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消えたのぞみ

用を済ませ若女将が戻ってくる。

十分も待たされてようやくだ。もう待ちくたびれた。

僕はまだ子供だから我慢ができない。寂しくて涙が溢れそうだ。

必至に堪えるが誤魔化しきれない。

下を向く。


「お待たせしました。さあ参りましょう」

若女将は寒く無いように上着を一枚着せてくれた。

手をつなぐ。

温かい手。もう大丈夫だ。寂しくない。

「おばさん…… 」

睨みつけられる。

「ああ、お姉さん。大女将さんは? 」

「今の時間ですともう寝てしまっています」

「なーんだ残念。あと二人なんだけどな…… 」

「それはもう明日にしましょう。今日はお兄さんを探すのが先決です」

それは確かにそうなんだけど……

二人で外に向かう。


その時だった。

一人の男が息を切らし入ってきた。

サブニー?

いや違う。おじさん?

サブニーだと思ったがどうやら違ったらしい。見た目が全然違う。

「すいません! 」

夜遅くに訪ねてきた男。空いているか確認を取る。

「一名様ご案内」

若女将は僕のことを放っておいて客対応を始める。

まったく困ったなあ。待ってられないよう。

この人もこの人だよ。こんな夜遅くにしかも一人。

空いているから問題ないがいかにも怪しい。

「おじさん」

「おお。これは坊や。若女将のお子さんですかな? 」

若女将は恥ずかしそうに否定する。

男が汗をぬぐう。

「実は夜祭を見に行ってたんですけどね…… 本当に人の多いこと。あれじゃ坊やじゃなくても迷います」

男は女将の後に着いていく。

すかさず話しかける。

「どうしたんだ坊や? 」

「あのー」

名前を聞き挨拶をかわす。

「いいよいいよ。私はね…… 」

男は行ってしまった。

これで99人目だ。

あと残り一人となった。


もう簡単だ。見つけるだけ。今夜中に何とかしたい。

若女将は僕との約束を忘れて客を案内する。

どうしよう?

どうする?

よしここは怖いけど覚悟。

若女将に断りを入れずに外へ。

闇の世界に足を踏み入れる。


はあはあ

はあはあ

「そっちはどうだった? 」

「今のところ該当する人物は見当たりません」

「そうか。だとすれば空振りだったかな」

タバコに火をつける。

ふう。

部下は未だに息を切らしている。

いくら私よりも上とはいえ十も違うわけではない。

まだ老け込む年でもない。

息が荒いのは呼吸の仕方に問題がある。

単純に運動不足なのだ。

部下に任せっきりで自分はふんぞり返っている。

デスクワークでは体が鈍ってしまう。

見てみよそのぶくぶくとした腹を。情けなくて仕方がない。

私のように毎日トレーニングをしなければどんどんだらしなくなっていくぞ。

本当にみっともない。それでも警察官の一員か?

逃亡犯逮捕は夢のまた夢。足手まといでしかない。

無理して連れてくるべきではなかったか?


「どうしました? 」 

「いや。運動はしてるのか? 」

「はっはは。全然。私たちは頭で勝負ですよ。現場で動き回るのは若いのがいますから」

「それではダメだ! 率先して若手の見本にならなくてはいかん」

お返しにとばかりにこちらを見る。

「何だ? 」

「そんなこと言って守れてないじゃないでですか」

「うん? 」

「禁煙ですよ。してるんでしょう? 」

うぐぐぐ……

痛いところを突いてきやがる。

私が禁煙していたのをつい話してしまったのがまずかった。

「お互い頑張りましょう」

「何をだ? 」

「それはもちろん逃亡犯を捕まえることですよ…… 」

「当然だろ」

ふうー

「まだ吸ってますね」

「仕方ないだろ疲れているんだ」

「言い訳はいいです」

「まったく…… 」


「しかし夜祭のネタは当てになりませんよ。もうとっくにどこかに逃げてしまったのでは? 」

「それはない。彼らは信用が置ける」

「どこが? 」

「まず第一に特徴が一致している」

「第二に本人から逃亡中だと聞かされているんだ。まず間違いない」

「いえ、ですから彼らが嘘を言っているかもしれませんよ」

「何の為に? 」

「分かりません。もしかして逃亡犯に同情して匿うようなんてことはないでしょうか? 」

「そんな馬鹿な! 」

「有り得ないことではありません。とにかくもう一度話を聞いてみませんか? 」

「うーん」

確かに一理ある。

ありもしない幻を追いかけ続けるよりも現実的だ。

「では彼女にも知らせてくれ」

連絡を取る。

明日朝一番奴が潜伏していた倉庫を見せてもらうとしよう。

もしかしたら奴が戻っているかもしれない。

とにかく今夜は再び悲劇が起きないように見守るしかない。


あれから三十分経っただろうか。

彼女は相変わらず動きが不自然。

辺りを見回している。キョロキョロと何かを探している様子。

こいつはおかしい。

近づきすぎず音も立てずに尾行する。

こちらに気付いたのか? 

いやそんなはずは……

まさかなあ……

嫌な予感がする。

俺の第六感が彼女に近づくなと警告している。

一体彼女は何者なのだ?

とにかく良く分からない。慎重に後を追う。

もう祭りの会場からだいぶ離れてしまった。

相変わらず辺りに人の気配はない。

だが祭りの客がまだその辺を歩いているとも限らない。

まあ。そん時は一緒に始末しちまえばいいがな。


おっと走り出しやがった。危ない危ない。見失ってなるものか。

もうそろそろ狩り頃だ。

行くよ? いいよね?

懐からナイフを出し準備完了。後は襲い掛かるだけだ。


                  <続>

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