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少女ネイビーとシャングリラ  作者: オカダ倭
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先輩属性は先輩全員が持っているわけではない

宿題考査も、あっという間に過ぎていき、九月に入ったというのに暑さは相変わらずといったところの新学期三日目の放課後。俺たちのクラスは文化祭の出し物の設営をしていた。

うちのクラスはお化け屋敷。夏休みの間に、様々な騒動があって、このお化け屋敷の権利を藍子が勝ち取ったわけなのだが、そのことを知るのは、俺と藍子くらいのものだ。ほかのクラスメイトはそんなことを知らない様子で楽しそうに設営を進めている。

「この小道具はどこに使うんだ?」

「あーその生首は、三つ目のセクションで使うから、こっちに頂戴~」

「血糊は高いんだから、あんまり使いすぎないように~結構予算ぎりぎりだからね~」

「おいコラ男子!接着剤が床に垂れてるって!きちんと掃除してよね」

「へいへい」

なーんて声が飛び交っていた。あまり夏休みの準備にも参加していなかった運動部の面々も、その自慢の体力を全力で活用してくれている。皆、暑さとか、細かい作業でぐちぐち言いながらも、顔には笑みが転がっていた。楽しそうで何よりだと思う。

「洸祐、私たちは門のほうを手伝いに行きましょう」

「そうだな。だけど、こっちのほうは大丈夫か?俺たちがいなくても」

「そんなの、聞いてみればいいじゃない」

藍子は教室のみんなに向かって

「私たち、文化祭実行委員は、会場の設営に行くけど、大丈夫よね?」

「「大丈夫~」」

藍子は教卓から降りて、「ほらね」と笑った。俺はあの日から、藍子の笑顔に弱いみたいだ。


***


体育館には、校門に設営する門の部品が散乱していた。基本的に建設現場の足場のように門の形をつくり、そこに段ボールやら木やらで作られた装飾の部分を張り付けていく。そうすると文化祭の顔である門の完成となる。

今年のテーマは日光東照宮らしい。陽明門をモチーフにしているらしく、どこか荘厳なつくりになっていた。

「君たち一年生だよね。一年生はとりあえず、こっちにいて。装飾品が剥がれ落ちるといけないから、それのチェックをお願い!」

はつらつとした先輩だった。確か、生徒会長であるところの鶴ヶ島先輩と親しく話していた気がする。

「あれは、次期生徒会長と呼び声の高い、雨森しずく先輩よ。確か、二年生の学年一位をずっとキープしているとかいないとか」

「そうなのか。俺はてっきりその逆かと……」

「逆?」

「だってめちゃくちゃスカート短いし、髪もなんか明るい気がするし、勉強よりも『遊び』って感じじゃんか。」

「そうね。洸祐の好きそうなタイプね」

「…………そんなことないです。すみません」

藍子は少しむすっとした表情で、「でも…」と続ける。

「多分完璧主義なんじゃない?見た目も中身も。そう考えたら納得のいきそうなものじゃない?」

「そういうもんか……」

じゃあ、あれはギャップなのではなく、完璧主義が故だというのか。だとしたら結構面倒な人っぽいななんて勝手に思ってしまう。ごめんなさい、しずく先輩。

装飾品のチェックを俺と藍子のダブルチェック体制で行い、終わる目途が立ったところで、藍子はこの門を作る責任者のしずく先輩のもとに駆け寄っていった。俺は冷房設備もろくにそろっていない体育館のなっきに当てられってしまったようで、少しぐったりしていた。

ぼーっとしながら藍子としずく先輩が話しているのを見る。

藍子はこうして先輩とかに取り入るのがうまいな、と思う時がある。

だけど、俺はこの時気づくべきだったのだ。

しずく先輩に敵対心を抱かない、藍子の異変に。

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