかない。


おーい!

おーい!

待ってよ! 

「僕、迷子になっちゃったんだ。サブニーはどこ? 」

男の背中に呼びかける。

「うーん? 」

ようやく気付いたのか慌てて振り返る。

「何だガキか! へへへ…… ちょうどいい」

男は薄ら笑いを浮かべ近づいてきた。

良い人には見えないが目標の百番目に違いはない。


「あの…… 」

「どうしたこんな夜中に? 」

「僕ね…… 」

男は辺りを見回した。

「どうしたの? 」

「いや。俺を嵌めようとしている奴がいるんだ。どうやら今回は違うみたいだな」

「僕、道に迷っちゃって。旅館に帰りたいんだ」

「仕方がないな。俺が送り届けてやるか」

「着いて来い! 」

そう言うと歩き出した。

「待ってよ! 」

急いで男の後を追う。


「 僕さ…… 」

「心配するな! もうすぐ旅館だ。うん? お前足を痛めてるのか? 」

「ちょっと挫いちゃった。大したことないよ」

「しょうがない。無理するな。ここで休憩にしよう」

男はそう言うと袋小路に誘導する。

「お前の名前は? 」

「のぞみ」

「どこから来たんだ? 」 

「山から」

「ほう偶然だな。俺も今向かおうとしていたんだ」

「じゃあ一緒に…… 」

「悪いな。自由にさせてくれ。それによ。お前とはどうやっても登れない。ふふふ…… 」

不気味な笑い。何か変だ。大丈夫かなこのお兄ちゃん。


ようやく見つけたターゲット。

このチャンスを逃してなるものか。

慎重かつ迅速に。今度は確実に。

「ねえ。僕の話聞いてる? 」

「悪い悪い」

ナイフの感触を気づかれないように確かめる。

「僕ねぇ…… 」

準備万端。

後は恐怖に戦く顔を拝めばいい。

「サブニーが…… 」

「誰だそりゃ? 」 

「近所のお兄さん」

「そうかそうか…… 」

 

「正直に言うと俺はとっても悪い人間なんだ」

ガキは黙ってしまう。

そりゃそうだ。周りに甘やかされて育った田舎のガキでは俺みたいな人間に会うこともない。

どう切り抜けるよガキ? 

「そんなことないよ…… 」

何とか否定する。

まあ合格点だな。よくやった方だ。

「俺は悪い奴だから追われている」

「何をしたの? 」

興味本位なのか。ただ話を合わせただけなのか。

まあいい。上手くいってもやるのがほんの少し遅くなるだけだ。

大した違いはない。


「俺はな人を殺しちまった。どういうことか分かるか? 」

「ううん」

首を振る。

まあ、ガキには縁遠い世界。知らないまま逝っちまうほうがいいさ。

「本当かよ? 」

「うん。まだ子供だから分からない」

「お前の村は平和だったんだな」

「平和? そうかなあ…… 危険も一杯」

「分かった分かった。それでお前俺に何か言ってなかったか? 」

「僕旅の途中。サブニーが…… 」

「サブニーは分かった。続けろ! 」

機会を伺う。


「村長の許しを得て昨日ここにやって来たの。

今まで一度も村を離れたことが無かったんだ。

町には人はいない。妖怪や化け物、鬼が一杯。それにタヌキかキツネが化かすって聞かされていた。

でもここに来て全てでたらめだって分かった」

「おうおう。それはよかったな。よし…… 」

「町には人がたくさんいる」

「ああ嫌って程いやがる。特に今日みたいな祭りの晩にはな。祭りって言えばお前は行ったのか?」

「ううん。遅くなりそうだったし暗いのも嫌だから」

「それはもったいないことをしたな」

他愛もない話で安心させ機会を伺う。


「町には百人以上人がいるって自分の目で確かめたかったんだ。村長との約束でこの旅の目的」

「あと一人で目標の百人! 」

「うんうん。ならば…… もういいだろ…… 」

「お兄ちゃんがその百番目なんだよ」

何を言ってるんだこいつ? 動揺させて逃げるつもりか。俺はそこまで馬鹿じゃない。

「俺が何だって? 」

「だからお兄ちゃんが目標の百番目の人間だよ」

「本当なのか? 」

「うん。さっきからそう言ってるよ」

ガキが一丁前に格好をつけて付け加える。

「おめでとうございます。あなたが何と出会った百番目の人物です」

「俺が…… 百番目か…… ? 」

「驚いた? 」

「ならばお前は百人全員に会ったってことになるな」

「うん。今日一日で百人達成。大変だったんだよ」

「そうかお前は会えたのか。俺も世界は百人で出来ているって医者のホラ話を真に受けて考え込んだけど。

お前はそれを実際に体験したんだな。凄いぜお前! ただのガキじゃないな」

まだガキだと言うのにこの行動力。素直に感心するしかない。

「俺も確かめたかったな…… 」

「うん? 何を言ってるの。今からでもやればいいんだよ」

「ふん。言ってくれるぜ。俺には一生無理」

「どうして? 」

「それはな…… いや何でもない」

これ以上余計なやり取りをすれば情が湧く。

また失敗するわけにはいかない。

もう決めたんだ。話しかけられた時点でかわいそうだが……

おっと。また余計な感情。今は非情にならなければならない。

でももったいない。

ようやくできた理解者。自らの手で葬り去らねばならないのか?

唯一俺を救える者に出会った。

だが遅かった。

もっと前に出会えていたら。

罪を犯す前に。


                   <続>

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