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少女ネイビーとシャングリラ  作者: オカダ倭
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性格が移るなんて話があるくらいだから自分の性格なんてわからない

それから俺と藍子は、俺のおじいちゃんの家に……つくことはできなかった。

あのお兄さんが、俺たちのことを迷子だという風にリンゴ飴を食べている間に連絡網を回したらしく、キャンプ場のオーナーへと連絡が通じ、俺と藍子の冒険はここで終了となった。

とはいっても、この一連の騒動を『冒険』だと思っていたのは俺だけかもしれなかった。藍子は藍子の両親の顔を見るとすぐに泣きついたからだ。彼女は震えていたということを俺はそれを見ながら思い出していた。

もちろん、俺はこっぴどく叱られた。もしかしたら俺は両親の気を引きたかっただけなのかもしれないなんて今となっては思う。

浮雲のような両親だから、別に俺のことを愛していないわけではないと思うのだが、いかんせんそれが目に見えた形で現れない。当時の俺はそういう過保護とは真反対のやさしさに気づいていなかったのだろう。最近になって、両親に感謝するべきだということに気づくことができている。


ちなみにここは全くおじいちゃんの家とは無関係な土地だった。山に囲まれた土地だし、普段山なんて見ないせいか、俺は山の表情というものをよく見れていなかったらしい。ただに似ているというだけだった。現地の人からしたら全く似ていないといわれそうなものだ。

「まあ、今回は無事だったからいいものの。これからは、携帯を持ちなさい。わかったね?」

「………」

「わかったね?」

父親が顔をずいっと近づけてくる。まるで怒っているみたいだった。いや実際怒っているんだけれど。


それから変化したことといえば、俺と藍子には小学生ながらに携帯電話が買い与えられたことと、祭りに行けばりんご飴を食べるようになったことと、藍子があの言葉をいうようになったことだ。

今の人を振り回すような藍子からは想像できないだろうが、引込み思案だった藍子が活発になった。昼休みは外で遊ぶようになったし、先生とも積極的にコミュニケーションをとるようになった。

そして、中学生になり、ぶかぶかの制服に身を包んだ入学式の自己紹介。

「私の夢は総理大臣になることです」

なんて言ってのけるまでには彼女は成長していた。もしかしたら人によってはこれを成長といわずに退行と呼ぶのかもしれなかったけれど、俺はこれを少なからず好ましく思っている。


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