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少女ネイビーとシャングリラ  作者: オカダ倭
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女の汗はフローラル……そんなわけないだろ!

八月の最終週。

もちろん夏は容赦なくその暑さを存分に発揮してくれちゃっていた。九月に差し掛かろうとしているのにもかかわらず、その暑さは衰えることがない。まあ例年十月までちゃんと暑いしな。

久しぶりに部屋から出たような気がする。玄関のドアを開ければ、熱気が一瞬で俺の体を包む。離してくれる気配はなさそうだ。

集合場所は、最寄りの駅。自転車で行くと駐輪場代がかかるので、俺は徒歩で行くことにした。

徹夜明けの日光は、人を殺せるんじゃないだろうか。

なんで徹夜なのかって?そりゃあもちろん数学の宿題をやっていたからだよ!そして終わらなかったよ!

二時集合なんだから、朝早く起きて宿題をやればよかった? まあ、普通の人間ならできたかもな。俺は生憎夏休みは引きこもりの反ニートだからな。ちなみにこのニートってのは意味を間違って使っている。

それほど遠くないはずだ。だけど、駅に着くころには全身から汗が噴き出していた。体中の水分が抜けきったような錯覚に襲われる。

「洸祐さん、これ飲みますか?さっきそこの自販機で当たったんですよ。すごいですよね」

レイは両手にキンキンに冷え、そして気温差で水滴が滴っているコーラとメロンソーダを抱えている。レイはメロンソーダを差し出してきた。

「ああ、ありがとう。でも俺は今日コーラの気分なんだ」

と言ってレイのコーラをかっぱらうと、「まあ、いいですけど」と言ってレイは渋々メロンソーダを開ける。シュワっと、炭酸がはじけて、二人の間には甘い香りが広がった。

一刻も早く、この暑さから退避したい俺達は、改札前にある本屋に逃げ込んでいた。いつも通り藍子は集合時間というものを守らない。今では集合時間を守る藍子は、何かを企んでいるのではないかと思うほどだ。

ニ十分くらいたったころだろうか。俺とレイの飲み物が汗をかいてしまって床を濡らし始め、中の発色のいい緑と黒が半分くらいまでに減った頃、藍子から連絡がきた。

「あーもしもし、どうした?」

かかってきたのは俺の携帯。藍子は「ん、ああ、もしもし!」と元気よく通話を確認する。現代の通信技術が発達した通話なのだから、電波良好を確認することは必要なかったのかもしれないが、話始めにとても便利なものである。もしもし。

『どうしたじゃないわよ?どこにいるの?』

「え、あー改札前の本屋にいるけど…」

ブチ。

本屋にいるけど、藍子は今どこにいるのか。と聞こうとしたけれど、藍子は聞きたいことを聞けたようで、すぐに電話を切ってしまった。今時業務連絡でももうちょっと丁寧だぞ?

でも電話をきられてすぐ、三十秒もしないうちに、俺たちの前に一人の汗だくの少女が現れた。

「とりあえず、私に飲み物をおごりなさい……」

完全に砂漠でオアシスを探している途中の旅人だった。にしてもその汗、凄いな。



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