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最悪の事態

一人の男が旅館を訪れる。

ドンドン

ドンドン

「はーい」

急いでいるのか必要以上に叩き続けるので仕方なく開けてやる。

はあはあ

はあはあ

息を切らした男が何かを喚いている。

「のぞみ…… すまん…… 遅くなって…… 」

「いらっしゃいませ。あの…… 」

「済まねい。俺は客だ」

「心得ています」

「実は先に連れが来たんだが」

「お連れ様ですね…… 」

「早くしてくれ! 心配なんだ。まだ小さくてよ! 」

「もしかしてサブニー。いえ失礼しました」

「そうだそのサブニーだ。なんだのぞみの奴迷わずに着いたんだな。良かった! 」

「私はここの若女将でございます」

「おおそうか。それでのぞみはどこにいる? 」

焦りと興奮が見られる。

「早くしろ! 」

自分が遅れてきたくせに……


ああ? まさか……

思い出した。一緒にこの男を探す約束をしたんだった。

どうしましょう…… すっかり忘れていた。

あの時お客様がお越しになられたのでつい……

まさか一人で勝手に出たなんてないわよね。ううん。そんなことあるはずない。

考え過ぎよ。もうお部屋で寝ているに違いない。

とりあえずこのサブニーなる者をお部屋までお通してと。


「こちらでございます」

だがもちろんあの男の子は見当たらない。

「ほほほ。どうしたのでしょうか? 」

「本当に来たのか? 」

「もちろんです。そうだお風呂に行ってるんだわ」

急いで大浴場へ。

しかし中には人の姿はない。

もう残るは外と言うことになる。

どうしましょう。これは私の完全なミス。あの子が大人しく待っていてくれる訳ないじゃない。

寂しいに決まっているのに。

「おい! どういうことなんだ? なぜ居ない? 」

「そのあの…… 」

「俺をからかっているのか? 」

「申し訳ございません」

観念するしかない。


ことの経緯を話す。

「何だと! 外に行ったかもしれないだと? 」

男は怒り出してしまった。

確かにこちら側に落ち度があるのは間違いない。

しかし問題はこの男。

あんな小さな子を放っておいて一人だけ遊びほうけてたわけだ。

大方夜祭に繰り出していたに違いない。

「当方としましてはお客様の行動まで分かりかねます」

「何? 勝手に行っちまったから知らねいってか? ふざけんな! 」

そんなリスクを知っていながら自分はこんな時間になるまで放っておいた。

私は止めた。

でもサブニーが心配だからと悩んでいた。

『サブニー』

『サブニー』

まったくこの男には呆れる。全て自分のせいじゃない。

待ち合わせに遅れたのもあの子を放って勝手に自由行動したのも誰だったのかしら?

「おい! 聞いてるのか? 」

「落ち着いてください。今皆を集めます。中で見たものはいないか確認してそれでもいないようでしたら探しに参りたいと思います」

「馬鹿野郎! 外に行ったに決まっているだろ!こんな時間にどこへ行くってんだ! 」

確かにそうだ。間違いない。

入れ違いだったんだ。

あの子がもう少し我慢してくれていたら。

この男がもっと早く到着していたら。

こんな事態にはならなかった。最悪だ。


とりあえず玄関まで走る。

「俺は探してくる。お前らは勝手にしろ! 」

そうは言っても…… こちらにも責任がある。探さない訳にも行かない。

人手はあるに越したことがない。

「あの…… 」

「まさか…… 」

男は固まった。

視線は一枚の紙切れに注がれる。

「お客様? 」

「これは? 」

「はい。これは昨日警察の方がお見えになり置いて行かれました。

どうやらこの辺りに凶悪犯が彷徨っているとかで…… 物騒ですね」

「おいおい! 冗談だろ! 」

男の顔から血の気が引いた。

「うおおおお! 待ってろよ! のぞみ! 」


無線機を取り出すべきか迷っている。

さっきから鳴っているが無視するしかない。

なぜならば感じるのだ。それが何なのかよく分からない。

変な感じがする。

視線を感じる。こちらを見つめている。

後ろから見られている。気持ち悪い。

まさか彼なのでは?

ゆっくり振り返るが誰も居ない。

見当たらない。

でも視線だけは感じる。

闇の中をじっとこちらを見る何者か。

私だって気付いているわ。

そうもうとっくに気付いている。

でもなかなか姿を現さない男。

相当警戒しているようだ。


もし私が普通の女の子だったらもうとっくに襲われているでしょう。

何が起きたのかも分からずにずたずたに引き裂かれて骸が転がることになる。

私は普通じゃない。

警察だ。

この地域に治安を守る唯一の女性捜査官。

だから訓練もしっかり受けている。

今異常を察知して歩き回っている。

一向に間合いを詰めようとしない相手。

恐ろしく慎重な犯人。

ただの変質者では有り得ない。

息を殺しじっとこっちを見ていると思うとぞっとする。


どうしよう……

待つべきか?

逃げ切るべきか。?

今だったら大声を出すなり全力で走り出せば諦めるに違いない。

しかしもったいない。

せっかくあちらから接触してきたのだからみすみす逃すなどあり得ない。

ここは覚悟を決めて直接対決。

さあいつでもいいわ。かかってきなさい!


                   <続>


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