特別篇 夜祭 繰り返される惨劇
特別篇。
注意: 特別篇は本編とは直接関わりがありません。
ホラー。残酷描写あり。苦手な方はお控えください。
六月十九日 今年もこの季節がこの日がやって参りました。
特別篇。
夜祭は第一部を終え第二部に突入。
舞台では地元の少女による伝統の舞が厳かに執り行われていた。
舞台前には大勢の見物客が集まって足の踏み場もない。
盛況は何よりだが皆儀式であると言うことを忘れ大騒ぎ。
伝統も格式も有ったものではない。
混みに混み合った人々。
その熱気が人々を狂わせ次第にコントロールを失う。
忠実に再現された遥か昔から伝わる演舞。
一人で舞う少女に襲い掛かる男たち。
舞台袖から一人また一人と姿を見せ観客を驚かす。
五人六人と増えて行き最終的には十二人。
手にはそれぞれ剣や弓、斧、ノコギリ、石などの武器を持ち構える。
まず弓が飛んでくる。
わあああ!
もちろん舞を止めることは無い。
舞に合わせて避ける。
リズミカルに軽やかに次々避けていく。
今度は石を使う。
当たればかすり傷では済まない大きく硬い石。
数人が一斉に投げる。
「危ない! 」
つい叫びたくなる。
舞うスピードを上げ難なくかわす。
簡単にかわしているように見えるがもちろんそう簡単ではない。
投げる者との息がぴったり合ってなせる技。
相当練習したと見える。
一歩間違えば大惨事だ。
最後は残った者がそれぞれの武器を手に持ち襲い掛かる。
「来い! 」
少女の気合いが見る者を圧倒する。
少女はゆっくりではあるがその勢いを殺すこと無く華麗に舞い続ける。
「おりゃああ! 」
一気に襲い掛かる男たちから舞台中を逃げ回る。
そのスピード。乱れることのない舞。
常人には追いつくはずもなく次第に男たちは疲れ果て、その場で許しを請う。
歓声が上がる。
少女は光り輝き一瞬にして宙を舞う。
そう少女は天女の生まれ変わりだったのだ。
男たちはひれ伏しその神々しさから涙を流す。
たっぷりと余韻を残し舞を終える。
舞台はついにクライマックス。
最高潮。
最後は天女が天に昇るところで幕が閉じられる。
だがしかし……
舞台にはアクシデントが付き物。
熱気を帯びた観客が我を失い舞台上に侵入してくる。
こうなってはもう誰にも止めることができない。
「止めろ! 」
神にささげる神聖な舞を汚され怒りに震える者たち。
「まだ儀式は完成しておらん! 」
狂った観客。その熱気を浴び、一人二人と仲間が増えて行き最後には皆おかしくなってしまう。
その勢いで舞った巫女の少女に襲い掛かろうとする。
「早く逃げるんだ! 」
機転を利かせた仲間の男が逃がしてやる。
うおおお!
観客は迷うことなく少女の元へ。
地獄の追いかけっこが始まる。
「止めろ! 俺が相手になってやる! 」
いつも持ち歩いていた丸く削られた木の棒で対抗。
「止めろ! 止めろって! 止めてくれ! 」
無茶苦茶に振り回す。
一人二人三人と倒していく。
だがどうだろう?
客は集団で襲いかかっている。
これではひとたまりもない。
ついには木の棒を奪われた。
男は抵抗する術をなくし逃げる力も残っていない。
後は倒れ踏みつけられるだけだ。
哀れ。もう動かない。
「止めて! 」
仲間の少女の姿。舞台に落ちていたノコギリを持ちだし振り上げる。
「冷静になって! 皆どうしちゃったのかな? 」
だがもう止まらない。いくら訴えかけたところで奴らはもう人間ではないのだ。
恐ろしい化け物の集団でしかない。
うがあああ!
そんな信じられない。
「どうしちゃったのかな皆」
襲ってくる。
仕方なくノコギリを振り回す。
ぎゃあああ!
何体かはノコギリの餌食に。
残酷な光景。
しかし彼女ももう限界だ。
ノコギリを奪われ惨殺される。
「そんなあ…… 嘘だ…… 」
もはや人間ではない。
これで邪魔者はいなくなった。
少女に食らいつく。
こっちよ! 急いで!
家族のように仲のいい親友に助け出される。
仕掛けていた動物用の罠を用いて化け物を退治。
しかしこれもやはり化け物の数が多く逃れられてしまう。
まったくの無駄という訳ではないが火に油を注ぐことに。
ただ怒らせてしまっただけだ。
化け物共は屍の上を超えて向かってくる。
「しつこい! 」
小屋が見えた。
先月まで一人で住んでいた若い男が突如失踪し今は誰も住んでいない。
「しめた! ここに隠れましょう。ほほほ…… 」
親友の提案を受け入れ小屋に逃げ込む。
「大丈夫。鍵をかければ奴らも中には入ってこない」
「そうね。行きましょう」
少女たちはなんとか小屋に駆け込む。
もちろん化け物共は承知の上だ。
うおおお!
走り出した。
「待ちな! 」
最後の砦。
五人組の最後の者が参戦する。
「ずいぶんじゃないか! ここは我が土地。お前らに一歩だって先に行かさせはしないよ! 」
「喰らいな! 」
銀の弾丸を発射。
化け物は一瞬にして粉々。
破壊力抜群。
「かかってきな! 」
あと少し。
あと少しで明日だ。
それまで何としても守り抜く。
うぎゃああ!
発射!
化け物は勢いを失い。辺りを走り回る。
ふうふう
「どれだけいるんだよ! 」
化け物は十匹以上。
弾は残り三つ。
「ああ、やっちまった。囲まれた。もうダメか! 」
ダン
一発ずつ正確に胸を貫く。
「くたばれ! 化け物! 」
最後の一発を発射。
見事胸を貫く。
私もこれまで。
諦めるしかない。
「優しくしろよ」
うぎゃああ!
「言っても無駄か。ははは! 」
抵抗虚しく化け物の餌食となってしまう。
がりがり
ばりばり
骨まで砕かれ跡形もなく食い尽くされる。
「きゃああ! 」
小屋からその様子を見守っていた二人に残された未来は絶望しかなかった。
「私たちは親友でしょう。最後まで戦いましょう」
ドンドン!
ドンドン!
化け物が臭いを嗅ぎつけてきた。
どうしよう。このままここで堪えられる?
無理だ。
時刻は後三十分で十二時。
三十分持ちこたえられるか?
化け物が強引に中へ侵入しようとするがバラバラなため頑丈な小屋を突破できない。
「大丈夫。奴らは入ってこれない。私たちの勝利よ! 」
「甘いは! 最後まで気を抜かないで! 」
二人で抱き合って時間が過ぎるのを待つ。
明日さえ迎えれれば奴らも元に戻る。
残り五分。
「もう大丈夫。私たち本当に勝ったのよ! 」
「甘いですわ。これだから甘いって言うんです」
「何を言っているの? おかしいわよ。」
「いいえ。おかしいのは…… 」
親友の態度が豹変した。
「ふふふ…… このまま明日を迎えられてしまっては困るんですよ。おーほっほっほ! 」
「あんたまさか…… 」
えっ?
胸に痛みが走った。
「何を…… 」
「あらあら痛かったですか? どうしたんでしょう? 」
親友を突き飛ばす。
「まったくしらじらしいわね。 ごっほ…… 」
胸にナイフが刺さり服がまっ赤。
「大丈夫ですか? ほほほ…… 」
「あんたね! 」
「あら。私が楽にして差し上げます。おーほっほほ! 」
意識が薄れる。
「あなたがいけないんですよ。ねえ…… 」
「まったく! またあんたなのね…… 」
「おやすみなさい。ふふふ…… 」
再び繰り返された惨劇。
悲劇の連鎖は果たしていつ止まるのか?
特別篇 <完>
また来年。
この物語(特別篇)はフィクションです。
またはオマージュです。
注 日付は初投稿日のものです。




