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発覚

ベットには複数の遺体が安置されていた。

年齢性別不明の被害者。

二日前付近の住民の通報により発覚した怪事件。

第一発見者によればこれまで何度も空き倉庫に出入りする者を見たとのこと。

今のところ若い男性と言うこと以外分かっていない。


「特徴は? 」

「暗くてよく見えなかったもので」

「なぜ男だと思った? 」

「体つきが男っぽかったんでね」

「若い? 」

「ええ。あの倉庫は若者のたまり場になってて。もしかしたら未成年かもな」

「思い込みは禁物です」

「だってよう…… 」

「一人でしたか? 」

「うーん。たぶんそうなんじゃね。俺に気付いて隠れるように中に入っちまったからそれ以上はちょっと…… 」

「一回? 」

「三回ぐらい見たかな」

「いつも一人でしたか? 」

「ああ。間違いないと思うが…… 」

「他には? 」

「いや。もういいかい刑事さん。同じ話を三回も四回もしたくないんだよ」

「またご協力ください」


男は駅の方に歩いていく。

念のため尾行をつけることに。

第一発見者を疑うのは基本中の基本。

それに犯人が発覚を恐れて男の口封じをすることだってあるだろう。


しかしまずい。

私の管轄する地域で大事件が発生するなど。

うう。頭が痛い。

今のところ三人だがこのまま放っておけば大変なことになる。

地域住民の安全のためにも一日も早く解決しなくてはならない。

私の出世だってかかっている。

まだ詳しいことは分かっていないが年齢も性別もバラバラとなれば無差別殺人の可能性が高い。

うーん。遺族になんと説明すればいいか。

とにかく必要最低限のことしか知らせない。

そして口外しないように説得せねば。


ノックと同時に部下が入ってきた。

「あの…… 被害者について…… 」

部下は息を切らし何事か喚いている。

「遺体の身元が分かりました」

「そうか。うん。うん。だろうな」

「それであの…… 」

「引き続き身元の確認を急いでくれ。なるべく明日までには確定させ発表しなくてはならない。

分かったな? 」

「はい」

部屋は再び静かになった。


タバコを一本取り出す。

ふう

ゴホゴホ。

年には敵わねいな。

もう一本追加。

ゲッホゲッホ

苦しくなってきた。

止めるかなあ。

しかしこうもストレスが多いと……

医者の忠告を無視して好きなだけ吸う。

それが俺の流儀だ。

おっと済まねい。

咽ちまったか? だがもう息をしてねいんだ我慢しろや!

うーん。骨が折れるぜ。


一か月前から行方不明の者が続出。

神隠しだと騒ぐ年寄りが情報提供に訪れるがまったく要領を得ない。


まさか皆じゃねいだろうな?

行方不明リストに印をつける。

これは徹夜覚悟だわ。

ふう 

もう一本火をつけ心を落ち着かせる。


「お願いします」

「どうぞ」

写真付きのビラを眺める。

「それがよう。三日前に居なくなったんだよ」

不安そうな表情。家族なのだろうか?

「手がかりを探していてね。どうかお願いします」

深々と頭を下げる。

念のために一枚受け取る。

どうやらまだ知らされていないらしい。

あの倉庫に警察が踏み込んだのは目撃している。

おかしい? なぜ言わない。

時間を要することでもないだろう。


制服警官が巡回。

目つきが鋭い。

何かを警戒している様子。

これはまずい……

帽子を深くかぶり下を向く。

今奴らに気が付かれては面倒だ。

ちょうどビラが役に立った。

奴らはこちらに疑いの目を向けていない。

視線は送るが突き刺さる感じもない。

ゆっくり。ゆっくり。歩き出す。


振り返ってはいけない。

奴らはこちらの動きを見ている。

歩くペースを一定に保って自然な動作を心がける。


一本脇に入って振り返る。

奴らはこちらに注意を払うことはなく行ってしまった。

愚かな…… ふふふ……


二日前に追い出された倉庫の代わりに新たなねぐらを探す。

もっと人が寄り付かない。郊外。山奥なんかがいいかな。

当てはある。

ここから十キロも歩けば人の寄り付かない山麓。

あそこが隠れるには絶好の場所。

だが一つ問題がある。

人がいないことだ。

いや人が少ないと言うことだ。

矛盾するようでいてそうでもない。

獲物を見つけられなければ意味がない。

ただの逃亡者に過ぎない。

早く獲物を!

俺の体が激しく欲している。

もう止まらない。

もう誰でもいい。

田舎もんであろうとお仲間であろうと構わない。

目的はただ一つ。

獲物を狩ること。

もう誰にも俺の崇高な行為を邪魔されたくない。


町を離れ山の麓を目指す。

町追われ人哀れな子羊を捕食す。


                 <続>

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