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生命の代償  作者: 林海
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第10話 悪魔(Existence)


 俺は残り少ない時間を大幅に無駄にしながら、それでも俺は理系で、理系だからこそ見つけられた切り口があった。


 それは、アイザック・ニュートンだ。

 ニュートン力学を始めとする科学の知の獅子の正体は、錬金術師だった。

 遺髪から水銀が検出されているというから、理論だけでなく実験も相当にやっていたはずだ。


 そして……。

 ひょっとしたらニュートンは、賢者の石を作ることに成功したんじゃないかと、俺は思ったんだ。

 ニュートンはケンブリッジ大学の学者なのに、王立造幣局長官なんてやっている。そして、贋金つくりを捕まえる功績をあげ、さらにはイギリスが金本位制へ移行するきっかけを作った。


 つまり、異様なまでに金への執着があったからこそ、贋金を見破ることができたのだろうし、下院議員までやっていたニュートンが、結果として自国を他国より富ませうる結果となる金の大量生産について、無関心であったとは思えない。


 そして、ニュートンが万有引力の法則を発見した2年後には権利章典が公布され、イギリス国内はごたごたしていた。それなのに、ニュートンが王立造幣局長官になったあたりから対外戦争においてイギリスは戦勝を重ねている。

 戦争に勝つのには、戦費だ。

 そのくらいは、俺だってわかっている。じゃあ、国内が荒れているのに、その戦費はどこから出たんだろう、って話だ。


 さらに対フランス戦争で大戦果をあげたマールバラ公は、オックスフォードシャーの領主となった。もしも、マールバラ公に、莫大な戦費が金という形でニュートンから融通されていたら……。

 これが、オックスフォード大学のニュートンのライバル、ロバート・フックの死後の名声の低下と無縁であったとは思えないじゃないか。


 まだある。

 ニュートンは、株価暴落で2万ポンドの大損をしている。現在の価値からしたら、6億円を超えるかって金額だ。

 とてもじゃないけど、大学教授の経済規模で出てくる金額じゃない。

 それなのに、遺産はそれなりにあって、農園まで持っていた。


 どうにもこれらのこと、俺には辻褄が合うようには思えなかった。

 それならいっそ、ニュートンは賢者の石を作れたと考える方が、すっきりする。

 そして、その製作方法は彼の死とともに失われた。残された少量の賢者の石はイギリスで受け継がれ、ビクトリア朝の発展の礎となり、永遠に失われた。

 

 

 周期表を見るまでもなく、錬金術は不可能だ。

 でも、それを可能にする方法があるとしたら……。

 核種変換なんていう、未だに確立したとは言えない技術とは違うアプローチがあるとしたら……。

 それは、おそらく、時空をも超えるレベルの技術であったに違いない。


 それを俺ごときが数日で再発見するのは、確実に無理だ。

 でも、だ。

 錬金術と神、錬金術と悪魔。

 この複合した切り口からならば、もしかしたら光明が見えるかもしれない。

 ニュートンは聖書研究もしていた。そして、神とはなかなか取引はできないけれど、悪魔だったら取引は可能なはずだ。


次話、第11話 交渉


に続きます。

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