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夜祭

音がする。

どうやら戻ってきたようだ。

「ふふふ…… ようやく飯の時間か。いやそれとも罠かな? まあどっちでもいいさ」

「そんなはずあるか! 」

「面倒だから火でも放つ算段かもな」

もう一人が姿を見せた。

「どうした遅かったなあ? 一人か? 」

「飯に手間取って…… 」

皿におにぎりを乗せている。

言われた通り食べ物を持ってきたらしい。素直な奴だ。

「よし。置け! 」 

「こいつはもういい。解放してやる。行け! 」

「約束通り日が暮れたら出て行ってやる」

二人は言われた通り扉を閉め出て行った。

ふん。一宿一飯の恩義はある。まだ暗くもない。

俺の獲物は闇にうごめく子羊なのだから。

日暮れにまでゆっくりすることに。


太鼓の音がする。

どこからか縦笛の音色も聞こえる。

大勢の驚く声と拍手。

花火の音もする。

生憎ここからでは何も見えないので想像するしかないがこれだけ騒がしいのは祭りぐらいなものだろう。そう言えばあいつらがそんな話をしていたような。

せっかくのチャンス。獲物にはもってこい。

群れからはぐれた子羊を頂くとしよう。

さあ闇にまみれて行動開始だ。


酒場。

まだ昼だと言うのに入りきらないほどのお客で繁盛している。

夜祭の二日目。

町からも多くの者が祭りを特に夜に行われる幻想的な夜祭目当てに集まっている。

「いらっしゃい」

「ああ。ダメダメ。子供がこんなところに来ちゃだめだ! 」

「こんなところとは何だ! 」

客の一人が店主とやり合っている。

そこに一人の酔っぱらいが。

もう出来上がっているようで呂律が回っていない。

「おうおう。どうしたああん? えっへへ。いひゃひゃひゃ! 」

仲裁に入るどころか余計に混乱を招く。

「俺が悪いのきゃ? 」

「そうだよ! 」

周りの酔っぱらいも加わって収拾がつかなくなった。

「おら! いい加減にしろ! これ以上騒ぐとここから出て行ってもらう」

「オヤジ! それは無いよう…… 」

わはっはは!

ひゃっははは!

いいぞいいぞ! やれやれ!

絡み酒から笑い酒に。

店は笑いに包まれた。


「そうだ。あの子はどうした」

「ああこっちにいるよ。はぐれたのかい? 」

優しく頭をなでられる。

「どうしたの坊や? 」

「僕は…… のぞみって言います。訳があって山奥の村からやって参りました」

「何だお前も夜祭を見に来たのか? 」

酔っぱらいが絡む。

「いえ…… 祭りがあるなんて知らなくて」

「良いんだよ。坊や。ここに何しに来たの? 」

「実は…… 皆さんにお願いが。僕は今旅の途中です。もしよろしかったら皆さんのお名前を教えて頂けたらなと」

サブニーから教わった方法で話を聞く。

一人ずつ丁寧にあいさつをして確認を取る。

合わせて四十人強。

目標の半分近くに迫る数。

「あらあら。本当にこれだけでいいの」

「はい。たくさんの人と触れ合うことが本当の目的なんです」

「偉いぞ坊主! よしもっと人が集まるところを教えてやる」

酔っぱらいの戯言を真に受けていいのか迷うが一応聞いてみることにした。

「夜祭に行ってみろ。人で一杯だぞ」

有益な情報を得る。

夜祭。夜祭と。

「待て! こんな子供に一人で行かせるつもりか」

「そうだよ坊や。夜祭は夕方から始まるの」

「行くのはおよしなさい! 」

「しかしよう…… 」

「危険です! 」

目的を達成するには夜祭に参加するのがベスト。

だけど夜に一人では危ないし…… でも見たいしなあ……

「ほら! 子供はもう帰る時間だよ! 」

店主に強引に外に連れ出される。


「お前まさか迷子じゃ? 」

「そんなことありません。今晩の宿も決めてあります」

「そうかなら送って行こうか? 」

「いえ。近くですから」

もう少しこの辺で。できれば今日中に目標を達成したい。

歩き出す。

話だと夜祭はこの近くで行われるらしい。そう言えばさっきからどんどんうるさい。

夜祭か…… 少しぐらいならいいよね。

音のする方に向きを変える。


旅館にて。

「はい。何でしょう? 」

「この辺りにこのような人物を見かけませんでしたか? 」

「何ですかあなた? 」

「おっと。申し遅れました。こう言うものです」

身分証を見せる。

「何だ刑事さん」

「実は街から逃げてきた凶悪犯を追っていまして。この男を見かけませんでしたか? 」

凶悪犯の似顔絵を見せる。

「いえ。まったく。お客様の中にそのような方はいなかったと記憶しています」

「そうですか。では念のためこの紙を置いておきますね」

「若女将! 」

「すいません。もう戻らなくてはなりません」

「ご協力に感謝します。できましたらお客様に注意喚起をお願いします」

歩き出す。

「どうでした? 手ごたえは? 」

「いや。まだここまでは来ていないようだ」

「どこかで隠れてるんですよ。奴を見くびると痛い目に遭いますよ」

「分かっている。それよりもそちらはどうだ? 」

「はい。今から合流する手はずになっています」

「よし。では一度会ってから夜祭の現場に向かうとしよう」


                   <続>

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