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見てはダメだ!

記憶を辿る。

確かあの時……


倉庫。

運よく使用されていない倉庫を発見。放置されているがなぜか電気は点く。

理由は分からないが有難く住まわせてもらっている。

ここの者が現れるまでお世話になるとするか。

割れた窓ガラスから差し込んだ月明りが天井にかかる蜘蛛の巣を幻想的に浮き上がらせる。

もちろん電気だってある。しかし点けてしまえば外からも分かってしまうため夜はこの月明りを頼りに過ごす。


ようやくたどり着いた安住の地。

だがそこは間もなく奴らの手によって破壊される。

逃れることのできない危険地帯へと変化する。


もうまともに外へも出歩けない。

家にも居場所が無い。

俺はもう人の姿を気にせず歩ける夜を除いて外出することは無くなった。

夜はもともと人も少ない。気にする者もいない。

仮に大勢でいようともともと見づらい。

人がぼやけてくっ付くようなことは無い。

快適だ。何て心地いいんだろう。

もう下を向かなくても生きていける。

でもやっぱり病気のことが気になる。


そうして半年が過ぎた。

いくら人との交流が無いとはいえゼロではない。

夜になれば不良のたまり場になることもしばしば。

時代遅れの団体が俺の居場所を奪う。

半月に一回だったものが一週間に一回。二回となり、三日に一回にまでなった。

その時は奴らが完全にいなくなるまで倉庫の端に隠れている。

見つかったら最後。痕跡を消し震えて隠れる。

いきなり入ってくるから逃げるに逃げられない。何と言っても出口は一か所。

でかい音を立て入ってくる。

ずうずうしく占拠する。

そして大声で騒ぎ出す。お決まりのパターン。

もはや日常だ。

その数もどんどん増えて行き十人を超える時も。

耳を塞ぐ。

限界がある。

目を閉じる。

やはり限度がある。

自由な空間が奪われる。もう俺には居場所はないのか?

抑えていたものが爆発する。

ふざけるな!

もういい加減にしろ!

口を塞いで声にならない抗議をする。

もちろん届かない。だがいいのだ。気持ちの問題なのだから。


「おい! 誰かいるのか? 」

あれだけ騒ぎ大声で話していると言うのに察知したらしい。

まったく迷惑な。

「おいおい! こんなところにお客さんだぜ! 」

まずい。見つかってしまった。どうする?

ハイテンションで騒ぎまくる男たち。

「何? 何? 見られた? 」

悲鳴を上げる女が一人。

「まずいんじゃねいか? 」

「そうだな。おいこっちに連れてこい! 」

暇つぶしにいたぶろうとする。

「すいませんすいません」

「おいおい。何だこいつ。謝ってるぞ」

「じゃあ見ちゃったんじゃない。うちらのこと」

見てはいない。だが何をしているかは想像がつく。

「きゃあ! 」

騒がしい女が男に抱き着く。怖がっている振りをして男に媚びを売る。

男はここのリーダーだろうか。ひと際態度がデカい。

「おい連れてこい! 」

「ヘイ! 」

「お呼びだぞ。へへへ…… 」

俺は必死に否定する。

「ほら行け! いいから早くしろ! 見たんだろオラ! 」

「いえ」

「嘘を吐け! 知ってるな? 」

「本当に何も…… 」

「おい! 下を向くな! こっちを見ろ! 」

無理矢理引きずられていき晒される。

たまったものではない。いい笑い物だ。

奴らは暇つぶしの一環だろうがこっちは関わりたくない。


「すいませんすいません」

どうにか逃れようとするも上手く行くはずもない。

「謝るな! こっちを見ろ! 」

「いえ無理なんです」

「無理だと? 」

「見てはいけないんです。そう言われているんです」

「ははは! 何を言ってやがる。どうかしてるのか? 」

「吸っちゃったんじゃんない。ラリってるみたい」

女はそう言うと男の元へ。

「怖い…… 」 

おいおい。こっちの方がよっぽど怖いわ。

「おい! お前こっちを見ろ! 」

「だからできないんです。お願いします」

懇願しようと暇つぶしの彼らには通用しない。

楽しませろとのこと。


「よしこっちを見ろ! 」

「無理です! 」

「おい! 手伝ってやれ! 」

仲間の大男に後ろを取られた。

「ほら前を向け! へへっへ! 」

「醜い面を拝ませろ。」

「目を瞑るな! 」

男たちには逆らえない。

「早くしろ! 目を開けるんだ! 」

徐々に怒り始めている。

限界のようだ。

「目を開けな! それだけでいいんだ。逆らうな! 」

仕方ない。覚悟を決めゆっくり目を開く。

声のみで判断していたが約十人の集団。

ええっと……

しまった数えてしまった!

「何だ弱っちいだけじゃん。つまんなねー」

「大して面白くない顔ね。どっちかって言うと特徴もないし普通かな」

女はつまらなそうにこちらを見る。

「俺の女をじろじろ見るな! 」

リーダーに視線を送る。

「ガン飛ばしてんじゃね! 」

まずい。横の男を見る。

笑ってしまった。まずいその隣。

まずい。まずい。これ以上はダメだ。

「おい! こっちを向け! 」

リーダーの声がする。

「できません! 」

「いいから早くしろ! 」

「すいません! 」

「早くつってんだろ! 」

仕方なくリーダーを見る。

その時恐れていたことが。症状が出てしまったのだ。

くっ付く。

奴らの境目が無くなりくっ付き始め一つの物体へ。

もうダメだ!

終わりだ!

うわああ!

止めてくれ! 嫌だ!

もうどうすることもできない。

諦めるしかない。

ついには襲ってきた!


                 <続>

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