文面と口調が違う人っているよね
これで素直に喜べるほどに俺は子供ではなかった。だが、この高鳴りを一人で抱え込むほどには大人ではなかった。
とりあえず恋先輩に、相談してみることにした。
『……ということなんですけど、どういうことですか?』
『どうもも何も、レイではなく洸祐を選んだというだけのことでしょ』
『先輩、ずっと思ってましたけれど、話すときとLINEの時の口調違いますよね』
『そういうことは言わない』
『へいへい』
『洸祐は勉強しているのか?明日は宿題考査でしょ?』
『してますよ、もちろん』
もちろん嘘であるのだが。そんなこんなで、実感として、藍子の言葉が浮かび上がってきた。
それでも、心にブレーキがかかるのは、このままアクセルを踏んでしまえば、自分の親友がひき殺されてしまうとわかっているからだった。
『レイには言うなよ。洸祐があいつと友達でいたいと思うのならな』
『それは、卑怯にならないですか?』
『なる。だが、嘘も方便』
もしかしたら、恋先輩にはこういう経験があるのかもしれない。
『多分藍子もそういうことはわかっているはず。そして伝えてもいるはず。でも、どうして今なんじゃろうな』
『あ、口調戻った』
『そういうことは言わない』
恋先輩は、三年生ということだから、宿題考査はないらしい。というかそもそも宿題がない。まあ、正直それ以上の課題量だろうから、宿題がないといってもほとんど意味がないだろうけれど。だからこうして付き合ってくれている。
感謝のメッセージを送り、かわいらしいスタンプが返信されてきたタイミングで、部屋の窓にこつん、と何かがあたる音がした。―――藍子だ。
メッセージが来ていた。『もう一つ話しておきたいことがあった』と。
わざわざメッセージではなく、言葉を交わすというのはよほど複雑なことなのだろうか。
「どうした」
「藍子の部屋には電気がついていないらしく、藍子の姿はほとんど見えない。
「一つだけ、言いたいことがあったから」
「そうか」
「うん。文化祭最終日。私たち一年生は後夜祭の設営には関わらないから、実質最終日の文化祭終了で仕事が終わるわよね?」
「そうだな、。確かにそんなことを生徒会長が言ってた気がする」
「そう。その、後夜祭の時、時間空いているかしら」
「……空いているけれど?」
「もし、何もないなら、屋上に来てもらえる?」
「屋上?入れないんじゃないのか?」
「入ろうとすればわかるわ。その時間だけは入れるようになっているから」
「……そうなのか。わかった」
「約束よ?」
「ああ。」
「おやすみ」
「おやすみ」