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狙われた緑子さん

夜祭は前半を終え後半の演舞の儀式に突入。


おーい!

おーい!

人々が舞台に移動を始めた。

緑子さんが戻ってこない。

せっかくゆっくり二人で演舞を鑑賞できると思ったのに。肝心の緑子さんがいないのではどうにもならない。

もう早くしないと始まるよ。

ふうう…… 暗くて誰が誰やら。

「緑子さん。どこですか? 」

さっきから探しているが全く見当たらない。

怒って帰ってしまったのだろうか?

でも何かまずいこと言ったかな?

やっぱりあれか? ついつい目が行くんだよね。それを根に持って。嫉妬深いんだから。


叫び続ける。

「緑子さん! 」

「もう大声出さないで! 恥ずかしいでしょう」

「いや。帰ったのかと」

「ああもうこんな時間。私これから用があるの。ごめんね」

戻ったと思ったらもう帰ると言う。俺を嫌いになったのか?

せっかく盛り上がってきたところ。舞台も整った。

放してたまるものか!


「ええ? もう少し楽しみましょう。せっかくの夜祭。演舞はどうするんですか? 」

「ごめん用があるの。今から行かなくちゃ」

「緑子さん…… 」

「そんな顔をしないで。また会えばいいでしょう」

「でも…… 」

俺は振られたのか? そうに決まってる。

「あなたも待ち人いるんじゃない。確かのぞみさん」

「いや男の子だって。誤解なんだから」

「分かってる。でももう八時よ。行ってあげたら。かわいそうよ」

「まずい! 忘れていた! 」

「じゃあ私はこれで」

「俺も戻るよ。またよろしく」

ついつい浮かれてしまい時間の確認を疎かにした。

ごめんのぞみ! 待ってろよ!

人をかき分けて外へ。

前を歩く彼女を追い抜く。

「緑子さん! 」

「またね」

「約束だからね! 」

念を押す。

しかしもう会ってくれないんだろうな。何となくそんな気がする。杞憂でなければいいが。

緑子と別れ夜道を走る。


平和だ。

今ここに凶悪な指名手配犯が彷徨っているなんて誰も思わないんだろうな。

皆楽しそうに笑っていやがる。別に羨ましいとも思わない。

ただこう言いたい。

『気をつけてね』

ははっはは!

笑いが雑音に掻き消される。

男がこちらに駆けてくる。

「待ってろよ! うおおお! 」

まったく危なっかしい奴だな。こんな夜道を馬鹿みたいに突進していきやがって。

それにしても連れの女。確か俺に話しかけた変な女。

よく見ればきれいだ。ちょうど一人になったところ。これはチャンスかもしれない。

よし脇道に入った。

いいぞいいぞ。

後ろからゆっくり警戒されないように近づく。

おっとこれ以上はいくらなんで気付かれる。

少し距離を取ろう。

彼女の歩幅に合わせてゆっくり歩く。

うん?

いきなり走り出しやがった?

どうした? 

気付かれた? そんな馬鹿な。

今度は周りを警戒し始めた。

ふう危ない所だった。近づきすぎていたら怪しまれるところだった。

それにしても何か変だ。

まあいいか。

獲物に違いはない。


旅館。

「お連れ様はまだのようですね。どうしましょうか? もうお布団をお敷きしましょうか? 」

食事を虚しく一人で取り、今は片付けてもらっている。

お腹一杯。

これ以上食べたら気持ち悪くなってしまう。明日にもよくない。

無理をせずに下げてもらう。

寝る準備。

布団の用意ができ後はもう寝るだけだ。

実際もう欠伸が止まらない。

眠い! 眠い!

旅の疲れが一気にきた。

でもサブニーが帰ってくるまで起きてなくちゃ。

目を擦り部屋を出る。

それにあと二人で百人。今夜中に達成するのも悪くない。

大丈夫。怖くない。ただ夜の散歩をするだけ。それだけだ。

サブニーが近くで迷っているかもしれない。

助けに行かなくちゃ。

再び外へ。


「ちょっと! 」

しかし若女将に止められる。

「危ないですよ」

「サブニーを迎えに行くだけだよ。心配ないよおばさん」

「お姉さんです。あの…… 」

客に強制はできない。お願いするにとどまる。

「いいですか。外にはこんな恐ろしい狼がうろついているのよ」

体全体を使って怖がらせる。

あまりにも子供騙しだ。村の大人たちだってもう少しまともなお話を作れる。

「村では町には人はいない。化け物がいるって教わったけど間違いだよね。今日、自分で確かめて分かったんだ」

「お待ちください。外は非常に危険です」

「分かってるよ。でもサブニーが待ってるかもしれない」

「今この辺りに殺人鬼が潜んでるそうです」

「今度は殺人鬼? それ何? 」

「とても恐ろしい怪物です。ひとたまりもありませんよ」

「うーん。困ったなあ…… でもサブニーを迎えに行かなくちゃ…… 」

「ならこうしましょう。もうすぐ手も空きます。一緒に参りましょう」

提案を受け入れる。


まあそっちの方が怖くなくていいか。

忙しいのに邪魔してしまったかもしれない。

これでは長老様に叱られる。

人に迷惑をかけないで自分の力でやるように言われているのにな。

しっかりしなければ。

長老様…… 村の皆も……

どうしてるかな?

まあ間違いなくいつもと変わらないゆったりとした時間が流れているんだろうな。

村のこと、たからのこと、家族のことを思い出す。

ああ来なければよかった……

もちろん本音じゃない。

でも急に心細くなる。自分ではどうにもならない。

一人ぼっちで本当に心細い。

サブニー! 早く帰ってきてよ!

サブニー!


                <続>

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