わかってしまった
人がまばらになった道。屋台の明かりも消えて、町が本来の暗さを取り戻していっている。楽しさ、というものの余韻が畳まれた屋台骨に残っている気がした。
河川敷に向かう。別に悪いことをしているわけではないけれど、覗き見るというのは、少しの罪悪感を生じるものだ。
レイと藍子は、二人同じ方向を見て、話していた。
レイが身振り手振りを使っているのに対して、藍子は体育座りの状態で、話をしているみたいだった。
少し笑顔も見えたりなんかして、とても楽しそうだ。
「いい感じじゃな」
恋先輩もそれを見てつぶやく。俺も同じ気持ちだった。
二人は向き合う。
レイは藍子の手を握る。
声はぎりぎり聞こえない。下がっていた藍子の視線がレイへと向かっていく。
レイは意を決したように何かを藍子に向けて言う。
藍子もそれを聞いている。
そして、藍子が話始める。
返事、という奴だろうか。
――その時、二人の間の空気が弛緩したように感じられた。
笑顔さえ見える。声は聞こえないのが唯一の救いだと思った。
ああ、救いだなんて思っている時点で、俺はそれを期待していたんじゃないか。
「おい、どこへ行く!」
恋先輩は俺のことを止めようとしてくれたけれど、それさえも振り払って、俺は夏の終わりを駆けた。
これがきっと、後悔ってやつなんだろうな。
手首に下がった綿菓子を強引に投げ捨てた。