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サブニーの罪

ドンドドン

ドンドドン

激しく打ち鳴らされる太鼓の音。

夜祭の開始を告げる。


ちょっと早いが陽が沈みかけている。もう動き出してもいい頃だ。

お世話になった倉庫に別れを告げる。

待っていろよ。今捕まえに行ってやるからな!

ははは!

獲物を求めて走り出す。

もはや自分ではコントロールできない。

うおおお!

いつからこうなってしまったのだろう?


それから三十分が経過した。

倉庫に人影。

ぎっぎっと軋むような嫌な音が響き渡った。

「おい、行ったか? 」

「うん。いないみたい」

「本当か? よく探せよ! 」

「やっぱりいないよ」

「ふう。安心したぜ」

「でも何で逃がすような真似をしたの? 」

「お前こそ腰を抜かして泣いて命乞いしていただろう」

お互いに擦り付け合う。

「それは兄ちゃんが人質に取られていたから」

「いや違う! 」

「僕が悪いって言うの? 」

「そうは言ってないだろ。でも…… 」

ナイフを突きつけられたら誰だってどうすることもできない。

下手に動いてはやられてしまう。あれがベストな対応。

解放された喜び…… いや約束を守るのに必死だった。


無造作に置かれた皿を回収する。

「あいつパンまで食ってやがる! 」

ゴミが散乱。

衛生面では決していいとは言えない環境。

埃だらけ。

ごっほごっほ。

「早くここから出ようぜ。咽ちまう。よくこんなところで長時間もいたもんだ」

「ねえ。隠れてるなんてことはないよね? 」

「知るか! 何のメリットがあるんだ」

「とにかく俺らは約束を守った。奴がいようが戻ってこようが恨まれる筋合いはない!

逆に感謝されるぐらいだ」

「でも…… 」

「うん? 何か気になるのか? 」

「僕たち匿っちゃったのかな…… 」

「はああ? 人質になっていただけだろう」

「でもいくらでも打つ手はあったよね」

「俺はない! 従う以外ない! 」

「殺人犯なんでしょう? 」

「知るか! 」

「追われてるんだよね? 」

「ああ。そう自分で言ってたな」

匿ったと言えなくもない。

しかしそれは意図したわけではなく……

様子を見に来たのだって一種の義務のようなもので。

何かおかしい。

俺たちは奴に操られていた?

「とにかくここを出よう。ああ。埃臭くてならねい」

確認完了。


みすみす殺人鬼を逃してしまった?

奴がまだ何か企んでいるとしたら俺たちはその手助けをしたことになる。

だがどうすることも……

いや違う! 奴に同情した。奴との信頼関係のようなものが出来上がっていた。

それは間違いない。

でも…… 責任が無いとは言えない。

俺はなんてことをしちまったんだ!

罪悪感に苛まれる。

俺…… いや俺たちはとんでもないことをしちまった。

間違った選択をしたか。

どうしたらいい?

正直に話すしかない。

包み隠さずにすべてを伝るべきだろう。

「ねえ。報告した方がいいかな? 」

「そうだな…… 」

迷いが生じる。

報告をすれば事実が明るみになる。

それは俺たちにとって正しいのか?

「ねえってば! 」

「分かった。報告に行くぞ! 」

二人は倉庫を閉めた。

これ以上の事態の悪化は避けねばならない。

戻って雇い主の元へ。


五時過ぎ。

夜祭。

祭り二日目。

祭りは三日に渡って行われる何十年も続く伝統行事。

この間ばかりは町からの大勢のお客がやってきて町並みの賑わいとなる。

もうどちらが町なのか分からない。

特に夜祭は夕方から始まるので人気が高い。

夜祭が行われている原っぱ。

ここは参道になっており今は人がひしめき合っている。


今年も地元の者と町からの観光客で盛況。

いちゃつくカップルが何組も。

夜祭とあって気合いが入っている。

その中にサブニーの姿も。

「悪い迷っちまった! 」

慣れない人混み。薄暗いので人の判別も難しい。

「三郎さん。こっちで食べましょう」

年に一度の祭りにどうしても参加したかった。

町の娘と一緒に楽しめたら最高。

兄たちから聞かされていた話は本当だったのだ。

俺もチャンスがあればいつの日かと心に誓っていた。それが今実現している。

夢が叶ったのだ。

しかし彼女は町の者ではなく地元の子だ。ちょっと残念だがそれが逆にプラスに働いている。

田舎者の俺の話にも耳を傾ける優しくていい子だ。

一人ぼっちでいたところを話しかけられなぜか一緒に夜祭に行くこととなった。

ここまで上手く行くとは本当に神に感謝している。

これものぞみのおかげだ。

長老様に言われた時はなんで俺がお供をと思ったががよく考えればその日は祭りの日。しかも夜祭が行われているとくれば断る理由はない。

えへへへ。

のぞみには悪いが俺の願いを叶えさせてもらったよ。町の娘ではないけれどね。

「行きましょうか」

食べ終わり再び歩き出す。

「きゃあ! 」

彼女はぶつかってバランスを崩す。転んでは大変。

「危ないぞ。ほら手を」

自然と手をつなぐことに成功。

「有難う。三郎さん」

彼女は恥ずかしそうに下を向く。

運命を感じる。

ああ最高だ。

「さあ行きましょう」

焦る胸の内を隠し懸命にリードする。

彼女はまるで天使のようだ。

ダメだもう止まらない。

手をつなぎゆっくりと二人で歩き出す。


                <続>

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