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黄昏 繰り返される惨劇

夜祭が始まった。その頃村では……


「大丈夫かしらあの子。危ない目に遭ってないわよね。

私、今からでも迎えに行こうかしら。本当に心配だわ」

「おいおいそんなに心配するなよ。三郎君もいるんだ問題ないよ。

それよりもせっかく早く帰ってきたんだ飯にしてくれないか」

「ああ。そうだったわね」

「あー疲れた」

発掘作業もひと段落着いたらしい。

次の仕事に移るそうだ。

「大丈夫ですよ。奥さん。しっかりしている子だから。たからと違って」

今日はたまたま、たから一家が遊び来ていた。

「たからちゃんもあの子がいないとつまらないでしょう」

「おばさんは気にしすぎです。明日には帰ってくるんですから」

「そうだぞ。お前は心配性なんだからまったく」

「そうは言ってもね…… 」

「おばさんはまさか信じてるんですか? 町には化け物しかいないなんて言い伝え。

今では誰も信じてませんよ。それこそ子供だって」

「おばさんの頃はそうだって言われてたのよ。時代ねえ」

「本当にそうですね。奥さん。おほほほ」

「迷って泣くのが関の山さ。はっはは」

「縁起でもないこと言わないで! あの子に何かあったらああ…… 」

「まあそれもサブニーがいればあり得ません。いい加減心配し過ぎですよ」

「そうだそうだ。明日になりゃ帰ってくるって」

楽観視はできないが心配しすぎもどうかと思う。


「では食事にしましょうか」

今晩はたからの好物の鳥の丸焼き。

豪快にかぶりつく。

はっはは!

何と言っても大勢で食べる食事は格別だ。のぞみはいないが……

のぞみの代わりにたからが可愛がられる。


大丈夫かなあいつ……

変に頑固なところがあるからなあ。

突っ走んなきゃいいけど。

無理すんなよ。

上をぼんやり眺める。

のぞみの姿を思い浮かべる。


村から出たものは天罰が下る。

そんな古い言い伝えを守り村に縛られて生きている人々。

長老にとっては村を維持することこそが使命。仮に村民に災いが起ころうとも村が存続するなら構わない。

村の年寄りは信心深いので勝手に言い伝えを守り疑うことすらしないだろう。

だが若い者はどうだろう。

町から来たものなどは言い伝えの話など気にも留めていないし長老の言葉をありがたがるはずもない。出戻り組もそうだ。村や長老を蔑ろにする。

若者がこの村を盛り立てないといけないのに関心が薄い。

村には子供がいるとは言えまだまだ少ない。

早く何か手を打たねば。

このままでは村は衰退。最悪村が消えてしまうかもしれない。

消滅までのカウントダウンが始まっている。

のぞみとたからは村の希望となれるのか?


夕方。

もうすぐ真っ暗になる。

サブニーの言いつけを守り旅館へ。

「じゃあね」

「あれ。祭りは見に行かないのかい? 楽しいよ。一年に一回の夜祭」

「でも…… 」

「こら困ってるだろ」

二人組のおばさん。

悪意はないのだろうけど長話。特に夜祭について詳しく教えてくれる。

一つのことを聞くと十返してくれる。

有難いがなかなか話が進まない。そして放してもくれない。

僕だって見たいし行きたいし楽しみたい。でもこれ以上遅くなれば暗くなってしまう。

そうなれば右も左も分からない。

完全な迷子。

どれほど恐ろしいことか。考えただけでぞっとする。

今でさえどれほど心細いか。

サブニーの言いつけを守り走り出す。

「ああ。行っちゃったよ。見て行けばいいのに」


急げ!

きゃあ!

暗い中よく見もせず走ったため勢いよくぶつかってしまった。

倒れたのは女の子。

「ああ…… ごめんなさい。大丈夫? 」

五人組の男女の一人。

「お前何やってんだよ! ふざけんな! 」

男が文句を言い、向かってくる。

手には何かを持っている?

「すいません。僕急いでいて…… つい…… 」

「もういいですわ。今度からは気をつけてください」

怪我はないようで笑顔を見せる。

ぶつかった女の子は同い年ぐらい。

小さくてかわいらしいが笑い方が独特。

友人の手を借り立ち上がる。

彼女の世話をしているのがやはり同い年ぐらいの少女。

夜祭の儀式に参加するのだろう。皆とは違う格好をしている。

隣には帽子でお人形さんのような見た目の女の子。

ここからではよく聞こえないが何かをつぶやいている。

年は僕より上なのかしっかりしている。

「大丈夫かな? 」 と声をかけてくれた。

「行こうぜ! 」

なぜか木の棒を振っている男。

その隣で背の高い女の人が笑っている。

不気味だ。

夜だから余計に不気味。

もう一度謝り走り出す。


夜祭の客?

どうやら彼らは地元の者のようだ。

しまった! 名前を聞くのを忘れた。もう少しで目標に到達するのに……

僕としたことが…… どうしよう?

戻ってみるか?

気にせずに帰るか?

サブニーの顔が浮かんだ。

仕方ない。諦めて旅館に戻ろう。

再び走り出す。

今度は人にぶつからないように気をつけなくちゃ。

おーい!

呼びかけるがもう誰も歩いていない。

もう少しなんだけどなあ……

残念。諦めるしかない。後は明日にしよう。

間もなく辺りは闇に包まれる。

迷わずに旅館に戻れるか心配だ。

思ったよりも時間がかかってしまった。

よし行くぞ!

暗闇を駆ける。


                   <続>


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